そして最近、こういった組織運営のお話を伺う機会が増えていますが、最も難しいのは①であるように感じます。より正確に言えば「目標達成度の測定」です。
例えば「集会の参加率」であれば数字で測ることができますが、方針や理念に掲げるのは抽象的な状態(ex豊かでゆとりある生活)が多く、
どれほどそこに近づけたかの評価がしにくいのではないでしょうか。抽象的な理念に近づくため、
具体的に何をするのか、どこまでやるのかを適切に設定し、進めていくことが求められています。
みなさんの労働組合の「存在意義」はどのように定義していますか?
一般的には綱領、理念や規約に掲げているのではないでしょうか。
綱領や理念は設立より、変えずに普遍的な位置づけとしている傾向があります。
公然の事実として、この綱領、理念のもとになっているのが、労働組合法第2条。
「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する」
おそらくみなさんの労働組合の理念や綱領に「労働条件の維持改善」「経済的地位の向上」などの文言が入っていることでしょう。
組合活動の実態としては賃上げ、労働条件の改善などにとどまらず、幅広い取り組みを行っています。
ただ、組合員から組合への率直な希望や興味関心事は「賃上げ、労働条件の改善」だと思います。
そこで、綱領や理念に掲げている「労働条件の維持改善」「経済的地位の向上」を成果として可視化できるのが労働協約ではないでしょうか。
労働協約は労働組合が存在しないと締結できません。会社と労働条件等について対等に協議できる制度です。
労働組合が無い企業では就業規則によってワークルールが定められています。
就業規則とは会社の憲法とも言われていまして、集団的・統一的に労働条件や服務規律などについて使用者が定めたワークルールとなります。
また、労働条件などのワークルールは就業規則に記載して周知する義務が会社にはあります。
ただ、ここが重要で、就業規則の作成と変更に際しては、
従業員の代表から意見を聞いて書面に記名押印して、労基署長に届けて出れば成立します。
もう少し踏み込んで書くと、従業員の意見の賛否は問わず就業規則は受理されます。
一方で労働協約は労使の合意なくして変更はできません。
労働協約の締結内容や協議事項については、労働条件・賃金以外にも協議することが可能で、原則法的制限が無いのが特徴です。労働条件等について会社側からの一方的な作成・変更を防ぐためには、労働協約の締結に向けて労使が対等な立場で協議し、
就業規則同等またはそれ以上の労働条件等を書面に残し、会社と集団的な労働契約することが必要です。
本来、労働組合は労働協約を締結することで存在意義が発揮されると言っても過言ではないでしょう。
しかし、多くの労働組合で労働法のセミナーを実施していますが、
参加者に「労使協定と労働協約」「団体交渉と労使協議」の違い、「労働契約、就業規則、労働協約」の効力の優先順位などを
質問してもあやふやな回答が返ってきます。
また、労働協約の存在や内容についても同様に質問すると、①~④ケースに該当することが多いです。
①そもそも周知されていないから知らない
②周知しているようだが保管場所がわからない
③存在や保管場所もわかるが見たことがない
④見たことがあるが、読んだことがない
そもそも労働協約を周知していない、周知していても認知されていない、見たことはあるが内容まではわからないケースが多いです。
このことからも周知の仕方や理解の促し方にも課題があるようです。
<参考>
厚生労働省 平成23年労働協約等実態調査結果の概況
①労働協約の締結の有無 有り91.4% 無し8.6%
②周知の方法(している86.4 %/していない9.9%)
・労働組合員全員に配布・・・・・・・・・・・・・・・・39.7%
・職場ごとに回覧、提示・・・・・・・・・・・・・・・・40.4%
・説明会の開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23.2%
・電子的手段(インターネット、LANなど)の活用・・・・・32.8%
・その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7.1%
調査時期:平成23年6月30日現在 調査対象数:4086件 有効回答率は63.6%
組合の三役からすれば、支部執行委員クラスなら最低でも労働協約の内容や基本的な考え方ぐらいは知っておいて欲しいところでしょう。
組合員からすれば「仕事も忙しくわざわざ労働協約なんて読んでいる暇はないですよ」と言いたいのかかもしれません。
これから「働き方改革」の取り組みと関連して、早ければ2019年4月より「時間外労働の規制」など
労働法の改正も予定されています。
多様な働き方やワーク・ライフ・バランスの実現に向けて各企業でもワークルールの変更や見直しがこれから進んでいきます。
これは組合員の働き方にも大きく影響し、重要な関心事項となり得ます。
組合員が組合に対して興味関心が無いと頭を抱えている現状に対して、
ワークルールの見直し、変更が増えるこの機に、組合活動の根幹である労働協約をもっと上手に活用しない手はないと思います。
改めて労働協約の意味や価値を知らない組合役員及び組合員に理解を促し、
労働組合としての存在意義、労働組合の特権・メリットをもっとアピールすることで労働組合への理解が深まることでしょう。
組合活動は、情報収集・情報伝達の繰り返しです。
頻度や中身の差はあれど、対話、会議、オルグ、広報活動など、組合にはさまざまなコミュニケーション活動が存在します。
しかしながら、組合役員の入れ替わり、情報ツールの不整備、組合員の帰属意識の低下などにより、
「決めたことそのものが認識されていない」「決めたことが遂行されない」「目的のレベルがばらばら」……
といった問題が発生しがちです。場合によっては毎年活動がリセットされている組織も。
組合活動をステップアップさせながら、情報のやり取りの方法・行動の継承を実現するために、
組合役員向けの「ビジョンストーリーマップ」というアウトプットをご紹介します。
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ビジョンストーリーマップ
◆主なねらい
1 個別の問題提起に終始せず、「目指す状態」に向かう組合活動を意識する。
2 できるだけ多くの組合役員が前向きに活動構築に関与する。
3.アイデアや議論の軌跡を可視化し、活動実践や後任への継承に活用する。
◆やり方
1 テーマを決める(組合全体、支部別、職場別、「労使関係」「働き方改革」などの課題別 etc)
2 そのテーマの目指す状態と達成目標時期を定める
3 目指す状態に至るまでに中間ポイントを2~3か所置く(例:半年後、1年後)
4 各ポイントの目指す状態を定める
5 各ポイント間で必要な活動・行動を出す★
6 全体をチャートで表現 ⇒ビジョンストーリーマップとして模造紙にまとめ★
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特に★部分を共同作業により、目指す状態(ビジョン・方針など)への意識が高まり、
活動構築の意味理解や組合役員同士の価値観共有などが期待できます。
また、研修カリキュラムとしてはもちろん、ビジョンストーリーマップをアレンジすれば
活動方針策定、組合員向け議案書、労使協議用の資料、職場集会用の資料などにも活用できるでしょう。
《お問い合わせください》
既に、いくつかの組合様で課題解決や方針策定に向けたビジョンストーリーマップづくりをお手伝いしています。
進め方・具体的なアウトプットイメージなど、詳細はお問い合わせください。