今からもう4年余前になるが、2005年の2月から3月以降にかけて ライブドアによるニッポン放送の株乗っ取り騒動がマスメディアを賑わせた。ライブドアの社長は既存の体制に挑戦する英雄扱いをされていたが、彼の言動が社会の、とくに子供たちの心に微妙な影を落としてしまった。堀江社長は講演でこのように話す。「小・中高生でも株が買える時代が来たのだ」と。こうした拝金主義は子供たちの勤労観にどのような影響を与えるのだろうか。汗を流してコツコツと一生懸命に働くことは馬鹿らしいという勤労観を懸念する。
【「中一の娘が堀江さんに刺激を受けて、株の勉強を始めたんですよ」「娘の担任に、どう株を教えたらよいかって聞いたら、同じ相談を受けたのはクラスで3人目ですって」「『証券取引所の前にホリエモンの銅像を建てたいくらいだ』証券会社が集まる東京・日本橋兜町で、こんな冗談が交わされている」】(2005年3月28日付「読売新聞・朝刊」)
こうした勤労観の問題について深刻に考えなければならないのは、政治を始め、労働組合はもちろんのこと経団連も同様なのだが、多くの人が日本経済を担う経団連に動きの鈍さに疑問を感じている。その背景には経団連そのものが今回の「カジノ経済」にどっぷり使っている事実が明らかにされたことにある。
経団連は2009年4月2日、09年3月期決算で約20億円にのぼる有価証券評価損を計上する予定という(その後確認はしていないが)。資金運用として、為替レートの変動で償還条件が変わる「仕組み債」と呼ばれるハイリスク・ハイリターン型の金融商品を保有していたためで、3月末時点では経団連の金融資産約97億円の内、実に約40億円を占めていたという。しかも当初は資産を安全性の高い国債などで運用していたにもかかわらず、06年夏頃からこの「仕組み債」を購入している。おそらくハイリターンを当てにしての運用であったのであろうが、裏目に出たということだけで済まされる問題ではなく、カジノ経済そのものが、個人を含めてあらゆる団体によって成り立っていたことを示している。労働組合もけして埒外ではなく、例えば利率が低いからといって労働金庫から他の金融機関へ預け換えする例は枚挙に暇がない。
カジノ経済が個人の「儲けたい」心情に支えられていることを浮き彫りにしたニュースであると同時に、日本の伝統であった勤労観を蝕む一端を経営者団体自らが示した出来事である。こうして行き過ぎた小泉構造改革がもたらした「負の遺産」は誰の目にも明らかであるにもかかわらず、カジノ経済の悪夢が再び頭をもたげてきているという。
09年9月14日の読売新聞朝刊の一面トップの記事によれば、世界経済を戦後最大の危機に追い込んだリーマン・ショックから一年、アメリカでは早くも「夢を再び」とばかりに、リスクのある金融商品から消費者を守るための金融規制改革の柱といわれる「消費者金融保護庁」の設置を潰そうとする金融業界の動きを伝えている。
「消費者金融保護庁」は、日本でも同様に設置されたが目的は全く違う。アメリカ発といわれる今回の金融危機が、返済能力のない低所得者向けに融資した「サブプライムローン」が返済不能となり、しかも、ローン担保証券といわれるように、この返済不能となった不良資産を組み込んだ証券を世界中にばら撒いていたことが原因であったことは明らかだ。玉石混交の証券にすることにより、不良債権を目立たないように見せかけ、世界中に売りまくり莫大な利益を上げる一方で、損失が出れば買い手に負わせるこうした金融業界の手法を規制しなければならないと思うのは当たり前である。同紙は、さらに米金融大手をはじめ97社から会費を集めて運営されている「金融サービス円卓会議」が、有力議員に献金をして「消費者金融庁」設置を廃案に追い込もうとしていると報じた。加えて今度は「ローン債権の信用度が高い部分だけを集めたから」をセールスポイントに、同じように証券化した新商品の販売を始めたという。その理由は、「行き過ぎた規制で普通の金融商品しか売れなくなれば、金融機関の儲けが減り、米金融機関の国際競争力が低下してしまう」と、これまた国際競争力の御旗(みはた)を掲げて規制緩和の大合唱である。
そしてあれだけ非難を浴びた金融機関の高額所得も復活しつつある。ゴールドマン・サックス社は、年末のボーナス用に社員一人当たり2,000万円に達する積み立てをしているという。
目先の利益を優先して「儲けはポケットに、損失は社会に」する過ちを再び繰り返そうとしている。日本でもまた、アメリカの流れに乗り遅れるな、国際競争力のためだ、となるような気がするのは杞憂だろうか。早くも民主党の金融規制の方針に対して、一部の勢力が異論を唱えているのを見ると、必ずしも、杞憂だけではないようだ。
国民が金融は難しいからと、流れに身を任せたままでいれば、再び「喉に熱い思い」をしなければならないだろう。しかし一方で、今回の選挙結果から見ると、情報さえきちんと流されれば、国民は「喉もと過ぎれば」の過ちは繰り返さないのではないかとチョッピリ期待できる気もするのだが。
【「中一の娘が堀江さんに刺激を受けて、株の勉強を始めたんですよ」「娘の担任に、どう株を教えたらよいかって聞いたら、同じ相談を受けたのはクラスで3人目ですって」「『証券取引所の前にホリエモンの銅像を建てたいくらいだ』証券会社が集まる東京・日本橋兜町で、こんな冗談が交わされている」】(2005年3月28日付「読売新聞・朝刊」)
こうした勤労観の問題について深刻に考えなければならないのは、政治を始め、労働組合はもちろんのこと経団連も同様なのだが、多くの人が日本経済を担う経団連に動きの鈍さに疑問を感じている。その背景には経団連そのものが今回の「カジノ経済」にどっぷり使っている事実が明らかにされたことにある。
経団連は2009年4月2日、09年3月期決算で約20億円にのぼる有価証券評価損を計上する予定という(その後確認はしていないが)。資金運用として、為替レートの変動で償還条件が変わる「仕組み債」と呼ばれるハイリスク・ハイリターン型の金融商品を保有していたためで、3月末時点では経団連の金融資産約97億円の内、実に約40億円を占めていたという。しかも当初は資産を安全性の高い国債などで運用していたにもかかわらず、06年夏頃からこの「仕組み債」を購入している。おそらくハイリターンを当てにしての運用であったのであろうが、裏目に出たということだけで済まされる問題ではなく、カジノ経済そのものが、個人を含めてあらゆる団体によって成り立っていたことを示している。労働組合もけして埒外ではなく、例えば利率が低いからといって労働金庫から他の金融機関へ預け換えする例は枚挙に暇がない。
カジノ経済が個人の「儲けたい」心情に支えられていることを浮き彫りにしたニュースであると同時に、日本の伝統であった勤労観を蝕む一端を経営者団体自らが示した出来事である。こうして行き過ぎた小泉構造改革がもたらした「負の遺産」は誰の目にも明らかであるにもかかわらず、カジノ経済の悪夢が再び頭をもたげてきているという。
09年9月14日の読売新聞朝刊の一面トップの記事によれば、世界経済を戦後最大の危機に追い込んだリーマン・ショックから一年、アメリカでは早くも「夢を再び」とばかりに、リスクのある金融商品から消費者を守るための金融規制改革の柱といわれる「消費者金融保護庁」の設置を潰そうとする金融業界の動きを伝えている。
「消費者金融保護庁」は、日本でも同様に設置されたが目的は全く違う。アメリカ発といわれる今回の金融危機が、返済能力のない低所得者向けに融資した「サブプライムローン」が返済不能となり、しかも、ローン担保証券といわれるように、この返済不能となった不良資産を組み込んだ証券を世界中にばら撒いていたことが原因であったことは明らかだ。玉石混交の証券にすることにより、不良債権を目立たないように見せかけ、世界中に売りまくり莫大な利益を上げる一方で、損失が出れば買い手に負わせるこうした金融業界の手法を規制しなければならないと思うのは当たり前である。同紙は、さらに米金融大手をはじめ97社から会費を集めて運営されている「金融サービス円卓会議」が、有力議員に献金をして「消費者金融庁」設置を廃案に追い込もうとしていると報じた。加えて今度は「ローン債権の信用度が高い部分だけを集めたから」をセールスポイントに、同じように証券化した新商品の販売を始めたという。その理由は、「行き過ぎた規制で普通の金融商品しか売れなくなれば、金融機関の儲けが減り、米金融機関の国際競争力が低下してしまう」と、これまた国際競争力の御旗(みはた)を掲げて規制緩和の大合唱である。
そしてあれだけ非難を浴びた金融機関の高額所得も復活しつつある。ゴールドマン・サックス社は、年末のボーナス用に社員一人当たり2,000万円に達する積み立てをしているという。
目先の利益を優先して「儲けはポケットに、損失は社会に」する過ちを再び繰り返そうとしている。日本でもまた、アメリカの流れに乗り遅れるな、国際競争力のためだ、となるような気がするのは杞憂だろうか。早くも民主党の金融規制の方針に対して、一部の勢力が異論を唱えているのを見ると、必ずしも、杞憂だけではないようだ。
国民が金融は難しいからと、流れに身を任せたままでいれば、再び「喉に熱い思い」をしなければならないだろう。しかし一方で、今回の選挙結果から見ると、情報さえきちんと流されれば、国民は「喉もと過ぎれば」の過ちは繰り返さないのではないかとチョッピリ期待できる気もするのだが。



