西尾 力の「BEST主義の組合活動のススメ」

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悩ましい春闘の季節私からのお願い
2018/02/01
今年も春闘の季節が巡ってきました。ナショナルセンター、産別の春闘方針も示され、それを受けて各単組で要求案がまとめられている時期ではないかと思います。
20世紀末までは、労働組合がこのような手順を踏んで、毎年粛々と春闘に取り組むことで、世間に賃上げ相場を作りだしていました。
春闘が社会全体にあまねく賃金上昇の波及効果をもたらしていたのです。
春闘が世間一般の新卒初任給を毎年引き上げましたので、労働組合がない企業でもそれに準じて賃上げが実現していました。
そのため、ストライキで多少の迷惑をかけようとも、世の中では春の風物詩として受け止められ、労働組合の存在価値が認められていました。
ところが問題なのは、20世紀末以降、労働組合のない企業に春闘での賃上げ効果が波及しなくなってしまったことです。
その最大の原因がグローバリズムだと言われています。
その結果、賃金格差は広がるばかりです。多様化・個性化の時代ですから、格差が拡大するのはある程度やむを得ないことだとしても、賃金水準が底割れして、下落していることが問題です。
さらに残念なことに、労働組合の組織率も17・2%まで低下しています。労働組合のない企業・雇用労働者の割合が増加しています。
従って、春闘で労働組合が底上げ・底支え・格差是正をスローガンにして頑張っても、その効果が社会全体には波及しない構造が強まっています。
また、春闘の賃上げ要求と妥結をパーセント(%)でやっていると、格差は拡大するばかりで、縮まることはありません。

次のデータは、連合集計2016年7月5日付の第7回(最終)2017春闘平均賃上げ(組合員一人当たりの加重平均)回答状況を見たものです。
・1000人以上 6125円(2・01%)
・300~999人  5117円(1・92%)
・100~299人  4705円(1・91%)
・100人未満   4490円(1・87%)

非正規労働者賃金引き上げは、月給で3503円(1・74%)、時給21・29円です。
時給を月額に次の式で換算しても、1日8時間×22日勤務=3747円、いずれの額よりも下回ります。
このデータを見る限り、残念ながら2017春闘でも格差是正になったとは言えない結果となっています。
「天は自ら助くる者を助く」と言いますから、また、労働組合はもともと共助の組織ですから、労働組合に入ろうとしない、組合を作って春闘をしない人たちが悪い。
問題である、と済ませてしまうことも可能かもしれません。
さらに、オープンショップの労働組合では、自分たちの活動にただ乗り(フリーライダー化)する人々を非難することもできるかと思います。
しかし、このままの状態でいると、自分たちは労働組合に守られているので問題はないかと思いますが、子供たちに未来はありません。
総務省の労働力調査では、15歳から24歳までの若年者の非正規の割合は約2人に1人となっています。
父親が高校生の娘さんに、将来の夢を聞くと、「正社員になること」と真顔で答える時代に、すでになっているのです。
当然ですが、資本主義社会ですから価格競争は必然で、いずれはコスト競争によって賃金・労働条件の低下の危機が迫ってくることでしょう。
仕事が海外に移転したりして雇用不安が起こることも、今後もあるでしょう。
ここでちょっと脱線しますが、日本の労働組合は「解雇」という行為には大反対しますが、反対はするもの、その後の段階になると沈黙してしまいます。誰を解雇するかは企業任せにしてしまうのです。
欧米の労働組合は、解雇反対を叫ぶことはしません。むしろ当然なものと受け止めているきらいがあります。
その代わりに、誰を解雇するかに関しては規制をかけ、経営側の恣意的判断を、先任権ルールなどで断固阻止します。
この労働文化の違いが、日本では恣意的、非合理的な解雇を生み出します。そして、年配者の長期失業の増加をもたらしています。
グローバリズムは連結決算を求めてきました。また、日本でもそれが企業経営の常識となりました。ならば、労働組合も連結決算に対応した春闘をしていく時代です。
これからの春闘では、最低でも賃上げ要求は全従業員を対象にして、全員一律の賃上げ要求をして、妥結を目指していただければと思います。
そうして初めて、底上げ・底支えの、事業規模間・正規非正規間の格差是正となっていくでしょう。
できれば連結決算対象企業の全従業員を対象にして、親会社の内部留保のトリクルダウンの実現を目指していただければと思います。
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