A労組では、女性組合員を主体とする15名程で編成される委員会を設立し、長時間労働対策
の検討を行っていた。同席した委員会では、職場の長時間労働の実態を把握するために委員会
メンバーが職場会を開催し、その情報を基に労組としての対応を検討中。当日は、専従役員が
ファシリテーターとなり、現場で実務を行う委員会メンバーからのアイデアを求め、解決方法
について論議を交わしていた。
活動の方向性が定まったところで、執行部の代表がメンバーに対してお礼を言い、今回の検討
内容は、執行部が責任を持って会社側と協議し、活動内容の説明を行うとの報告があった。
すると、委員会メンバーの一人が手を挙げ、執行部に対してこんな発言を行った。
「今回の職場会に協力いただいた組合員のためにも、最後までこの取り組みに協力をさせて
ほしい」執行部は思いもよらぬ発言に困惑した。
その後、各職場での労使協議に委員会メンバーが同席し、組合が企画した取り組みの説明を
行うことになった。
労使協議の後、会社側から「労使の取り組みとして協力したい」との返事を受け、組織全体の
活動へと発展した。
委員会を振り返り感じたのは、委員会メンバーが組合活動を通して「オーバーアチーブ」な
状態になっていたといえる。オーバーアチーブとは、簡単にいうと「義務的な領域を超え、自ら
の使命感で目標に対し主体的に行動し、期待を超える成果を生み出す状態」といわれている。
つまり、評価や報酬といった外的な要因からではなく、内的な動機の中で主体的に行動している
状態である。
ある時、委員会メンバーの一人と面談をする機会があり、感想を伺った。
そのときのコメントの一部がこうである、「私は、自分がここまで関心をもち行動するとは思って
いなかった・・・・」
このコメントを聞き感じたのは、取り組みを通して、労働組合の意義や必要性を感じていない訳
ではないが、むしろ「自分自身がなぜ、こんなに主体的に発言し行動したのか」自分自身への驚き
の方が強かったと思われる。
ご存知のとおり、組合活動は、評価や報酬で誘引できるものではなく、また、すべきものでもない。
つまり、活動を通して、より多くの組合員が活動に参加し、自分自身でオーバーアチーブな状態を
見出すことが必要となる。また、そのためのきっかけの手法も問われている。一人ひとりの組合員
が組合という場を通して、何かに目覚め、自分自身の新たな発見を行うことで、労働組合の必要性
を感じることへつながると考える。

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