日々、様々な組合様へお伺いさせていただいておりますが、このようなお悩みをよく聞きます。
組合活動に限らず、日常業務においても同様かと思いますが、主体性が生まれない要因として以下のようなことが考えられないでしょうか。
□あらゆる取り組みの実施背景(なぜ)が正しく理解されていない
□物事の決定プロセスに自分自身が関与していない
□取り組みを牽引する職場のリーダーが不在である
例えば、労使で取り組んでいる働き方改革の取り組みにおいても、取り組みの必要性は理解しているものの、いざ取り組みを推進しようとすると自分事として行動するのは、一部の人間のみというのが現状です。
長時間労働の是正や有給休暇の取得促進など、多くの取り組みにおいて「なぜこれらの取り組みが行われているのか」「取り組みの先に何を見据えているのか」が理解されていないことや、自分自身が取り組むことなのに、その「決定プロセスに自らが関与していない」ことなどが原因となり、結果、トップダウンで降りてくる「業務」として認識されています。当然、現場の組合員には「やらされ感」が生まれ、うまくいかないとその原因を他人に求めるようになります。
これでは、どんなに良い取り組みであっても目指す理想の姿を実現することはできません。
まず認識すべきことは、自身が描く理想の状態は誰かが実現してくれるものではなく、働きやすい職場をつくるのも、働きがいを高めるのも、その起点はすべて自分自身にあるいうことです。
昨今、労働組合は自分たちのために活動している組織であり、声を挙げる=要求(不平不満)を伝える相手と認識している組合員が増えてきたように感じます。本来、労働組合とは組合員一人ひとりのものであり、組合活動とは組合員全員で行うもののはずですが、どうしても他責の感情から脱却できないのです。
そのような意識が定着してしまっている組合員をすぐに変えることは難しいかもしれません。だからこそ、労働組合は日々現場に足を運び、組合員とコミュニケーションをとることで相互理解を深め、信頼関係を構築しているのだと思います。
組合員の不平不満の根源は、賃金・一時金の高低などではなく、自分の意見が職場運営に反映されていると感じられるかどうかだと思います。建設的な意見を述べてもそれが聞き入れられていないと感じた瞬間に、自分は必要とされていないと感じ主体性は一気に低下します。この自己重要感を高めるための取り組みこそが労働組合が行う対話活動(世話役活動)ではないでしょうか。
日々の対話にて経営の考えを組合員感情にあわせてわかりやすく変換し伝えていくこと、そして、何をどのように行うかを自分たちで考える場を提供することで、その取り組み自体を支援することが労働組合の役割であり、取り組みによって得られる小さな成果・変化を見える化させることで、承認・称賛の機会を与えていくことが、活動の継続性と組合員の主体性向上につながると考えます。
労働組合だからこそできること。それは、業務改善ではなく、風土づくり。
労働組合の強みを活かし、現場を牽引する強いリーダーを育成していくことの必要性を改めて感じるとともに、人の成長は活動を通じてしか得られないのではないかと思います。
私たちはこれからも職場を起点とした組合活動をご支援していきたいと思います。