■ われわれの成果は何か? ~成果を具体的に定義する~
(ドラッカー 生涯問い続ける5つの問い)
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(前回までのおさらい)
○ 労働組合などの非営利組織の成果は、つねに自分たちの外にある。
1)外側(相手・顧客)を定義する。
2)外側(相手・顧客)が何を価値と考えるかを調査する。
3)価値を満たす手段・方法を考えて実行する。
4)効果検証。
外側の【行動、境遇、健康、希望、適性、能力etc】の向上を
調査する。
○ 組織の使命に基づき、成果をより具体的に定義する。
【人々の行動、境遇、健康、希望、そして彼らの適性と能力】の向上などを
成果と定義する。
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労働組合において、具体的な成果というものを定義している組織は少ないのでは
ないでしょうか。
ドラッカーは、著書「非営利組織の成果重視マネジメント」において、労働組合
などの非営利組織に対して、成果を重視するマネジメントを、説いています。
働く人々に対して、労働組合が成果をあげることを実現しなければならないと
いうことになるわけです。
確かに、成果を上げるということで、組合員からの支持や協力を得るとともに、
組合の使命を達成することにも近づくはずです。
これまで、労働組合の成果といえば、賃金や労働条件の向上と、地位向上によって
組合員が豊かさを感じることが、主たる成果と定めるところがほとんどでした。
それらの成果を上げ続けることが可能だった時代は、それによって、組合員の
支持を得られていました。
しかし、それだけを成果と定義してしまっていては、大幅な賃上げが期待できなく
なった、近年の状況では、成果が全く上がっていないと厳しく追求されてしまい
ます。
したがって、多くの労働組合では、運動方針に働きがいの向上や、ワークライフ
バランスの向上、メンタルヘルスの向上などを成果の項目に加えるところを目立
ってきています。
そうだとすれば今、組合員にとっての成果がなんであるのかを、ハッキリと定義
しなおさなくては労働組合自体の存在意義や地位を下げてしまいます。
成果はミッション(使命)に照らし合わせて定義することが大切です。
例えば、成果の定義の例は次の通りです。
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使命: メンタル・ダウンの広がりを防ぐ
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成果:「うつ病なんて他人ごとだ」という意識や態度が、社会だけでなく自分
たちの問題でもあるとして、受け入れる態度に変化する。
対策を行ったグループの人々のコミュニケーションや人間関係に関する働きか
ける意識や行動の変化。
結果としてのメンタルダウンによる自殺者や休職者の減少。
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使命: 社会と組織へ貢献する人を輩出する
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成果:組合員はチームに貢献し、他のメンバーとの関係もよい。
非組合員の管理職になっても、より優れたリーダーシップを発揮し、チームの
中から、自分以上の人材を輩出している。
組合員はよき市民となり、地域のコミュニティーと社会の向上に貢献する。
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使命: コミュニティの構築と活性化のために、人々の意識を喚起する。
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成果:弱者は安全に、またケアされている。また弱者をケアするためのコミュ
ニティとネットワークを構築している。コミュニティの人々と協力しながら、
組合員とその家族を支援するための、サービスがコミュニティの人々主体性を
もって取り組めるように提供されている。
コミュニティにとって最も重要な課題が何であるかが確認され、解決されて
いる。
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労働組合における成果は、働く人々の働きがいの向上や、心と体と生活の向上
などが、具体的に示されることが望ましいといえます。
その成果も、色々と掲げすぎる傾向が見受けられますが、少ない資源で活動して
いる労働組合にとって、人・資金が分散してはたいした成果はあげることはでき
ません、資源を集中してこそ、成果をあげられます。
かつて効果があった活動でも、時代遅れになった活動を放棄することから始め
なけれればいけません。
しかし、それにはかなりの抵抗が予想されます、何かを放棄しようとすると
感情的で攻撃的な抵抗が発生します。しかし、それは一過性のものです、放棄
して半年後、不思議なほど消えているでしょう。
(ドラッカーは、まず一旦、無条件に数ヶ月間破棄して、その後どうしても、
不都合があるものだけ、復活させる手法で、業務をスリム化したそうです。)
そうして放棄しなければ、少ない資源では期待する成果を生み出すことはできま
せん。
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何かのネタとなれば幸いです。