西尾 力の「BEST主義の組合活動のススメ」

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役員の育成なくして組合活動の活性化はあり得ない
2015/12/01
■個別の労使関係上の労働紛争は増加

「労働組合の存在価値が希薄化している。組合員の組合離れが進んでいる」と多くの組合役員が感じている。
確実に組合員の活動への参加率は低下し、活動への協力・関与度の割合も減っている。
年々役員のなり手を探すのが大変なだけでなく、「何しているのかわからない。組合費も高い」などの不満の声も、よく聞かれるようになっている。
だからと言って現代は、組合員・労働者みんなが幸せな人生を送っているのか、と問われても答えはそうではない。だれもが問題を抱えている。

厚生労働省発表の「第一回統合労働相談件数及び民事上の個別労働紛争相談件数の推移」によると、平成23年度の相談件数のうち33・9%、
3人に1人は労働組合のある事業所の労働者から寄せられていたものだった。
一方、集団的労使関係の労働争議件数・参加人員の推移は、1975年以降は大幅に低下している。

■個別の労使関係に発生した問題は「請負代行」してはいけない

昨今の個別の労働紛争にかかわる相談件数(厚生労働省発表)は、「いじめ・嫌がらせ」が3年連続トップである。

多様化・個性化の現代。個別の労使関係、特に上司と部下との関係に問題が多発している。
この領域での問題解決に、現代の労働組合は、役割を果たすことが求められている。
ただし、個別の労使関係に発生する問題の解決にかかわる場合、「請負代行」してはいけない。
20世紀型労働組合が当然として来た、組合員から訴えられたら、その問題を組合役員が引き受けて、集団的労使関係に持ち込んで解決しようとすると、
組合員を「単なる観客」「傍観者」にしてしまうからだ。
もちろん、問題解決の目指し方はWin─Lose(どっちが正しく、どっちが間違っている。誰かの意見が通れば、誰かが我慢する)ではなく、
Win─Win(共に良い。共にもっとも)である。

■個別の労使関係に発生する問題の解決を支援できる役員の育成が急務

個別の労使関係に発生する問題の解決をWin─Loseではなく、Win─Winにするには、組合役員が上司と対面している時は、
上司の協働者として発言すると同時に、部下の利益代弁者としても発言し、労使共に良いという解決策を模索する役回りを演じる。
もちろん、組合員(部下)と対面している時は、組合員(部下)の協働者として発言すると同時に、上司の利益代弁者として発言し、
労使共に良いという解決をする役回りを担う。
このような、個別労使関係に多発する問題の解決に資する組合役員のリーダーシップ育成が急務なのである。

■組合資源を傾斜配分して役員育成を

組合役員の意図的選抜と計画的育成に労働組合の資源(時間・資金・労力)を傾斜配分することが、今何よりも求められている。
予算の1/3を人の育成につぎ込む強い決意が求められる。労働組合版「米百俵」である。
人材の育成にあたって、もちろん長期的な視点に立って教育体系を確立することが求められる。
組合役員を経験することでリーダーシップを身に付け、将来にマネジメントを担える教育機会、すなわち管理職輩出作戦として展開されるべきだろう。
もちろん、組合役員の選出を現場に任せてはいけない。役員選出にあたり、インフォーマルリーダーの抜擢を心掛けたい。年代・性別を問わない選出基準も。
若年化防止、メンタルヘルス役を担える人が望まれる。役員育成に当たっては、アクション・ラーニング(バックナンバー「組織運営(マネジメント)の改革
(下)」参照のこと)形式の研修が必要なことはすでに述べたところである。
当然だが、アクション・ラーニングの効果測定も忘れてはならない。
そのためには、役員のモチベーション・満足度調査で、定期的に効果測定することも忘れてはいけない。
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