西尾 力の「BEST主義の組合活動のススメ」

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王道のワークライフバランスの取り組みを(下)
2016/06/01
■ワークアウトと職務互換のワークショップを

 今日の労働組合に求められているワークライフバランスの取り組み。それはグローバリズムに抗して雇用と賃金を守るために、働き方の改革の一環として「集団行動の改革」に取り組む必要を、先月号で述べた。そのためには、ワークアウトと職務互換率アップのワークショップを、アクション・ラーニング形式で取り組むことだとも。今月はその具体的な取り組みを提起する。
捨てる仕事を見つけ出し、職制へ提言
 ワークアウト・ミーティングとは、顧客価値や成果(利益)に結びついていない仕事をやめることである。
 仕事の劣後順位をつけ、破棄することである。それは、顧客視点に立った業務の進め方について課題を抽出し、業務フローに反映させることになる。
 一人ひとりの担当業務を細分化し、タスクごとに前工程・自工程・後工程のプロセスを分析・改善・改良を施す取り組みである。そのためには、自分の業務に求められている期待・役割を認識することや、自分の仕事の顧客・後工程のニーズを把握する必要がある。現状の業務の進め方に、何が足りていて、あるいは足りていないかを顧客視点に立ってざっくばらんに議論することが求められる。現状を把握するために、対象職務の人に、仕事についてのワークフローを書いてもらい、一定時間に処理できる件数や一定の仕事に要する時間を定量的に把握する。
 また、各人の感じている問題認識を挙げてもらい改善に結びつける。

■分析の視点は次の4つである。

①その仕事を正しく実施するための必要条件(良品条件)
②その仕事の完了条件(判断基準)
③過去の不良具合やノウハウ
④問題点・改善点の対策と改良方法
 以上をまとめると、同職場の人たちで、お互いの日・週・月別の業務フローを図解して分析・検討した上、削除しても良い業務を見つけ出し、もっと労力をつぎ込むべきコア業務を決めて、職制へ提案していく取り組みである。

■誰が休んでもカバーできる職場に

 職務互換率アップのワークショップとは、次のような職場の改革である。多くの職場が下図のよう職務分担制になっているはずである。 
 一人ひとりの役割が細分化され、自己完結、閉じた働き方になっている。したがって、年休の消化が大変困難になっている。
 2010年6月の連合「生活アンケート」(組合員2万4711人回答)で、年休を取得できなかった理由(②③⑤)が、職務互換ができていないことを明確に示している。




①仕事が忙しかった 42・5%
②代替要員がいない 23・1%
③仕事上で職場・同僚に迷惑をかける 23・1%
④病気や休養に備えて残しておきたい 19・9%
⑤他人に代わってもらえない仕事 17・6%
⑥特に取得する必要を感じない 17・2%
⑦年休を取得しづらい雰囲気がある 14・9%

 背景に、IT化による仕事の個業化、パソコンに一人で向かって作業をする時間が増加していることが挙げられよう。そのために、

・すぐに反応が欲しい時にそれがもらえない
・対話のような双発的なやり取りがない
・誤解や感情的な葛藤が生じてもその場で修正できない
・困った時に相談したり、お互いにサポートし助け合ったり、協働して問題を解決するということが難しい
 以上のような仕事の個業化の悪循環で、他の人に頼ったり頼られたりせずに、仕事を自分だけで抱えるようになっている。

■知識労働者(ナレッジ・ワーカー)の働き方の特徴

 知識労働(ナレッジ・ワーク)の特徴は、業務が過度に細分化されていて、「個人持ち業務が多い」のが何よりの特徴である。
 さらに、「直接の業務対象が情報」で「主体業務は考えること」なので「業務が目に見えない」ことも。そのため、どこで業務が滞っているのか、周りからか判断できない。したがって、生産性、品質・創造性向上や事故・不正防止のためにも、業務の互換性を高めることが求められる。
 個人業務からチーム業務へ移行させるには、業務のマトリックス表を作成して、チーム内で誰でも担当できるように業務シェア(互換)する必要があるのだ。
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