西尾 力の「BEST主義の組合活動のススメ」

トップ
今日の労働組合が取り組むべき組合員のキャリアアップ
2016/03/01
■キャリアアップとはスローキャリア

 今日の労働組合が取り組むべき組合員のプロフェッショナル化とは、組合員のキャリアアップの取り組みでもある。
 しかし、多くの人がキャリアアップというと、出世や報酬と結び付け、企業の中を単線的に上昇するイメージでとらえる間違いをおかしている。
 高橋俊介氏はそれを「スローキャリア」と表現されている。
 出世しなくても、報酬がアップしなくてもよい、自分がやりたいこと、好きな仕事を一つの地域でやり続けたいとか、人に感謝されたい、親切にしたい、仲良くしたいといった貢献感でキャリアをとらえる必要がある、としている。
 また、自分らしいキャリアアップを図りたい(新しいアイディアを考えるのが好き、何かのためよりもそのプロセスそのものにのめり込むといった達成感や成長感)という観点でキャリアをとらえる必要もある、とも。

■グローバル時代に求められるのはキャリアチェンジ 

 変化の激しい(グローバリズムの)現代は、キャリアアップをキャリアチェンジの概念でとらえることが望まれる。
 東西の壁が崩壊し、西側10億人の労働市場に低賃金の東側20億人が参入し、誰にでもできる仕事は海外に移転してしまう。現代の経営はアジアを内需ととらえる時代。
 会社に依存していれば定年まで安泰の時代は終わった。個人も会社も、変わらないと存続・発展できない時代だ。
 したがって、ジョン・クランボルツのキャリア理論、「計画的偶発性理論」に着目することが必要だ。
 クランボルツによれば、成功していると全米で認識されている著名人500人に、「あなたはなぜ成功したのですか?」という質問をしたところ、「偶然ですよ」と8割の人が回答した。
 そこから、積極的に行動することでキャリアアップする機会を生み出す、偶発的な出来事に遭うことができること。
 偶発的に見えても実は前向きに行動した結果であり、計画的とも言えること。
 この良い偶発的な出来事を繰り返し自分のものにしていくことによって、キャリアアップされることを教授は明らかにした。
 そして、クランボルツは、偶然を必然化する行動として、次の5つを挙げている。
1.好奇心…好奇心を持ち、広げる
2.持続性…すぐにはあきらめずにやり尽くしてみる
3.楽観性…大半の悲観的なコメントよりも、たった一人の前向きなコメントに心を置いてみる
4.リスクテイク…失敗はするものだと考え、今ある何かを失う可能性よりも、新しく得られる何かにかけてみる。(最悪を知っていると判断しやすい)
5.柔軟性…状況の変化に伴い、一度意思決定したことでもそれに応じて変化させればよいと考えてみる
 本来のキャリアアップとは、変化に前向きに挑戦することなのだ。

■キャリアアップに求められる能力

 現代の労働組合の取り組むべきキャリアアップとは、誤解を恐れずストレートに言うと、今と別の職場に行っても通用する能力や人脈づくりだ。
 それは、主体的に仕事に取り組み、人とのネットワーク(人脈)を構築し、継続的に新しいスキルを習得していく行動の獲得である。
 ここでの能力とは、ロバート・カッツの3つのスキルでとらえることがお勧めだ。
1.コンセプチュアル・スキル(概念化能力)…仕事を取り巻く状況、周囲で起きている事象や状況を構造化し、問題の本質をとらえる能力のこと。具体的には論理思考力、問題解決力、応用力など。
2.ヒューマン・スキル(対人関係能力)…仕事上の人間関係を構築する能力のこと。上司や部下、同僚、顧客、得意先などの相手方とうまくコミュニケーションをとる能力のこと。具体的なスキルとして、リスニング・スキル、コーチング・スキル、アサーション・スキルなど。
3.テクニカル・スキル(業務遂行能力)…担当する業務を遂行する上で、必要な専門的知識や技術のこと。「オペレーションスキル」とも呼ばれる。職務内容により、その内容は異なる。

■キャリアアップに求められる人脈

 キャリアアップに必要な人脈とは次のような人たちだ。
・仕事上の問題解決に智恵を貸してくれる人
・個人的な問題の相談に何時も乗ってくれる人
・その人と話をしていると自分の考えが整理され、アイディアをもたらしてくれる人
・一緒に飲食などをしていると、とても楽しく、リラックスできる人
・趣味や楽しみが一致していて、仕事以外での張り合いや元気を持たせてくれる人
・何時も交流することによって、何か良い影響を受けられる人
閉じる