ゆにおん・ネタ帳

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2009年

■不況でも組合の評価を高める方法(ヒント)とは?
小野
2009/08/08
不況の真っ只中にある某労組において、支部役員を対象に意識調査後の活動策定をワークセッション形式で
行った。

この支部では、不景気で業績が悪化しているにも関わらず、意識調査の結果、昨年実施した調査結果に比べ
て社員のモチベーションが高まっていた。

更に驚くべきことに、”労働組合に対する評価が著しく高まっていた”のである。

社員のモチベーションは企業業績に大きく影響を受ける傾向があったが、今回のように業績が悪化している
にも関わらず、モチベーションが高まっていることは稀なケースである。

なぜそのように高まることができたのか、その理由を知りたいと考え、ワークセッションの際に役員に聞き
、次のような、要因が最も大きいとわかった。

■各職場単位を統括する役員(職場委員)選出の際に、職場でリーダー的な人物ばかりを選出したことが
 最大の要因である。

現場の組合員にもっとも近い組合役員に職場のリーダー的な存在をあたらせたために、職場での信任も厚く
、活動への関与を引き出すことに成功した。

また交流イベントなどを開く際も、リーダーシップを発揮し、各職場にどんなイベントが良いかのアンケ
ートによって意見を集めて、その声を反映させたイベントへの実施とそれにともなう集客のための声掛け
などを積極的に行ってくれた。

さらに、職場集会の開催への評価も高まるとともに、そこで出された意見とその結果報告への評価が高く
、自分達お声が経営にきちんと届いていると評価されるとともに、経営対策も経営チェックの役割を組合
が十分果していると評価されるようになったのである。

最終的には、組合活動全般への評価が劇的に改善し、さらには会社や職場における社員のモチベーション
が向上することに寄与したと言っても過言ではない。

組合員に最も近いリーダーの人選が重要であるということを再認識した。

ふとある言葉が頭に浮かんだ。
「よくするのも人、わるくするのも人」

組織はもちろん、製品やサービスも社会さえも、よくするのも、わるくするのも みな人であり、それを
指揮するリーダーの役割は大きい。 そのことを忘れないようにしておきたい。

以上 何かのネタになれば幸いである。


ロールモデルをつくる中長期的な活動を
大川
2009/07/31
「日本には何でもある。何でも手に入れることができる。ただし希望だけが無い。」
残念ながらこの言葉に共感される方は多いのではないだろうか。

それでは、そもそも希望を持つとはどのような状態なのだろうか? 個人的な解釈ではあるが、次のようなことだと思う。
・今より良くなること
・今より不安がなくなること
・今より自信が持てること
・今より認められること
・今より満足できること
これらがイメージできる状態が「希望を持てている」ということなのではないだろうか。
比較対象は「今」であり、「現実性」よりも「未来イメージ」ではないだろうか。

最貧国の一つである東ティモールやカンボジアでボランティアに携わった方の話では、その国の子供たちの目は
とても輝いていて、学校の完成を心待ちにしているということだった。
おそらく衣食住や安全衛生環境さえ不十分でありながら、多くのことを学んだり努力していくことで必ず「今」より
豊かで平和な生活ができるようになるといった将来像を描けるのであろう。つまり、希望が持てるのだろう。

日本の子供たちはどうだろうか? 努力すれば未来は明るいと感じているのだろうか?
勉強して、スポーツや稽古事をして、礼儀を身につければ幸せになれるとイメージできるのだろうか?
例えば、組織で働く大人を見て「こんな人になりたいなぁ」と思えるだろうか?
むしろ「こんなオトナにはなりたくないなぁ」と映っているかもしれない。
良い成績を取ることや、良い学校に入ることが「目的化」しているからこそ20歳を過ぎても「自分探し」をしている
のではないだろうか。そして就職してからも「自分探し」をしている若者が多いのかもしれない。

その一方で企業では目標達成に向けて努力し、プライベートや睡眠の時間を削っても長時間仕事をがんばる人は実に多い。
ただ、同じ長時間労働でも仕事に対する意識が組織や個人によってまったく違う。その事実は組合による
意識調査の結果を見ると明らかなことである。

たとえ仕事が厳しくても、キツくても、この努力が報われると思えれば誰しもがんばれるのではないだろうか。
社会のためになる、お客様のためになる、会社のためになる、職場の仲間のためになる、自分自身の成長になる。
もちろん処遇面についても努力と成果が公正に反映されると「がんばろう」という気持ちは高まるものだ。

職場を見渡したとき、イキイキと働いている先輩や上司が多いだろうか? いればその存在がロールモデルとなり希望が持てる。
もし少なければ、あるいはいなければ、ロールモデルを増やしていこう。あらゆる世代、あらゆる職種、男性も女性も・・・
結果が出るには時間がかかるかもしれない。しかし、中長期的活動として取り組んでいく価値のある活動には違いない。
決して制度やルールを整備することだけではない。それは目的ではなく手段でしかない。
イキイキと働いている人が増えることこそ目的なのだ。
そのような職場であれば若手社員も希望が持てるのではないだろうか。

ところで、みなさんの組合では組合役員がイキイキしていますか?
自らがロールモデルになっていますか? 明るく楽しく元気よく言動していますか?
「役員のなり手がいない」と感じたら、周りを見渡そう。そして鏡を見てみよう。

今、この不況化での現場活動が問われている
吉川政信
2009/07/24
製造業・A労働組合で実施した「組合員意識調査」報告会での出来事

A労組では、自分たちの活動の振り返りと活動の評価を定量的に図るために、毎年、「組合員意識調査」を実施している。
今年においても、5月に同調査を実施し、その結果を検証する報告会が行われた。
当労組の会社業績も不況の影響を受け低迷が続き、従業員への影響もある中で、予想とは別にアンケート結果は、数年前の結果と比較しても良い値を示す項目が多かった。
中でも、労働組合の必要性、労働組合の経営対策機能、役員の信頼を図る項目への満足度が上がっていた。このような結果に対して幹部役員に対して、「なぜ、組合への満足度が上がったのか」尋ねてみた。
すると、多くの役員からこんな回答が上げられた。業績の厳しい中、会社業績の説明や雇用不安を回避するための職場での話し合いを積極的に行い、組合員と現場役員との腹を割った話し合いが頻繁に行われたといった説明であった。
その時、改めて感じたのは、労働組合の活動は、春闘の結果や組合費に見合うサービスアイテムを用意すること以上に、組合員の不安や悩みに対して身近に真剣に相談できる存在であることが、労働組合の信頼や必要性を感じることに繋がるものだと痛感させられた。
この報告会を数年間実施しているが、会社業績への不安とは別に、今までにない、幹部役員の活動への自信に満ちた顔をみることが出来ました。

プロフェッショナルを育てる
淺野 淳
2009/07/20
E労働組合様(製薬卸企業の組合)から5年前よりご依頼を頂いている
新入組合員研修会が今年も7月上旬に行われた。

広島県の瀬戸内海のとある島で1泊2日の日程で行われるプログラムだが、
島へ上陸した直後の2時間、「労働組合の意義と活用法」と題して本年度の
新入組合員30名の方と語り合った。

組合員からすると、何処に組合の存在意義を見出せばいいのか、
また、これから組織人として組合をどのように活用すればいいのか。
これらの、新入社員からの想定される疑問への答えを、
「プロフェッショナルを育てる」をテーマに語った。

良い会社であり続けるために、組合はプロフェッショナルを育てる。
プロフェッショナルは、自ら問題を解決するマネジメント力を持つ。

では、プロフェッショナルとは何なのか?
「自ら職場の問題を解決するマネジメント力を持ち、行動できる人」
もっともな定義だが、新入組合員には荷が重い言葉だ。

従って、今日風表現で言うと、

その一:現在、置かれている状況を分析できる、「リサーチ力」
その二:未来、を見据えた目標設定と計画立案、「ビジョニング力」
その三:自分、と相手の力を出し合い価値を生む、「コミュニケーション力」

次に、リーダーシップ理論風に表現すると、

その一は、出来事の捉え方を、「両面思考できる人」
その二は、自分の目標を計画するとき、「勝利の方程式を使える人」
その三は、目標に向けて行動を決める際、「戦略一致戦略不一致を実践できる人」

さらに、組合風表現で言うと、

その一、環境適応能力のある人
その二、顧客価値提供力のある人
その三、人間力があり相手を活かせる人

と解説した。

組合活動への参加が、この3条件を満たすトレーニングになることを
強調し、仕事で、生活の実践で役立てましょうと、締めくくった。

研修後、3年前の新入組合員研修の受講者で今回の研修会の手伝いに
来られている副支部長の方から声を掛けてもらった。

「今年、支部長から役員として声を掛けてもらいましたが、
チャンスが来た、と心の中で叫びましたよ!」
と嬉しい言葉を掛けてもらった。

この組合では、コンスタントに若手が役員を担うサイクルが
回っているとのこと。

ただし、帰路に向うフェリー乗場で副書記長が一言。
「役員のなり手は、この研修のお陰で困っていないのですが、
 本来の職場の問題を解決する活動になってないんです。」
「あと一歩、踏み込んだ活動を職場で展開することが課題です。」

と本音をチラリ。

役員のなり手がいない!という課題は解決されているものの、
プロフェッショナルが育ち、職場で組合員がそれぞれ協力しながら、
課題解決に向けた活動を仕掛けるには至っていないのだ。

しかし、捉えようによっては、名実ともにプロフェッショナルを
育てる活動へと進化する土台が整ったとも言えるのでないだろうか。


「さまざまな声」
服部
2009/07/12
自分勝手な「平和」と断片的な事実に基づく「正義」を「大きな声」で世界に叫びながら、原子爆弾を落とし、枯葉剤をまき、大油田地帯でクラスター爆弾をばらまく人がいる。

積年の恨みを「叫び声」を挙げながら、9.11、自爆していった人がいた。

世界中の人たちは、誰にも届かないような「小さな声」で、今も平和を祈っている。

戦地で普通の生活を営んでいた民間人は、「声も出せず」に一瞬にして生活を奪われた。

親を失った子供たちは、今でも「泣き声」をあげながら、不発弾の廃墟を彷徨っている。

大きな声、叫び声、小さな声の陰には、「声なき声」が隠れている。

世界にそっと耳を傾ければ、さまざまな声がかすかに流れている。


それは、遠い世界の話なのだろうか。

地域も、家族も、そして組合が関与できる職場も「相似形」だったとしたら。

地球がひとつの生命体で、地域も家族もそれを構成する細胞だとしたら。

職場にもさまざまな声が溢れているのではないか。

強い声、尖った声、かすれ声、わめき声、嘲笑の声、そして「声なき声」。


今、自分の周りにはいろいろな声があるのだろう。

さまざまな声が聴こえる人になれたらいいなと思う。

そして、いろいろな声が相互に対話し、理解し、共鳴できる社会(職場)づくりに役に立てればと思う。



『不況時だからこそ、組合が得意な連帯活動を!』
小野
2009/07/05
先週、某自動車系・販売労組・書記長との打ち合わせで、生まれたアイデアを今回はお伝えする。
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我が社の営業担当に対して、書記長より次のようなありがたいお話をいただいた。

『いつも他労組の取り組み事例などを聞かせてくれて参考になっているよ。
 よかったら今度、複数販売労組の書記長が集まる会合が開催されるのだけど、その会議で
 j.unionに良い事例や企画があるなら、皆にプレゼンする時間をとってあげるよ』

我が社に、提案のチャンスをいただいたのである。 

そこで営業担当と私、それと書記長3人で事前打ち合わせを行った。

現在、各労組とも空前絶後の大不況で苦しんでいる。

会社は動いてくれないこんな苦しい時だかこそ、組合が何かを行わないといけない。

今は狂ったように、毎月複数回イベントを開催し、皆に元気を出してもらおうと取り組んでおり
非常に好評との話を伺った。

一方で課題と解決策としては、次のようなことがあげられた。

1.『交渉に有利な材料』⇒『他労組との賃金データ比較』⇒『共同開発』

  業績連動の一時金は大幅ダウンとなるため、組合員の家計を直撃する。

  特に若い社員は、もともと賃金水準が引くいため、数万円ダウンするだけでも
  相当に苦しくなる。お金がないから、所帯も持て無い。

  賃金交渉に際して、少しでも有利に進めるため、上部団体加盟労組で
  賃金統計データを最大限に活用できるしくみが欲しい。

  そこで単組と上部団体で共同利用する賃金集計のソフトが欲しい。

  上部団体や複数単組で開発すれば、一単組あたりの負担は少なくなる。

2.『メンタルヘルス対策』⇒『マンガでテクニック紹介』⇒『機関紙掲載の共同コンテンツ提供』

  不況の影響もあり、心身ともに弱っている人が増え深刻な問題だ。
  労組としても、何らかの対策を講じたいが、具体的でかつそれほどコストが掛からない案が
  ないか。

  悪い言葉の使い方を言い換えるテクニックをマンガで教える機関紙掲載用のコンテンツを
  共同で作成する。
  これを複数労組で、機関紙中の1ページづつに連載していく。

  組合員にとってみても有益なコンテンツであり、かつ 報告主体となって読みにくくなって
  いる機関紙が改善されるし、作成する負担も軽減される。

3.『困難な集合研修の補完策』⇒『eラーニングの映像配信』⇒『共同開発』  
 
  組合役員や組合員向けの集合研修などは、費用が高くて何度も開催することは単組では難しい。

  また、社長から組合員向けのメッセージや、各種制度説明、共済や労金の案内を始め、冊子より
  も、映像の方がはるかにわかりやすい。

  そこで、共同のeラーニングコンテンツとともに、単組独自の動画を配信できるしくみを
  提案する。 (ホームページのコンテンツとしても最適である)

  ※補足、不況とインフルエンザの影響で、コスト削減しながらも、学習効果を高め、できるだけ
  全員が何度でも学べる研修スタイルとして、多くの企業でeラーニングの導入が加速している。

  集合研修の回数を減らし(交通費も会場費・懇親会費を減少)、浮いた費用の一部をまわすだけで
  実現可能なコストである。

いずれも、労働組合が得意とする活動の連帯(共同)によって、低コストで高付加価値の提供を
タイムリーに実施できるというメリットがある。

また、2400以上の労組と取引実績とパイプがある我が社の強みも生かされる企画であり、
多くの労組に参加を呼びかけることで、コンテンツを更に充実させていくことが可能な企画である。

ぜひ、この記事をご覧になった組合幹部の方には、企画へ相乗り頂きたいと願う。

以上 何かのネタになれば幸いである。


「できるだけ主義」と「これだけは主義」
大川
2009/06/28
多くの企業・職場では今、「働き方の改善(改革)」が求められている。
当然のことながら労働組合においても「業務効率化」、「生産性の向上」を主要なテーマと捉えてさまざまな活動を
行っている。そのような環境の中、最も端的にそのことが伺えるのが「タイムマネジメントセミナー」の講演依頼、
実施の労働組合の数の多さからも理解できる。

タイムマネジメント(時間管理)とは

「自分の行動」を管理することがタイムマネジメント。当然のことではあるが、時間の長さをコントロールできる
人は誰一人としていない。1日24時間、1年365日は誰でも同じ。我々に均等に与えられた時間なのだから・・・
だからこそ自分自身の行動や時間の使い方を見直し、効果的な時間の使い方を考えていただく機会として同セミナーを
開催いただく労働組合は年々増えている。ここでお伝えしているのは業務上の時間管理術だけでは決してない。当然だが、
私生活面においての時間管理がいかに私たちの生活(人生)においても重要であるのかを実体験も踏まえてご紹介している。

時間管理(=行動管理)のポイント

時間管理で最も重要なことは「優先順位づけ」である。今やるべきこと、次にやるべきことが明確になれば良いのだ。しかし、
現代社会で多くの職業人に共通の課題は「やるべきこと」が多すぎて、自分でさえ掌握することが困難なことであろう。
だからこそ、作業(タスク)の構造化をして全体像を把握することが大切であり、同時に雑務レベルの作業もリストアップ
することが必要となってくる。全体像を捉えた後で「優先順位づけ」を行い、自分自身の行動スケジュールとしていく。
優先順位は「最も重要なこと」を最優先とするが、「自分だけの作業」と「相手のある作業」に分かれるため、それを考慮して
「期限づけ」をし、これも明確に手帳などへ記録していくことが大切なポイントである。

「できるだけ主義」と「これだけは主義」

これらの時間管理を実行しても「消化しきれない作業」が残される場合もある。だからこそ多くの企業で長時間労働が
課題になる。また私生活面にシワ寄せが及び、ワーク・ライフ・バランスが単なるスローガンとなってしまう場合も多い。
「やるべきことが終わらないから今日もできるだけ進めてから帰ろう。」この考え方を「できるだけ主義」と名づけている。
もちろん時と場合によっては重要な考え方であり、その意識や熱意や行動力が組織を支えていると言える一面もあるだろう。
しかし、慢性化すると最悪だ。長時間労働は常態化し、仕事以外のことは最低限の行動に限定される。達成感や充実感は
ほとんどなく、人生の目的さえ見失っていく・・・
そこで、お薦めなのが「これだけは主義」である。「やるべきことは山ほどあるが、『これだけは』確実に今日中に仕上げよう。」
言い方を換えると、「自分に最も求められている行動は何か?」を常に意識して、効率よく取組んで行くことが大切だ。
この考え方は「積み残しの仕事」から逃避したり、放棄することではない。むしろ本質的に重要な仕事を見極めること、
徹底していくことを習慣化することだ。

それでも気になる?!「積み残しの仕事」

確かに未消化の仕事が散在していると、個人にも組織にも大きな問題が生じる。だからこそ、要因分析が必要だ。
多くの研修会で受講者に自己分析してもらうと、共通する課題が浮かび上がってくる。
・事前情報不足、指示不明瞭によるやり直し・手直し作業
・(結果的に)無駄な企画業務
・多くの会議のための多くの資料作成(社内的なアピールや保身のためと感じる)
・必要以上に手間のかかる報告書作成(情報活用されていない)、QC活動報告
・不要な社内情報や多くの社内メールなど

上記のように、明らかなマネジメントの不適切さ(過剰/不足)やリーダーシップの欠如が伺える。全員がリーダーシップを
発揮し、規律性・責任性・積極性・協調性を持って適切な「これだけは主義」を徹底すれば、多くの場合解決されるのでは
ないだろうか?
もちろん私生活における「これだけは」を実践することは何より大切だ。

共同調査からの活動品質向上のための取り組み
吉川政信
2009/06/19
j.union株式会社では、労働組合の活動品質向上を目的に、年に4回程、賛同労組を募り、合同での活動クオリティー調査を実施しております。
今回も、8労組の賛同をいただき調査結果報告と、メインの取り組みでもある調査結果の共有と自労組の活動の活性化を目的としたディスカッションが開催されました。
同じ調査設問においても、組織の強み・弱みは様々で結果共有と結果に至る活動手法や活動プロセスをお互いに共有することで、新たな視点が取り入れられ、今後の活動にとっての有益な情報が得られております。
この取り組みを継続する中で、業種・業態が異なっても労働組合の支援する先が働く人である以上、一人ひとりの発言が自分たちの活動にとって有益なものとなっています。
また、この取り組みは一過性のものではなく、得られた情報を活動に取り入れ、再度、調査を実施することで、取り入れた活動の効果を測定することも可能です。
活動品質を問うために、アンケート調査を活用するのが一般的ですが、調査の結果が重要ではなく結果に対して振り返り、改善活動を検討し実行する行為そのものが大切であり、この行為を継続できる組織こそが、質の高い組織であるといえるでしょう。

働きがいの伝え方
淺野 淳
2009/06/14
先日ある大手機械メーカー・グループ会社の労組で、「労働組合の経営学的意義と機能」についての研修会の機会を与えていただいた。講義後のグループワークでは、職場のゴールを想定して「ロードマップ」を作成し、職場で出来る組合活動のイメージを明確にした。

当労組では、組合活動を通じて働きがいの向上を目指している。人事制度の関係で賃金面における団体交渉を行っていない。一方で働きがいの状態をアンケート調査により数値化し、その結果を基に職場会で組合員同士が議論し自らできることを見出し、実践していく活動を展開している。

働きがいについては、外発的・内発的な動機付けが要因となっており、それぞれを下記のように定義している。

内発的動機付けとは、仕事そのものから直接得ることの出来る要因を通じて自らが育てて行く仕事への動機づけであり、人間が本質的に持っている「生きる実感」を得たいという欲求だという。これらは、各個人が維持していくものであり、維持のためには環境づくりが大切であるとしている。

外発的動機付けとは、仕事そのものではなく、仕事をすることによって付随的に与えられる条件であり、行動を起こす直接的要因ではないとする。また、外発的動機付けを追及すると、その深さにより卑屈な考えを引き起こすとし、追求することで「生きる実感」を得ることは出来ないとしている。そして最後に、大切なことは外発的動機付け、内発的動機付けとのバランスである。と締めている。

これらの考え方を組合役員が各職場に出向き、説明し理解を促し、「内発的動機付け」を感じる職場となるようアイデアを共有しながら展開を図っているのである。

今回の研修に当たっては、上記の活動を更に順調に展開させるために、参加役員を動機付けて欲しいというものであった。

私は、労働組合のこれからの存在価値を高めるための活動展開の論拠と手法についてお伝えした。なぜ今、内発的動機付けなのか。組合員個々が仕事の価値や意味を共有し、主体的に助け合う職場から、新たなアイデアや知恵が生まれ、生産性の向上や新たな製品の付加価値向上を生み出してゆく。その結果、中長期的に外発的動機付けにも連鎖していく。これが今、労働組合の存在価値を高める健全な考え方・コンセプトです。

しかし、説明の仕方次第で組合員は、外発的動機付けを勝ち取れない社会経済情勢があり、組合が要求しても勝ち取れないから、弁明的に考え方を押し付けていると伝わってしまい、対極にある考えを引き出す可能性があるので気をつけてください。と、お伝えした。


わたしたち組合のリーダーが覚悟を決め「今やるべきこと・やれること」が内発的動機付けの活動展開であると自信と確信をもって活動すれば、必ず組合員の「やりたいこと」としてそのコンセプトは職場で受入れられるはずである。


「実現された未来の職場」
服部
先月、当研究所が事務局をしている体験と内省から学ぶユニオンリーダー養成塾、「感働塾」がスタートした。
第1期のテーマは、「障害者雇用」。知的障害・精神障害者の就労自立支援を行っている「スワン工舎」で組合役員(塾生)と作業体験をさせていただいた。
この施設は、ヤマト運輸株式会社元社長で「宅急便」の産みの親である小倉昌男氏(故人)が27億円の私財を投じて、ノーマライゼーション(normalization)※1の理念に基づき障害者の自立と社会参画(「働く」)を支援するめに設立された事業所だそうだ。

「焼きたてパン」と「クリーニング」を28名の障害者が行っている。
この作業所で就職のための知識や技術の習得が学べるのはわずか2年間。時限を設けた真剣な就労支援の場だ。不況を理由に解雇され、再就職を目指している知的障害者もいる。

7時間の立ちっぱなしのパンの作業で、いろいろなことを学ばせていただいた。
パンの作業とは、早朝からパン生地を焼き、それを冷やし、1つひとつ包装し、1個ずつに値段をつけ、販売先(地域のヤマト配送センターや市役所や警察署や介護施設など)に配送する。そこで販売コーナーを作って商品を陳列し、声をかけて一般の方に販売する。昼が過ぎると販売コーナーを片づけて、作業所へ帰って売上金を確認し、ばんじゅう(薄型の運搬容器)を洗う。それから、翌日の生地の成型を始める。これが大まかな作業の流れである。
この作業をみんなで助け合いながら行う。

「障害者のお手伝いなのだからなんとかなるだろう」という慢心がどこかにあった。
甘かった。
1日1000個程度のパンを焼き上げる作業場は、戦場だった。
いきなり、コロッケパンの袋詰め作業でソースを袋につけロス。
彼らに「やり直し」を命ぜられた。
冷や汗が流れる。
また「やり直し」。
もう、会話がなくなっていた。必死の連携プレー。
販売先では、お客様への袋の渡し方を注意される。「はい、次から、気をつけます」
全然、お手伝いになっていない。
当たり前だが、どんな仕事にも、技があり、奥が深い。

午後になると、みんなが販売先より戻ってくる。
「今日は、(○○地区は)全部売れたよ」と報告。仲間より「すご~い!!」と歓声。
誇らしげに「うちは1個残っただけだったよ」「たった1個、やったね~」
こんな会話とともに、職場に笑顔がこぼれ落ちる。

透明な職場で、無垢な方々の傍で一生懸命働かせていただいた。
その職場は、勝ち負け・無関心・操作・対立・嫉妬などとは無縁な職場であった。
まっすぐしかない人間の集団であった。

帰りのバス停で、夕焼け空を眺めながらふと思った。
「障害者って何だろう。障害があるのはどっちなのだろうか?」

われわれは、どんな職場を望んでいるのだろうか。
ただ、明るく、楽しく、元気のよい職場ではなかったのか。
ただ、人間らしく、心の底から泣き笑いできる職場ではなかったのか。

※1ノーマライゼーション(normalization) フリー百科事典『ウィキぺディア』より
1960年代に北欧諸国から始まった社会福祉をめぐる社会理念の一つ。障害者と健常者とは、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿であるとする考え方。またそれに向けた運動や施策なども含まれる。