西尾 力の「BEST主義の組合活動のススメ」

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王道のワークライフバランスの取り組みを(中)
2016/05/01
■平均残業時間や総残業時間が減少するだけで良いのだろうか?

 ワークライフバランスの取り組みというと、長時間労働時間からの脱却、特に残業時間の短縮を目指すものとして展開されている。
そこで、ノー残業デーを設けたり、一定時間以降の業務を禁止したりすることや、管理監督者の合意や指示命令によってのみ残業を行う関係にしていくことで、ある程度成果をあげることが可能だ。
 そして、平均残業時間や総残業時間を低減することに成功する。
 しかし、果たしてそれで「良し」としていいのだろうか。
 全社的に見た場合、下図のような「人の仕事に対する態度・意識」のマトリックスで見ると、長時間労働になっている「散漫型」の人が、本来ならば「目的志向型」に移行することが望まれるのに、「逃避型」や「先送り型」に追いやってしまったことで平均残業時間が減少していないか注意が必要である。




 縦軸は、目標に標準を合せて、それをやり遂げる能力。短期的な集中力の持続性、計画性、時間管理能力、適切な目標設定能力などを意味する。
 横軸は、個人の強固なコミットメントに支えられた目的達成のための力。積極性、有能感、ストレス対処能力、適応力(柔軟性)などを示す。

■4つのタイプの特徴

「先送り型」の特徴
・仕事は生活費を稼ぐだけのものとわりきっている
・ただし、日常業務は忠実にこなす
・不安や失敗に対する恐れから、やらなければならないことをぐずぐずと先送りする
・自ら目標を設定することをやめ、慢性的な受身状態(学習性無力感)

「逃避型」の特徴
・仕事に動機づいておらず、ただ指示命令された仕事だけを時間の中で処理している
・自分の殻に閉じこもり、最低限必要なことだけを行う
・自分が意義を感じない仕事に全力を傾けることができない
・任された仕事について疑念を抱いており、取組みに身が入らない(防衛的な回避)
・仕事に疲れていて、充電する内的なエネルギー源を持っていない

「散漫型」の特徴
・前向きでエネルギッシュだが、集中力に欠ける
・がむしゃらな動きを建設的な行動と混同している
・プレッシャーがかかるとなんでも良いから何かしなければならないという強烈な思いに駆り立てられる
・目先のことにとらわれがちで、そのために仕事を抱え込みすぎるケースも多い

「目的志向型」の特徴
・自分の目標を注意深く定め、それを達成するために必要な行動をとる(目標設定・管理能力)
・自分の意図をはっきり理解しており、意志が強いため、時間の使い方を適切に決定することができる(タイム・マネジメント)
・隙間の問題もわがこととして、手を尽くす(当事者意識)
・仕事についての思いなどを上司・部下・同僚と分かち合うように心掛けている


■「集団行動の改革」が求められている

 グローバル経済時代には、働く者の雇用と賃金を守りながらのワークライフバランスが必要で、そのためには次のステップを踏むことが求められる。
 ステップ1の「個人意識の改革」やステップ2「個人行動の改革」の段階から、今日はステップ3「集団行動の改革」の高いレベルでの展開が求められている。

①個人意識の改革

・ライフの大切さの啓蒙
・人生ビジョン・プランの作成
・アフターファイブや休日・年休でどう過ごすか

②個人行動の改革

・ソーシャル・スキルの改善
・タイムマネジメント・スキルの研修
・高業績者のタイム・マネジメント行動の抽出と学習
・職場に休暇カレンダーを掲示・全員が記入

③集団行動の改革

・働き方改善のためのワークショップとアクション・ラーニングへ
・ワークアウト・ミーティング⇒職制への提案
・職務互換率アップのワークショップ
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