ゆにおん・ネタ帳

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2012年

職場集会をもっと活性化しよう
松山
2012/08/12
 職場集会に関して組合役員から聞く声。

「忙しくて人が集まらない」「関心のあるテーマしか参加してくれない」「昼休みの空いた時間にやるのが精一杯」「組合員からほとんど意見が出ない」「前向きな発言が少ない」、職場集会に関してお伺いすると、多くの組合役員が言われることだ。

 このような声が参加者(組合員)からも主催者(組合役員)からも共通してあがるのはなぜか。
 多くの組合では、組合員の声を聴く貴重な場面である職場集会の実施に対して、事前のレクチャーなしに進行役を任されることが一因にあるようだ。日常的に職場などで会議の進行に慣れている役員でなければ、いきなりぶっつけ本番では壁に当たることは容易に想像できる。

 労働組合が抱える課題とその取り組みの中で、2011年度の最も重要な課題は(日本生産性本部の調査)組合員とのコミュニケーション強化(1位、17.8%)、次世代役員の育成である。(同率1位、17.8%)、総労働時間の短縮、人事制度(処遇・評価等)の見直し、職場風土の改善と続く。

 職場集会をどう活性化するかは、これらの課題を改善する上で鍵となる活動となりうる。組合員とのコミュニケーション強化の1つのシーンとしてもっと重要視すべきである。職場風土改善の第一歩は職場で働いている組合員の声を聴くことであろう。

 職場集会を開催する事前準備段階で行うべきこと、例えば、職場討議・集会のゴールイメージ(到達点)=成果(獲得目標)を明確にイメージして臨んでいるか。
議事進行段階で組合員の意見や声を引き出す効果的な質問ができているか。
 集会後に決定事項を実行に移すためにどのような行動を起こしているか。段階ごとに職場集会を効果的に行うためのポイントが存在する。

 職場集会の進行に留まらないが、何か物事が上手くできるようになる一つのパターンとして以下のような軌跡をたどる。

 ①実践 現場ですぐ使う、実践する(即実践)
 ②振り返り 成功・失敗要因分析(質問する)
 ③学習する うまくいっている人のやり方を学ぶ、盗む
 ④実践 繰り返し、実践する
 ⑤行動化 自然に出来るようになる

 ②の段階で職場集会後に振り返りをやっているだろうか。何が上手くいって、何が上手くいかなかったのか分析しているだろうか。 さらに③の学習する段階で、上手く意見を引き出せている組合役員はどうやっているのか、共有されているだろうか。
これらを改善するために、組合役員にインタビューし、埋もれている知恵(暗黙知)を形式的な知恵に転換する手法がある。
 
 更に近年注目されている方法として行動観察というものがある。人が何をどのように使って、あるいはどのような姿勢で、様々なことを行っているのかを見て、その結果を分析することを指す(行動観察研究所の定義)

 これらの手法を応用して、職場集会での役員の方の行動(言動)をじっくり観察することで、成功・失敗要因を分析し、職場集会に関する行動を整理することで、どうやったら職場集会がより活性化するかの打開へのヒントが得られると考えている。

 これから次期の運動方針作成や、2013年春闘に向けて、職場オルグや職場集会を多く重ねていく時期に入る。職場集会の進め方に悩みを抱えている組合の役員の方はご一報下さい。職場集会を観察させて頂き、上手な方のノウハウを整理し、それらの観察結果を元に、職場集会を活性化する方法を様々な角度からご支援します。


労働組合の未来を考える3つのテーマと4つの眼力
浅野淳
2012/08/07
組織が新たな価値を創造するとき、多面的に物事を捉え、活動の再構築と具現化することが大切である。本稿は、これからの労働組合にどのような可能性があるのか、その実践に向けた3つのテーマと4つの眼力(複眼)を紹介する。これらの掛け合わせを通じて、労働組合の存在価値向上のヒントになれば幸いである。

その一、労働組合の次世代トップリーダー育成「人物づくり」。
職場における労働組合の存在意義が曖昧化している。これからの企業の存続・発展には、職場で労働組合が機能し、「開かれた職場」の実現が不可欠である。経営陣からの一方通行マネジメントだけでは、付加価値の高い製品・サービスが生まれないことは今や、労使共通の経営課題である。労働組合の強みを活かした人づくりとして、トップリーダーを育成する場づくりが重要である。問題解決力のある〝できる人″を育てることも重要だが、胆力のある情理を尽くせる〝できた人″の発掘と育成に力を注ぐことをお勧めする。未来を託したいトップリーダーとは以下の「4つの眼力」を身に付け実行できる人物である。
①鳥の目・・・労働組合を鳥瞰する大きな枠組みとして捉え、知る力。
②虫の目・・・労働組合の現実を知り、他労組をベンチマークし、学ぶ力。
③魚の目・・・世の中の流れを読み取り、未来の労働組合のあり方を探る力。
④トンボの目・・・複眼思考で物事を捉え、情理を尽くす胆力をもった人物。
これらの目を携え、労働組合を取り巻く環境に合わせて見えるものの見方を変え、目に見えないものを感じられる人物が育つ運動を検討してほしい。

そのニ、労働組合の経営対策活動としての「職場づくり」
労働組合の経営対策活動は、主に経営サイドからの経営環境・財務に関する情報に対応するに留まっていないか。実際の経営対策は多岐に亘っており、まさに複眼的な見方による評価・分析・対策が必要とされている。労働組合が経営を学び、主体的に自社の経営に貢献できるポイントは何かを議論することは必須である。そのためには、組織を二次元(組織-個人)ではなく、三次元(組織-職場-個人)で捉えることである。労働組合として注目すべきは、小集団である職場である。職場の生産性向上が、組織全体の付加価値を押し上げるような組合活動に焦点を当てること。これからの労働組合の経営対策は、以下の4視点で自社の分析を行い、労働組合としての課題立案とその解決策を検討することをお勧めする。
①視る・・・自社の足腰(マネジメント・組織力)を視る。
②診る・・・自社の心と頭(経営理念・経営戦略・方針)を診る。
③看る・・・自社の体力(財務・企業価値)を看る。
④観る・・・自社の環境(市場・マーケット環境)を観る。

その三、労働組合の活動品質を高める「組織づくり」
労働組合の活動品質とは何か、それは、労働組合が備えている仕組みを機能させているかどうかに尽きる。綱領に基づいたビジョンや方針を定め、活動を実践しているかどうかである。言い換えれば、労働組合が有している機能が発揮しているかどうかである。経営者と向き合い、労使関係を健全なものにし、労使協議を重ね、組合員による経営参加を実現する強い組織づくりのための機能を発揮しているのかどうか。そこが今、問われている。そのためには、今一度、以下の4つの視点で組織を分析してみることをお勧めする。
① ヒトをみる目・・労働組合による人材育成機能の発揮
雇用と高付加価値な仕事、豊かな人生を生み出すためのビジョンはあるのか?
そのためにどのようなビジョンを持っているのか?
② モノをみる目・・労働組合のブランドイメージを刷新する機能の発揮
労働組合の発信する言葉は組合員に届いているのか?組合員にどんなイメージを与えているのか?その言葉は組合員の働き方・生き方におけるガイドラインになっているのか?
③ コトをみる目・・労働組合による組織点検と改善の機能の発揮
職場でどのような出来事が起こっているのか?それは自分たちで解決できることなのか?労使共同で解決すべきことなのか?組合員は義務を果たしているのか?
④情報をみる目・・情報の共有と、開かれたコミュニティ機能の発揮
労働組合が取り扱う情報を、関係者にわかり易く伝えているのか?組合員からの情報に意味を持たせて組織の課題として経営に提起しているか?世の中の多様性を理解して開かれた組織になるよう情報を発信しているのか?

これら3つのテーマと、それぞれの4つの眼力を掛け合わせ、分析→仮説→計画→実践→評価のサイクルをまわすことが労働組合の可能性を押し広げることに発展にする。

以上の3つの切り口については
1.本気の人物づくり「徳芯塾」
2.労働組合の強みを活かした「経営対策サポート」
3.活動品質をブラッシュアップする「活動アセスメント」
としてご案内中です。お気軽にお問合せください。


羽地朝秀に学ぶ 屈辱的な選択肢を選ぶ勇気
小林 薫
2012/07/29
先月家族で、沖縄に行ってきました。3回目でしたので、今回はガイドブックではなく、事前にもっと風土について知りたいと思い、沖縄の歴史について本を読んでいきました。

琉球王朝の歴史は、平安末期に源為朝が、保元の乱で敗れたのをきっかけに、沖縄に流れついたことから始まるとされています。その後、北山・中山・南山の三山時代を経て、尚氏によって統一され、明への朝貢貿易で発展します。また明だけでなく東南アジア諸国との貿易で栄えますが、1609年に薩摩藩の侵攻を受け、支配下に置かれることになります。これは中国(清)へは、独立しているようにみせておきながら、実質的には島津氏の支配を間接的に受けている状態で、現在の日本とアメリカの二重の支配を受けている状況と重なってみえます。

島津侵攻から約50年後、疲弊した琉球を立て直すべく、摂政に就任した羽地朝秀(はねじちょうしゅう)は政治と宗教を分離して財政を再建します。また、歴史書「中山世鑑」を編纂し、琉球王朝の歴史が、源為朝から始まっており、日本と沖縄の祖先が同一であると主張し、薩摩藩の支配を和らげようと努力します。羽地朝秀は、おそらく当時ほとんどの人が信じていなかったであろう、相手に迎合するような「伝説」を引っ張り出してまで、琉球を守ろうとするのです。

当時の文化や状況、組織の論理からすれば屈辱的な選択肢だったことでしょう。しかし、生き残るためには最善の選択肢であったのかもしれません。体裁やプライド、これまで積み上げてきたものを手放すことになっても、現実を直視し、本当に組織のために何が必要なのか選択するべき時が、私たちにもあると思います。カーッとならずに、冷静に最善の選択肢を選びたいものです。

ひとを支える力
藤栄麻理子
2012/07/22
個人的な話なのですが、先日“初めての仕事”に挑戦する機会をいただきました。

初めての仕事というのは、どんなものであれ緊張や不安を感じるものですが、
今回は心配で心配で、正直に言えば「いっそ逃げたい!」と思ったほどでした。
(とはいえ、本当に逃げるような勇気もないのですが・・・・・)

それでも、不思議と「うだうだ言ってないでやるしかない!」「どうせなら楽しくやろう」という思いが強くなり、
結果としてやり切ることができたことは、何物にも代えがたい経験となりました。
もちろん、仕事なのでやるしかなかったというのはありますが、
こんな風に気持ちを前向きに持てたのは、まわりの方々の支援があればこそでした。


よくこんなお悩みをを伺います。

「組合員の主体性をもっと引き出せる研修はないですか?」
「もっとみんなに前向きになってもらいたいんだけど、どうしたらいいですか?」

本人のやる気や姿勢も重要ですが、1人ではどうしても頑張りきれないとき、
やらなくてはならないけど不安を感じているとき、まわりの支援のあり方というのも
ひとつのキーになるのではないでしょうか。

支援といっても代わりにやってあげるとか、甘えさせるということではありません。
人を前向きにし、やる気を引き出す支援には、次のようなポイントがあるのではないかと思います。

■信頼して任せること
細かい部分まで指示するのではなく、ある程度の大枠を示した上で
裁量を与えてくれること。まずはやらせてもらえること。

■指摘すべきところは、きちんと指摘すること
できていない部分や不足しているところ、改善が必要な点について、
遠慮することなくきちんと指摘してくれること。

■不安などのマイナスな気持ちも受け止めること
やらなくてはならないことであっても、不安な気持ちになることは
誰にでもあることです。その気持ちにふたをして頑張るのではなく、
まずはそれを吐き出させてもらえること、受け止めてもらえること。
1人で我慢して頑張るよりも、ずっと前向きに取り組むことができます。


これらのポイントは私の個人的な感覚によるものですが、
先日開催された「現場知フォーラム~女性活性化支援~」の中で、
女性役員の皆さんに考えていただいた「やる気を引き出すボス(イチオシボス)」と
「やる気をそいでしまうボス(イマイチボス)」の特徴にも、共通する部分がありました。
ある参加者の方はこのようにおっしゃっていました。

「支援しているつもりかもしれないけど、仕事の負担を軽くし過ぎたり、
 遠慮して悪いところを指摘してくれない上司だと、全然期待されてないって思う。
 不安はあるけど、やる気もあるんだから、そこを信じてくれればいいのに。」

この言葉に私は深く共感しました。
私も、今回の仕事についての不安な気持ちを聴いてもらえたからこそ、
前向きに覚悟して取り組むことができたと思いますし、
率直なフィードバックがあったからこそ、自分を信じて進むことができました。

一人ひとりの頑張りを支えるのは、やはりこうした支援があってこそ。
私もまわりの人を支えられるよう、“支援する力”を身につけていかねばと感じたのでした。



組織が成すべきこと
佐々木 務
2012/07/15
最近の消費増税議論の中で、ふと思い出したエピソードがありました。

個人的な話で昨年の事なのですが、近所の自治会の集会に参加したとき、自治会予算の使い道の話になりました。

あるご婦人が、自治会で例年行っているレクレーションに対してご意見をされました。
「レクレーションは参加する人と参加しない人がいますよね。公平性を考えて参加しない方にも均等に還元できるよう、
みんなが使える例えば市の有料ゴミ袋等を配付したらどうでしょうか?」
という提案でした。

なるほど、どの家庭も使用するゴミ袋で自治会費を還元すれば公平かもしれません。
しかし・・・年間1800円の自治会費を払って、毎年400円のゴミ袋をもらう・・・?
これって自治会費を1400円にして自分で購入すれば良いのでは?

「わざわざ自治会を通して配付してもらわなくても、自分で買えば良いでしょう!」
そんな突っ込みが浮かんだのですが、年配の方々の中で若輩者の私が意見をいうのも憚られた事と、
自治会役員の反応から、提案を鵜呑みにはしそうになかったので、小心者の私は発言をしませんでした。

結局「色々ご意見はあると思いますので、検討します。」という事でその集会は終わりました。

そして・・・今年もレクレーションは行われ、ゴミ袋が配られる事はありませんでした。

発言されたご婦人のお気持ちはわからないでもないのですが、何のために自治会という集合体があるのか?
レクレーションで地域住民のコミュニケーションを図る事、地域の防犯、防災活動などで協力しあう事など。
自治会だからこそできる活動に意義があるのであって、個人でできることは個人でやればいい事です。

自治会の活動しかり、労働組合の活動もしかり、個人個人のあまりに近視眼的な強い要望に配慮しすぎて、
いつのまにか全体や将来の利益を損なう活動に陥ってしまう事は、組織運営によくある事です。


「国民の生活が第一」と言いながら消費増税を先送りし、無駄を省けば財源がいくらでもあるかのような幻想を抱かせ、
耳当たりの良い政策を掲げて人気を取ろうとする政治家には、果たして責任ある中長期の視点があるのでしょうか・・・?


戦略とは
伊東
2012/07/08
先日、とある組合役員の方々とお話していた時のことです。
時期的なこともあり、話題は次期の体制や方針についての事だったのですが、
しきりに「戦略が無いとダメなんだ」と呟いていました。
戦略とは、“物事を進めるための作戦ややり方”の事だそうです。

非常に印象に残ったので、いろいろ調べてみたのですが
一般的に戦略とは“特定の目的に対する枠組みや方向性”だそうです。先ほどの方の認識も正しいものでした。

また戦略というものを分かりやすくに伝える為に、以下のような例えがありました。
皆さんも考えてみてください。

Q.日本代表チームの監督が、「どういう戦略でワールドカップに臨むのか?」と聞かれた場合、
どのような回答が正しいのでしょうか?

①「日本代表の戦略、それは決勝トーナメントでベスト4に入ることだ」

②「今回の代表メンバーはこの23人。先発はこの11人で、システムはこうなって
こういうポジションで配置する。後半では状況に応じて○○のメンバーチェンジやシステム変更を考えている」

③「対戦相手は○○国なので、こうやって攻めてくるはず。グラウンドコンディションは悪くないだろうし、
当日の気温や天候はこうなっているだろう」

④「最近のサッカー界の世界的な流れは、出来る限りボールを保持する時間を長くし、
相手ボールになったら素早く奪うこと。だから日本の戦略もそれで行く」

⑤「選手のモチベーションは非常に高い。最後まで得点を狙い続けるだろう!」

どうでしょうか。それぞれ見ていきましょう。
①は戦略ではなく、目標です。目標が設定されなければ戦略も何もないのですが、目標設定=戦略ではない、
ということです。「今期の職場会参加率を○○%にする!」というのは目標ということになります。

②は戦略ではなく組織体制の話です。「役員体制は○○人、専門部は○種類あり、
そのメンバーは誰と誰にする」というのも戦略ではありません。

③は環境分析です。経済状況や社会情勢といった外部環境、企業業績や社員モチベーションといった内部要因を
正確に把握するのは重要ですが、それに対応する戦略とは言えません。

④は他者事例です。他組織のやり方を見て、何が流行し上手くいっているのかを知るのも重要なことですが、
それを自チームがそのまま実践できるとは限りません。うまく取り入れる事が出来れば戦略になりますが…

⑤は、もはや精神論です。「どうやって点を取るのか」が決め事として存在していれば、
戦略の一部になるかも知れません。

そもそも、各専門部(ポジション)ごとに戦略を立てて考えても、
全体(チーム)として見たときの戦略が明確でないと、機能しません。
部門ごとの「ああしよう、こうしよう」という戦略を統括し、
大局的な視点で戦略を立てる監督の責任は重大です。

そして戦略を実現するための仕掛けとしては、何よりリーダーの強い思いが必要になります。
ワールドカップで、優勝を目指していきましょう!

変わらない使命
服部 恵祐
2012/07/01
 1960年代の高度成長期のモータリゼーションとともに、それまで都市交通の中核をなしていた路面電車は、渋滞の元凶とされた。大都市の交通は、大型バスや地下鉄に替わられた。マイカーの普及もあり、路面電車は次々に街から消えていった。東京、京都、大阪、神戸…。

 広島の路面電車もご多分にもれず、存続の危機に瀕していた。会社は将来の合理化、廃止(安楽死)に向け、定年退職者が出ても補充せず、間引き運転や運行時間の短縮などを組合や組合員に持ちかけてきた。組合員にとっては、労働条件の緩和である。労働密度が緩くなり、帰宅時間も早くなる。喜ぶ組合員も多かった。でもそのような弥縫(びほう)策に、10年、20年先を見据えて「ノー」といった労働組合がある。

 私鉄中国地方労働組合広島電鉄支部(広島電鉄の労働組合 執行委員長・佐古正明氏)である。

 組合は、むしろ「電車の機能を高めよう、利便性や社会性を高めよう。その結果、われわれの職場と雇用を確保しよう」と決断し運動を展開し始めた。「安全・迅速・快適・便利・廉価な路面電車」を目標に、組合員に「もっと働こう」と叫び続けた。ストライキばかりをしていた組合からの大転換である。組合員は怒り、組合役員を吊るし上げた。
 でも、組合はひるまない。「利用者(顧客)志向」に働くことが、将来の路面電車という「職場」を守ること、「組合員の雇用と家族を守ること」になるという信念があったからだ。

 路面電車が使えなくなっても新車両を購入する資金がないので、路面電車を廃止した都市から中古を購入した。気がつくと、広島は全国の路面電車が走る街「動く電車の博物館」と言われるようになり、鉄道ファンから人気を博する存在になっていた。
 東京新聞大図解シリーズ「世界の路面電車」(2011年2月)のデータによると、2009年、日本の路面電車の1日当たりの利用者数の第1位は広島電鉄で10万3600人/日である。第2位は東京急行電鉄で5万5700人/日である。廃止寸前の広島電鉄の利用者数は、今ではダントツの日本一となっている。


 1990年代、さらに危機が訪れる。公共性の強い鉄道事業は、赤字になれば運賃を上げ国の補助金を受け入れる体質であった。そんな経営が90年代からの規制緩和で許されなくなったのだ。
 会社は、定年退職する正社員がでると替わりに契約社員を採用してコストダウンをはかった。職場内の正社員と契約社員の溝が深くなっていった。組合は、また、この会社の生き残り施策にも長期を見据えて「ノー」と言った。
 「正社員の賃金を下げてでも、契約社員を正社員にして同じ処遇にしろ」、と。有名になった広電の「賃金シェアリング」である。実際には、賃金が下がる対象の正社員は、比較的賃金の高い50歳以降の高齢者が中心である。賃金が下がるといっても毎年1割ずつ10年間かけて下げる猶予措置と定年制度を60歳から65歳に延長する施策をしているので、実質の会社原資は3億円以上増えている。

 「同じ職場内に差別が発生する。困っている人と困っていない人の分断を組合が見過ごしていると、その災いが自分たちに降りかかってくる」ことを広電の労働組合は教えてくれる。

 「組合は、たとえ組合員に文句を言われても、10年先、20年先の組合員の幸せを考えて運動を進めなければならないんです」と実体験に基づく佐古委員長の言葉が染みる。
 昔は「ストライキ」、今は「もっと働こう」と広電の組合はいう。でも実現したいのは「職場と雇用を守ること」「仲間の差別をなくすこと」。組合の存在理由は、今も昔も何一つ変わっていない。


 多くの経営者は、過剰な利益市場主義に陥っている。経済紙も「営業(とか経常)利益ランキング」は毎年発表するが、「雇用者増大企業ランキング」は発表しない。
 職場の仲間をなくしてまでも、家族を路頭に迷わせてまでも、利益の最大化に躍起になる企業経営者。そこには、経営者としての誇りも誉れもない。
 経営者は、「事業構造改革」と称して「早期退職」、時には「希望退職」という麻薬中毒に陥っている。イノベーションを起こせない代償を従業員の雇用削減で埋め合わせる経営者が多くなってはいないか。退職というコスト削減策を打たざるを得ないとしても、せめて、人としての「思いやり」や「敬意」は必要ではないか。新聞や雑誌に利益をあげた名経営者として取材を受けている場合ではないはずである。

 「従業員とその家族の雇用を守る」ということを経営者がしにくくなった現在、既得権を放棄してでも長期的視野に立った「雇用確保」の取り組み、差別のない「職場づくり」は労働組合が担うしかない。

 これは、昔も今もこれからも変わらない、変えてはならない労働組合の「使命」である。


組合外の活動から学ぶこと
細越 徹夫
2012/06/24
 青森県の南東部に南郷という町がある。以前は南郷村であったが、2005年に八戸市
へ編入し、南郷区となった。私の実家が八戸市にあることもあり、マイカー帰省した
際は南郷インターチェンジから降りて立ち寄ることもある小さな集落である。
実はこの南郷区、地域振興に熱心な町で、アイディアに富んだ多彩な企画を実施して
きている。毎年、野外で開催される「南郷サマージャズフェスティバル」は20年以上
続くイベントで県外からも多くのファンでにぎわう。ご存知の方もいるのではないだ
ろうか。
このように紹介すると、さぞ活気ある町かと思うかも知れないが、インターを降りて
町の中に入ってみると、町の中心には数件のお店がある程度。静かな森の中の集落と
いったたたずまいの町だ。

5月の連休に帰省した際、家内が「南郷って知ってる」と尋ねてくる。よくよく聞く
と「南郷」が知りたいのではなく、「南郷というところに『山の楽校』という廃校を
利用した学校があるのでいってみたい」というのである。家内の説明によると「山の
楽校は廃校となった小学校の校舎を利用した施設で、廃校を利用して成功している数
少ない事例なのだ」と教えてくれた。しかもビックコミックの美味しんぼでも取り上
げられたところらしい。元々この「山の楽校」は、南部地方の焼き畑「あらきおこし」
を半世紀ぶりに復活し、昔ながらの味を再現しようとした取り組みから始まったとい
う。
そんな説明を聞いて私も一度行ってみたいと思い、足をのばすことにした。

山の楽校の場所はわからなかったが、南郷に行けば場所はわかるだろうと思い、まず
は南郷に行ってみることにした。現地についてみると運よく道の脇に「山の楽校はこ
ちら」という案内板を見つけたので、指示に従って行くことにした。

案内の看板は道の随所に点在し、道に迷わないようにとの配慮だろうか短い間隔で設
置されていた。いずれも手作り感覚で、ユーモラスな案内になっている。「本当にこ
んなところに目的の施設があるのか」と思わせるような山道を走ること10数分程で
目的地に到着した。駐車場に車を止めて校舎へ向かうと、「こんちには」と明るく元
気な声で迎えられた。「いらっしゃい。校舎の中も見学していってください」と親切
に言葉をかけてくれた。なぜかとっても温かみがあり感じがよい。

当時そのままの状態の木造建築の校舎に足を踏み入れると、通路にはこの学校を卒業
した生徒たちの写真や習字など思い出の品が飾ってある。一歩教室に足を踏み入れる
とかつての図書室や音楽室に楽器や本が雑然と並べられてる。まるで学校の博物館を
思わせる。

補修された階段を上り2階の教室の窓から外を眺めると、もう都会では見ることので
きない懐かしい田舎の風景が広がっていた。
外を眺めている私を見かけ、施設の関係者らしきおばあさんが、「いらっしゃい」と
声をかけてきた。見ると片手に割り箸を持ち、片手に空き缶を持っている。不思議そ
うに私が見ていると「今年はカメムシが多くて」といいながら床の隅のカメムシの死
骸を拾っていた。「広いから大変ですね」というと、なぜか楽しそうに「これも私の
仕事だから」といって「山の楽校」のことを話してくれた。

おばあさんの説明によると「山の楽校は私たち近所の住民がこうして掃除したり、草
取りしたり、そば打ち教えたりしして運営しているんですよ」「実際に手を動かして
もらわないと、食べたり飲んだりできないんですよ」と説明してくれた。そば打ち、
炭焼き、豆腐作りなどの体験、農産物の加工体験、野菜の栽培、収穫体験など、すべ
てが「体験」というキーワードで周辺地域の住民と来訪者を結び付けている。
周辺地域の歴史と自然、そして文化をより楽しく体験し「心のふれあい」の場を実現
している。

地元のみんなでアイディアを出し合い、体験を通じて「心の交流」をはかる。「みん
なで一緒に」それがとても大切なことなのだ。
一つ一つの体験学習やそれを運営する人たち、そしてそこに集まる人たちやその施設。
独立した一つ一つのことがすべて自然に関連して心のつながりを創っている。まさに
成功している理由は、そこに集う人の「思いや心」といった魂の交流ができる体系的
な仕組みづくりにあったように思う。

組合員の知りたいことは組合員の中に眠っている
渡邊祐介
2012/06/17
多くの組合で機関誌やニュースなどを定期的に出されていると思いますが、よく聞くお悩みの一つに「ネタがない」ということが挙げられます。
「組合員にとって有益で、読んでおもしろいネタ(企画)は何かないですか?」と相談を受けることがありますが、組合員にとって有益な情報(知りたい内容)は組合員の中に眠っています。

例えば、意識調査を行った結果、「自身の将来に不安を感じる(将来設計ができていない)」という課題が見えたとしましょう。まず思いつくのが、ライフデザイン関連のセミナーを実施したり、マネープランに関する情報を機関誌などに掲載し、情報提供することで課題解決を図る方法でしょうが、これらの情報はいわば一般論であり、組合員の実情に即した内容になっていない場合が多く、組合員の側からすると「リアリティがないので頭に残らない」と感じられてしまいがちです。

情報とは、自分の現状に置き換えてイメージできた瞬間、組合員自身の中で有益なものに変わるのです。よって、提供する情報をいかに組合員自身が自分事として捉え、自身の現状に置き換えて変換できるかが大きなポイントとなります。

では、そのような情報をどのように探し出せばよいのでしょうか?

その情報は組合員自身の中に眠っています。組合員の中には、さまざまな経験をしながら年齢を重ねてきた多くの「人生の先輩」がいます。この人たちは、自身の人生を歩むその時々でいろいろな困難にぶつかりながら、都度現状を鑑みて最適だと思われる選択を自らが判断し、多くの壁を乗り越えてきたいわば“生きる教科書”であり、大切な人財といえます。

結婚を考えるとき、子どもができたとき、マイホームを購入するとき、大病を患ったときなど、人生における大きなライフイベントや想定できない変災を乗り越えてきた経験こそ、これからそれらに直面するであろう組合員が欲している情報であり、リアルだからこそ組合員の頭に残り、身になるのだと思います。

このように真実味のある情報を組合を通じて発信していくことも必要ですが、「自身にとっての有益な情報はすぐ近くにいる先輩や同僚が持っている」ということを伝えていくことの方が大切な活動なのかもしれません。まずは、日常のアンオフィシャルなコミュニケーションの場(ランチや飲みニケーションなど)で、気軽に相談ができる環境をつくり出すきっかけを機関誌などでドンドン発信してみてはいかがでしょうか?

上司と部下のコミュニケーションギャップ
池上 元規
2012/06/10
最近、『労働組合としてのパワハラ対策セミナー』の依頼が多く、先週も実施してきた。
セミナーで受講者に『職場でパワハラに関する問題を感じたことがある、または相談を受
けたことがある方』との質問をすると平均で約4割の方が感じると回答する。

2012年5月30日の日経新聞に『民事上の個別労使紛争相談』の相談件数が年々増加し過去最
多の25万6千件あることが掲載された。相談内容は 解雇18.9% いじめ・嫌がらせ15.1%
と2番目にハラスメントに関する問題が多い。
多くの職場で問題になっているが、どこからがパワハラに該当するかは認識が様々で、組織
全体である一定の共通認識を持つ取り組みはまだまだ進んでいない。
パワハラの基本的な判断基準は受け手(被害者)側がどのように感じるかである。


<参考>
セクハラに関しては定義があるが、パワハラに関しては定義が定まっていない。
そんな中で、今年の1月30日に厚生労働省の『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議
ワーキング・グループ報告』よりパワハラに関して下記の報告が出た。
パワー・ハラスメントハラとは『同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの
職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場
環境を悪化させる行為をいう』

 
この問題の背景には様々なこと(成果主義重視、管理職の業務負担増、人間関係が希薄、スト
レス・・・)があるが、一番の原因は行為者と被害者との間での、コミュニケーションギャッ
プにあると考える。
例えば、上司は自分の成功体験、価値基準をそのまま部下に伝え、押し付け、理解してもらえ
ると思っている所にある。『俺の若いときは…』『この程度のことは…』『彼はまだまだ出来
る、だから育成の一環で…』などと一方的にコミュニケーションを取ろうとすると、受け手の
部下は納得や理解ができずストレスを感じる。
一方で、部下も情報化社会の中で個人の権利意識が高まり、上司からの『業務に関する必要な
指導』『安全衛生上必要な注意』『人事考課の結果のフィードバック』に対して間違った認識
から、パワハラだと言い出す人もいる。なんでもかんでもパワハラとして扱うのではなく、適
正な指摘・指導は職場を健全に保つためには重要だ。

このパワハラ問題は、組合員の士気の低下、職場風土の悪化、優秀な人材の流出、メンタルヘ
ルス問題、コンプライアンス問題などに繋がり、労働組合は今後さらなる対応が迫られること
になると思う。実際に、被害者が誰にも相談できずに会社を辞めてしまうケースも珍しくない。

パワハラの防止策 ポイント5
・実態を把握する
・トップからメッセージを発信する
・行為者への罰則などルールを決める
・管理職、組合員への教育をする
・組織全体に該当行為を周知する

今後、労働組合として上記以外に組合員と日頃からに相談できる関係をつくり、組合でも相談の
窓口を設け、相談機能を発揮することが大切だ。また、この問題の解決には労使一体となって対
応しないと真の解決にならないと感じている。また、労働組合は日頃から使用者との信頼関係を
深めることが重要で、それは集団的な側面から個別の現場レベルまで、共通して言えることだろ
う。