西尾 力の「BEST主義の組合活動のススメ」

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どうする 労組の「働き方改革」(上)
2017/08/01
■「働き方改革実行計画」が策定された
 2017年3月28日、「働き方改革実現会議」の第10回会議で、
「働き方改革実行計画」が決定され、次の19項目の対応策が示されました。
①同一労働同一賃金の実効性を確保する
法制度とガイドラインの整備
②非正規雇用労働者の正社員化などキャリアアップの推進
③企業への賃上げの働きかけや取引条件改善・生産性向上支援など賃上げしやすい環境の整備
④法改正による時間外労働の上限規制の導入
⑤勤務間インターバル制度導入に向けた環境整備
⑥健康で働きやすい職場環境の整備
⑦雇用型テレワークのガイドライン刷新と導入支援
⑧非雇用型テレワークのガイドライン刷新と働き手への支援
⑨副業・兼業の推進に向けたガイドライン策定やモデル就業規則改定などの環境整備
⑩治療と仕事の両立に向けたトライアングル型支援などの推進
⑪子育て・介護と仕事の両立支援策の充実・活用促進
⑫障害者等の能力を活かした就労支援の推進
⑬外国人材受入れの環境整備
⑭女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援や職業訓練などの充実
⑮パートタイム女性が就業調整を意識しない環境整備や正社員女性の復職など多様な女性活躍の推進
⑯就職氷河期世代や若者の活躍に向けた支援・環境整備の推進
⑰中途採用の拡大に向けた指針策定・受入れ企業支援と職業能力・職場情報の見える化
⑱給付型奨学金の創設など誰にでもチャンスのある教育環境の整備
⑲継続雇用延長・定年延長の支援と高齢者のマッチング支援
※詳しくは首相官邸ホームページに掲載されているので検索願います。
 各項目に対する評価は誌面の都合上避けますが、玉石混交、
みそもくそも一緒になっていますので、取捨選択をお願いします。
 しかし、労働組合にとっては追い風となる対応策が示されていますので、
各企業の現場にて、労使協議・交渉のテーマや職場での組合活動に取り上げ、
組合活動の活性化に結びつけることが望まれます。

■年間総労働時間の統計の見方に注意
 昨今の「働き方改革」ブームで、労働組合にとっても一番の課題は「長時間労働の是正」でしょう。
ただし、この問題を考えるときに、「年間総労働時間」のとらえ方で、注意しなければならないことがあります。
 なぜならば、日本の年間総労働時間の平均は、厚生労働省「毎月勤労統計調査」によれば2015年で1734時間であり、
1993年の1920時間と比較して、年間186時間も減少しています(図1「日本における労働者の労働時間等の推移」参照)。


 また、この数字は国際比較してもそれほど悪いものとは思われません。
実は、この統計数字にはからくりがあって、分母の労働者数にパートタイム労働者なども含まれているからです。
パートタイム労働者を除いた、一般労働者の平均でみると、1993年は2045時間で、2015年でも2026時間と、
ほぼ変わらない状態にあることに注意が必要です。
 したがって、各労組でも「残業時間削減」の取り組みも、全社平均だけでとらえて、
削減されたから取り組み成果が出たと単純に判断しないことが望まれます。
 確かに、経営的に見れば総額人件費の削減となりコストパフォーマンスの改善(生産性の向上)になりますが、
労働組合として判断すればそれだけで喜んではいけません。
 平均値だけで見るのではなく、最低でも中央値の値が下がっているかどうかの検証が求められます
(平均値と中央値の違いは図2「所得金額の分布図」を参照願います)。



 そして、参照図のような残業時間帯別のデータ分布の提出を人事に求めてください。
 ただし、その労働組合の要請で人事部の組合員が残業する羽目に陥らないように余裕を持たせた要求を願います。

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