鈴木勝利 コラム「語りつぐもの」

鈴木勝利 コラム「語りつぐもの」

経済復活の道を模索する~人口減少、高齢化による国内市場の縮小から脱する道~(衆議院選挙特集号3-3)
2014/12/04

 今後の経済復活の道を模索するとき、忘れてならないのは、受け入れにくいことでも事実、あるいは真実であれば素直にとりいれることである。

 その第一は、デフレの捉え方である。国内の市場が縮小しているのであれば、供給過剰は解消されず、デフレの構造は変わっていないことである。デフレは金融政策では解決できない道理である。

 世界に目を向けた時、エネルギーについては、アメリカのシェールガスの発掘によって供給過剰が常態化している。原油価格も下がり続けている。エネルギー産油国でアメリカが第一位になる日は近い(現在はロシア、サウジアラビア)といわれる。石油価格が下落しているのに、日本のガソリン代があまり下がらないのは、円安によって輸入価格が上がり相殺されているからである。円安がなければガソリン代はもっと大幅に下がってもいいのである。

 こうしたエネルギーの供給過剰の上に、米英では失業率は下がっても、賃金の安い国に事業が移っていくために、賃金の上昇が抑えられてしまう(これは日本でも同じような傾向にある)。消費が伸びなければこれも供給過剰で価格は下がっていく。こうして世界では、デフレの構造が定着してしまっているから、金融緩和をすればするほど、だぶついたお金はドル買いや株式投機へ向かうことになる。

 「里山資本主義」の中で藻谷氏が指摘している次の点をもう一度考えてみよう。
【「ものが売れなのは景気が悪いからだ、という常識は本当ですか?」。藻谷氏が言う「人口の波」のグラフ。働き盛りの人の数、「生産年齢人口」は戦後急速に拡大し、それが減少に転じたことで日本ではものが売れなくなったのだという。日本経済が停滞している根本は、「景気」ではなく「人口の波」にある、と言い当てることで、我々の目から鱗をポロリと落としてくれた。
世の中に流れるお金の量を増やし続ければ、いつかは「これからインフレになるだろう」と皆が思い始めて、貯金が目減りする前に消費を増やすようになり、内需対応型企業の売り上げが上がって給与も増え、設備投資も増え、必ず緩やかなインフレが起きる(=デフレ脱却)という。
確かに際限なくお札をすればいつかは必ずインフレになる。
日本で「デフレ」といわれているものの正体は、不動産、車、家電、安価な食品など、主たる顧客層が減り行く現役世代であるような商品の供給過剰を、機械化され自動化されたシステムによる低価格大量生産に慣れきった企業が止められないことによって生じた、「ミクロ経済学上の値崩れ」である。したがって、これは日本経済そのものの衰退ではなく、過剰供給をやめない一部企業(多数企業?)と、不幸にもそこに依存する下請け企業群や勤労者の苦境にすぎない。そしてその解決策は、それら企業が合理的に採算を追求し、需給バランスがまだ崩れていない、コストを価格転嫁できる分野を開拓してシフトしていくことでしか図れない。同じく人口の成熟した先進工業国である北欧やドイツの大企業、イタリアの中小企業群などは、まさにその道を進んでいる。

 労働人口が減少していく今世紀の日本の構造改革とは「賃上げできるビジネスモデルを確立する」ということであり、「賃下げにより足元の利益を確保することで自分の国内市場を年々自己破壊していく」ことではない。】

 第二は企業業績を二分化させない好ましい円安の水準についてである。円安によるコスト増で苦しんでいる中小企業では、1ドル100円程度が望ましいという声が一番多い。しかし、一方では、日本経済全体に及ぼす影響をトータルで考えなければならない。製品輸出国としてのプラス効果も考慮するとすれば、1ドル110円程度が望ましいという声が過半である。ここでも今までの金融政策を見直ししなければならない。これが容易ではないと見られるのは、日銀もアベノミクスも、行き過ぎた円安を是正するには、アベノミクスの失敗を認めなければならないからである。「アベノミクスは誤りでした」と、国民のために言える勇気があるとは思えないのである。引き続き今の金融政策・経済政策を続けていけば、世界から円に対する信用が崩れ、取り返しのつかない事態が起きるのではと危惧されている。
それでは何をもって日本経済の成長を図るかである。みずほ証券のチーフエコノミストである上野泰也氏と、「里山資本主義」を著した日本総研の藻谷浩介主席研究員も、同じように消費低迷の原因は人口減少、高齢化にあると指摘している。
一方で、増田元岩手県知事も人口統計により、消滅してしまう地方都市が出ることに警告を発している。人口減少、出生率の低迷は深刻な問題になっているのである。
もし、人口減少と高齢化により、内需が縮小しているとしたら、その対策を図ることこそ経済の復活のカギとなる。
個人消費に直接関連している業種は、①小売業、②対個人サービス、③飲食店・宿泊業の3業種あるが、これらはいずれも供給過剰が続いているから、内需が拡大するはずはない。
人口減少による消費低迷への対策とは、単純にいえば、消費人口を増やすことである。上野氏は、①として、多人数家族へのインセンティブを図るために、多人数家族への優遇税制を導入する。つまり、多人数家族の税金を安くして、日本国民が出生率を上げるようになれば、人口の減少に歯止めがかかり、国内の消費に寄与するというものである。②として、外国人の日本滞在人口を増加させる政策である。試算例をみると、⒜日本人一人の1年間の消費量を外国人観光客8~9人で消費していることを見ても、外国人観光客の誘致を図ることはアベノミクス唯一の正しい政策と言える。さらに外国人観光客を誘致して国内でいろいろと買い物をしてもらうことによって、消費の低迷に歯止めをかけるというものである。⒝介護分野・医療分野と不足している高技能者の移民を受け入れることによって、日本のその分野における人材不足を補うと同時に、移民者が定住者として消費者になる役割を果たしてもらうというものである。
個々の問題の解決には、さまざまな施策が必要になる。たとえば、多人数家族にしても、女性の出生率を上げるために、働き方や、共働き社会の構築、託児所、保育所などの社会的施設の整備、配偶者は家庭にという日本的精神文化の改革、同じ根っ子から維持されている配偶者控除、扶養家族控除などの税制改革、おなじく健康保険の扶養家族制度の見直しなどがあり、移民の受け入れについては、日本人の意識改革が欠かせないなど、一朝一夕では解決できない難しさを持っている。
こうした中で大事なことは、「難しいから断念する」のではなく、目的が正しければ難しい課題を克服していくことである。一度にあれもこれもと高望みすることなく、目的を明確にしたうえで、目的に向かって一歩づつ進めていくことである。
人口の減少に歯止めがかかり消費が好転する。また、将来の年金・医療への不安が減少し、ここでも消費にお金を回すことができれば、加えて、年金受給者も消費税によって年金の掛け金を負担する仕組みが完成すれば、世代間の利害対立も解消の方向へ向かうことであろう。
いずれにしても、日本国内の需要が限界を迎え、市場のパイが縮小していく流れを逆転させるのであるから、まったく新しい発想に立ち、思い切った生活スタイルの転換を図らなければならないだろう。決して、働き方を変える労働法の規制緩和などで、経済を成長させる第三の矢になるわけはないのである。

 このように今や日本は経済的にも、政治的にも、重大な岐路にさしかかっているのである。そんなときに、労働組合が臆せずにこうした社会的制度、政治的課題にむけて、立ち上がり声を上げることが求められているのではないだろうか。