西尾 力の「BEST主義の組合活動のススメ」

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どうする 労組の「働き方改革」(下)
2017/10/01
■何か変だな「働き方改革」キャンペーン

 世の中、猫もしゃくしも「働き方改革」と言い出す事態になっています。このような事態・時代は要注意です。
 同じような状況にある言葉がもう一つあります。それは「同一労働同一賃金」です。
 さらにもう一つ。官製春闘の時代に入り、「賃上げ」という言葉も同じだと言ってよいでしょう。
「賃上げで景気回復を実現」と言われれば、反対する人は誰もいません。
しかし、「働き方改革」の大合唱の下で「高度プロフェッショナル制度」や
「解雇の金銭解決制度」「同一労働同一賃金」のスローガンによって「ジョブ型社員制度」の
導入がなされ、かつ「賃上げ」の結果、大企業と中小企業間や、労組のある企業と無い企業間、
正社員と非正規社員間での賃金格差がますます広がっていることは、働く側にとって本当に喜ばしいことなのでしょうか。
「同床異夢・呉越同舟」という中国古典の世界が、今まさに現代の日本で繰り広げられています。
今日、労使関係において労働者および労働組合の主体性が、本当に発揮されているのでしょうか。

■労働組合の主体性が発揮されているのか

 ただし、私は「高度プロフェッショナル制度」や「解雇の金銭解決制度」「ジョブ型社員制度」、
そして「賃上げ」に何でも反対また賛成するものではありません。
 国際化・多様化・個性(別)化という時代の変化の流れの中にあって、
変化対応していくことが求められることは理解しています。
 しかし、どんな制度にも長所と短所があります。
したがって、導入にあたり短所への対策が準備されているか、そこを問いたいのです。
 言い換えるならば、労働者および労働組合として、形作られる(変化する)労使関係において、
どのように主体性を発揮しようとしているのか、そのことを示すべきではないか、ということです。
 さらに言及するならば、従来型の企業内において団体交渉中心に労働条件を決定するというだけでなく、
企業の枠を超えて地域別、職種別、産業別での働くルール作り・チェック機能づくりに労働組合がどのように貢献するのか。
 そのために、企業内では正社員のための労働組合だけでなく、
多様な従業員を代表にできる労働組合の組織や活動の在り方を再構築する。
 さらには、企業内労働組合だけでなく、企業の外で働く人々とのネットワーク、
すなわちNPOや協同組合、学生、高齢者などのサードセクターとの連携をどのように図っていくのか、
新しい運動(戦略)論が求められているのではないかということです。

■労働組合の取り組むべき「働き方改革」とは

 もちろん、労働者および労働組合としての主体性を活かした「働き方改革」の取り組み方も求められます。
 それは、次の3つのステップを踏んだ労組ならではの取り組みがお勧めです。

・第1ステップ…「個人意識の改革」
・第2ステップ…「個人行動の改革」
・第3ステップ…「集団行動の改革」

 第1ステップの「個人意識の改革」では、自分では無意識のうちにとっている、人や組織とのコミュニケーション(関係性)の作り方を、
筑波大学大学院宗像恒次名誉教授が示されている自己抑制型行動特性(イイコ度)や対人依存型行動特性(心の依存度)から判定して、
自分の働き方がどのように形作られているかを知ることです。
 さらに、自分の人生ビジョン・プランを作成して、アフターファイブや休日・有休で何をするかをしっかりと目標として持つことです。
 第2ステップの「個人行動の改革」では、第1ステップで紹介した各自の行動特性から規定されるコミュニケーション・スキルの改善やタイムマネジメント・スキルの改善。さらには、労働時間が短いのに高業績者の人の抽出とそのコンピテンシーの学習や、職場に休暇カレンダー等を張り出して、
全員が消化する職場風土を作り出すことなどがお勧めです。
 第3ステップの「集団行動の改革」が、今日の「働き方改革」のポイントです。労組主導で「職務互換率」を高め、「ワークアウト」を行うのです。
生産現場ではできている「職務互換」をホワイトカラー職場においてもできるように、「仕事表」を職場で作り、
誰が休んでも代位できる(有休消化できる)体制作りです。
「ワークアウト」とは、同じ職場の人同士で、お互いの日・週・月別の業務フローを図解して分析・検討し、削除してもよい業務を見つけ出す取り組みです。
そして、顧客価値や成果(利益)に結びついていない仕事をやめたり、もっと労力をつぎ込むべきコア(付加価値の高い)業務を決めたりすることです。
「職務互換率」を高め、「ワークアウト」する業務を見つけだすワークショップの推進こそ、労働組合の「働き方改革」です。
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