■安倍政権の「働き方改革」は日本的雇用慣行を完全に葬り去る
2008年5月9日に発表された経済同友会報告「21世紀の新しい働き方―ワーク&ライフ インテグレーションを目指して」に、
安倍政権の「働き方改革」は、日本的雇用慣行を完全に葬り去るためのものであることが明確に示されています。
同報告書は、日本企業の「20世紀的働き方」の行き詰まりや機能不全を冷静に分析し、新しい働き方の基本構造として、
これまでの日本的経営の三種の神器(終身雇用、年功序列、企業内組合)から、次のような図を示し、新・三種の神器に
経営のOSを取り換えていくべき、と提言しています。
同報告書の示す、新・三種の神器のOSとは次の3つです。
①職務に基づく個人と会社契約(職務・役割主義)
②流動化を前提に人を育て、人を活かす(新“人財”主義)
③多様な人材の多様な働き方を認める(多様性主義)
■日本的雇用慣行を葬り去る4つの施策
そしてさらに、新・三種の神器への具体的な変革施策として次の4点をあげています。
①経営者としてなすべきこと―人財主義と流動性が両立する経営(市場価値を持つ“人財”という
基本認識、新“人財”の教育・訓練・育成、多様で垣根の低い雇用条件、テレワーク・マルチワーク等多様な働き方、
ダイバーシティーによる多面的な企業文化)
②企業内ルールの改革(人事・報酬制度、賞与・福利厚生・退職金、テレワークの環境整備、多様な雇用契約)
③労働関連法規・制度の改革(最低賃金、税・社会保障制度、「横断労働法制」の制定、解雇ルール・制度、外国人雇用、公的職業紹介の自由化・民営化)
④企業内ルールと労働関連法制にまたがる改革 企業内労働組合の変革・発展、職業資格制度・職業訓練)
■これからの13年間の春闘の展望が問われる
この変革施策内容の本意は、第4次産業革命(ITの活用)に入っていくにあたり、
日本では不必要とされる49%の雇用者を終身雇用によって削減できないとすれば、必然的に日本はIT・AI化に後れをとることになる。
それを未然に防ぐために「働き方改革」を進めていく必要性がある、というものなのです。
そこには、21世紀の産業エンジンであり、競争の基本的な要件であるIT・AI化に日本は後れを取っているとの認識があるようです。
IT・AIの利用によって不必要となった雇用者の終身雇用を続けなくてはならないことで、
IT・AIを導入することで得られるはずのコストカットにつながらないばかりか、技術革新の競争に、
日本資本は雇用慣行制度によって阻まれてしまう、という危機観がにじみ出ています。
安倍政権の「働き方改革」は、この報告書と軌を一にしている、と見て間違いないでしょう。
これから13年の間に迫る2人に1人の雇用流動化に、どのように労働組合として対処するかを考える春闘にしないと、
21世紀版ラッダイト運動をするしかなくなるのではと、心配になります。