西尾 力の「BEST主義の組合活動のススメ」

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安倍政権の「働き方改革」の危険性(上)
2017/02/01
■「非正規を一掃」と安倍首相は言ったのか

 昨年7月27日安倍首相は、福岡市内で開かれた一億総活躍・地方創生全国大会で、
「正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等待遇を確保する必要がある。
同一労働同一賃金を実現し、『非正規』という言葉を、この国から一掃したい。そう決意をしている」と発言しました。
 野党政治家・労組役員でさえここまで言い切る人はいないのに、企業側の代理政党とも言える自民党の総裁が、
どうしてここまで言い切れるのでしょうか? 
安倍政権の「働き方改革」は何のために展開されているのかを冷静に見定める必要があります。
それは、本格的に第4次産業革命(IT・AIの活用)に入っていくにあたり、
2030年頃には日本では、現雇用労働者の49%が不必要となる、と予測されているからです。
 そのような時代の到来に、雇用者を日本的雇用慣行によって削減できないとすれば、
必然的に日本はIT・AI化に後れをとることになるからです。
それを未然に防ぐために「働き方改革」を進めて、限定正社員制度を作り出していく必要性があるからです。

■「限定正社員制度」の必要性とは

 限定正社員制度を作り出す必要性は、日本経済新聞Web版にて解説された次の図を見れば一目瞭然です。


 正社員の賃下げと解雇しやすくすることがねらい目です。
 このまま安倍政権の「働き方改革」が進めば、日本の雇用労働者の中で、現行の正社員、非正規社員という1国2制度から、
無限定正社員(2割)、限定正社員(6割)、非正社員(2割)という1国3制度への道を歩むことになるでしょう。

■「同一労働同一賃金」のねらいも同じ
 また、安倍政権が叫ぶ「同一労働・同一賃金」の意図をはっきりと示しているのが、
2008年5月9日に発表された経済同友会報告「21世紀の新しい働き方―ワーク&ライフ インテグレーションを目指して」に示された、
同一労働・同一賃金への移行のイメージ図です。



■「限定正社員制度」の必要性とは

 前述の第4次革命で労働人口の49%は削減されると述べているのは、経済同友会の「雇用・労働市場委員会」が2016年8月1日に発表した
『新産業革命による労働市場のパラダイムシフトへの対応―「肉体労働(マッスル)」「知的労働(ブレイン)」から「価値労働(バリュー)」へ』と
題された報告書です。
 「歴史的に見ると、これまで人間の『労働』は、進歩する技術が人間の能力を代替・補完することによって生産性を向上し、
進化してきた。18世紀の産業革命により『肉体労働(マッスル)』が機械に代替えされ、『知的労働(ブレイン)』へとシフトし、
現在はその『ブレイン』が人工知能(AI)にとって代わられる時代となっている。
『知識(ナレッジ)』の量を誇るだけで『価値労働(バリュー)』を生み出さない労働は、やがてAIに代替えされる可能性が高い」というものです。
 そして、「就業者数の多い事務職・ホワイトカラー業務も、コンピュータにより代替え可能となる。
2030年における本社機能のコンピュータ化可能確立の推計によると本社機能の半分は、AIで代替えされる可能性がある。
公認会計士、弁理士等、複雑で高度な業務であっても、コンピュータ化が可能になる。労働力不足の観点からも言えば、
まずはブルーカラー×サービス業から代替えが済むことが予想される」と予測しています。(次号へつづく)
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