ゆにおん・ネタ帳

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2012年

自己成長につながる支援のありかた
中岡 祐子
2012/06/03
【必要とされる共感力】

最近、労働組合の役員向けに、リスニング研修を行うことが多い。
労働組合の役割のひとつとして、組合員の不満の聞き取りや苦情の受け付けがある。
放っておけばメンタルの問題にもつながりかねないので、当然の流れであると思う。

 この対人支援のための共感力というものは、労働組合に限ったことではなく、リーダーにとって必要不可欠なスキルである。
会社のマネージャー層で、部下のモチベーションマネジメントの必要性を否定する人間はいないだろう。
しかし、本物の共感を理解し支援を実践しているリーダーは少ない。


【危うい問題解決】

研修では、さまざまな相談事例を用意し、相談する人、される人に分かれて、
8分間のロールプレイを行うのであるが、
多くの組合役員は相手の問題(相談内容)に対して、すぐに解決をしようとする。
役員の多くが経験も豊富で問題解決力が高い人物であるため、
自らの経験にあてはめて相手の問題を解決し、それがもっとも重要なことだと信じている。

しかし、事柄的なことだけを解決すれば事足りる問題は少ない。
強い情動を伴ったものや、まだ相談する側が心を開いていなかったり、本人すら悩みの本質を把握していないようなときは、
このアプローチの仕方では危うく、下手をしたら、役員だけが「解決したつもり」の自己満足に陥ることも少なくない。
そうすると本当の問題解決を妨げるばかりか、相談する側の成長は望めない。


【問題解決の主体】

リーダーは、支援の仕方を今一度考える必要がある。
もちろん、相談をする側は最終的には自分の問題を解決することを望んでいる。
だが、問題解決の主体がブレてはいけない。
問題解決の主体は、あくまでも相談する本人であるべきである。
固有のパーソナリティーや問題解決力の差もあるため、人によっては多くの支援をしなければならない場合もあるが、
最終的に行動を決めるのは本人であるべきである。

これを読んでいるあなたも、相談されてあれこれアドバイスをしたにもかかわらず、
相談する側が納得いかない表情をしていたり、アドバイスどおりに動かなかったという経験があるだろう。
そのことについて無力感を感じるかもしれないが、それは仕方がない。
人は自分で納得して決めた目標に対する行動力が一番高い。
また、仮に無力感を感じたから次からは支援をやめるという行動選択を取るのもよくない。
それは支援に見返りを求めている証拠であり、自己満足的な行動にほかならない。


【ストレスと成長欲求】

思い通りにいかないことがあってストレスを感じるという状態は、
自分のありたい姿に対して「このままじゃイヤ」「もっとどうにかしたい」という成長欲求が強まったときである。
現状のままでよいという人はストレスそのものを感じない。
つまりストレスは、やっかいなものではあるが、自己成長のチャンスと捉えることもできる
(蓄積されすぎるのは問題であり、別のケア方法があるが)。
それゆえ、ストレスは「心の宝」ともいわれる。
つまり、ストレスは自己成長欲求の表れであり、
他人が解決策を決めてしまう支援の仕方は、
その人の自己成長のチャンスを奪っているともいえる。


【誤った手助けが作りだす依存体質】

職場におけるストレスでよくあがるのが、人間関係である。
例えば、部下に同僚との仲の悪さを相談されたときに、
上司が間を取り持ち、解決策を決め、お互いをいい含めて仲を取り持ったとする。
それで最初の人間関係の問題は解決するだろうが、次にその部下が別の同僚との関係に悩んだときはどうだろう?

このような問題の解決の仕方は、結局は「困ったときには人になんとかしてもらおうとする依存的な人間」を作ることになる。
そうするといつまでたっても相談者の問題解決能力は上がらず、自立もせず、ストレスを感じやすいパーソナリティーのままである。

また最近は、女性委員会などの女性の活躍推進を目指した活動のお手伝いをする機会が多いが、
そこでも男性役員が指示を与え、最終決定をする場面に出くわす。
これも男性役員は優しさや思いやりから手助けしているのであろうが、実は女性たちの自立を阻害している。
自分が課題に取り組むより前に、手助けをしてくれる人がいれば、
人は自然に何もしなくなり、助けてくれる人に依存するようになるものだ。


【必要なときに適切な支援を】

間違ってほしくないのは、支援は必要である。
だがそれは、決して過保護に甘やかし、大変なことを代わりにやってあげることではない。
その人間に役割を与えて、壁があっても最終的には自分で乗り越え、その人間がイキイキと自分らしく役割を全うできるようになることである。
支援者は、それを見守り、必要なときに適切な手を差し伸べる。支援とはかくあるべきである。
共感との関係でいえば、人は共感されることで、ようやく安心して自分の心を開き、自分の言葉で自分の本心を語り始める。
その結果、自分自身の中にある本当の問題が何であるのかに気づき、どう行動していけばよいかという自己決定ができるのである。
支援者は、その力を信じて待つことも重要である。




改めて人材育成について考えたこと
荏本
2012/05/27
最近いくつかの労組で組合役員の教育体系や人材育成プランの構築についてお手伝いさせていただきました。
教育担当の方々が抱える悩みや問題は、組織風土、業種・業態によってさまざまです。
しかし、うかがったお話を集約すると、成長や育成における共通のポイントも見受けられました。

以下、簡単にご紹介します。


■成長の定義
労組が人材を育成するとき、何をもって成長とするか。以下2点にまとめられました。

 ・職場の問題を解決するためのスキル・知識を習得する
 ・他人の目線、社会の目線から考えられる意識をもつ

「大きな視点を持って外に向けて能力を活用できている状態」と定められます。
つまり人材の成長は個人完結ではなく、外部との関わりの中で定義されています。
組合役員間で面談を行い、定期的にストレッチ目標を立て、活動をしながらこまめに
リフレクションを実践している労組もありました。
また、ある担当者から言葉で印象的だったのは、「できることを武器に、できないことに挑戦する」。
強みを生かすことで新しい分野・活動に挑戦するマインドを重視されていました。

■学びの源泉「職場実践」の不足
多くの労組が定例の研修会や勉強会を実施しているようです。
一方で実施していることをもって活動としてしまっている傾向もあるようで、実践用スキル研修の多くが、
習得・実践・振り返り・・・・・・までは確認できていない実態がありました。
担当者の方々も「真の学びの場は職場で実践すること」と理解されているようでしたが、
繁忙・リソース不足などを理由になかなか手が回っていない現実があるようです。

優れたマネジャーの経験を長年調査してきた米国の研究所の調査結果によれば、
成人における学びの70%は自分の仕事経験から、20%は他者の観察やアドバイスから、
10%は本を読んだり研修を受けたりすることから得ている・・・・・・という数値も出ています。

■実施報告は十分だが「活用度検証」が不足
研修の満足度、活動報告、実施レポートといった"活動の場そのもの"への振り返りは行われている一方で、
それが職場の問題解決にどう活かされたか、展開されたかの検証は不足しているようです。

研修、レク、職場集会など、組合役員が関与した場面場面が職場の問題解決にどの程度寄与したのか、
アンケートや聞き取りで「活用度」「影響度」の指標で評価する必要があります。
数値化は難しいとはいえ、個人と組織の成長を顕在化して活動効果・効率を上げるためには、
一定の検証データは必要となります。


上記、あまりに簡単にまとめてしまいましたが、みなさんの職場をより良くしていくうえで、
「問題を解決するための行動」とは何を指すのか。そのうえで何をもって成長というのか。
個人、職場、部門全体、全社・・・・・・とレベルも異なる雑多な問題が横たわる中で、
組織で人材育成について考えてみることをおすすめします。

労働組合の強み
清水 典明
2012/05/20
労働組合の機能の中の1つにコミュニケーション機能があると考えています。
企業内においては組織の風通しをよくするために、以下の2つのコミュニケーション機能を労働組合が担っています。
①上下のコミュニケーション
職場の組合員の意見を吸い上げ、経営側と労使協議などで議題として検討し、その話し合われた内容や経営側からの提示を伝える機能
②横のコミュニケーション
研修会やレク活動や機関紙などで、企業組織の部署や地域を越えたコミュニケーションの機会や紙面による紹介ができ、人生や仕事に役立つ情報を通す機能
皆さんの組合でも、強みとして色々な活動で展開されていることだと思います。

組織外でのコミュニケーション機能について今回は考えてみたいと思います。
業種・地域を越えた交流を、企業よりも利害関係を気にせずできるのも大きな強みだと考えています。上部団体・連合会などでの情報交換や地域の友誼組合との意見交換を通じて自組合の活動に活かしていけることができます。
弊社でも、公開形式の研修会・交流会でそのような場を設定したり、要望に応じてお付き合いのある組合を紹介して組織同士をつなぐ役割を微力ながら担っております。

私が担当している広島県の組合では、それぞれの強みを活かして共同で企画をしています。
年間120以上の講座を地域の方へも案内し、共に成長していこうという取り組みをしている組合と農業関係法人の組合での共同企画です。
・本格的に農業を始めるための講座
・家族で農業体験が楽しめるとうもろこしの植え付けと収穫
を企画しています。
企画の目的は、参加者の生きがい支援、農業における新しい社会の担い手の発見です。
将来的には、耕作放棄地の解消や食料自給率の向上につなげていければということも目指している社会的な取り組みです。
業種や地域を越えて交流ができる労働組合だからこその意義ある取り組みだと考えています。

私自身も微力ながら組織同士をつなげる役割りを果たしていきたいと考えています。


調査結果からみる労働組合の課題と方向性
依藤 聡
2012/05/06
公益財団法人日本生産性本部が2011年に実施した「労働組合が抱える課題とその取り組み」に関するアンケートから興味深い結果が出てきました。

調査概要は以下の通りです。
・調 査 名:2011年度「労働組合が抱える課題とその取り組み」に関するアンケート調査
・実施時期:2011年10月中旬~2011年11月末日
・調査項目:
1.直面している課題と解決策
2.組合員とのコミュニケーション、労使コミュニケーション
3.組合役員に求められる能力
4.グローバル化の影響
・調査対象:「生産性新聞」を購読している単位労働組合を中心とした中央執行委員長
・回答労組:225組合 (内訳)製造業137組合、非製造業87組合、無回答1組合

【直面している課題について】
調査項目1の直面している課題を聴取したところ(複数回答 選択肢数16)、最も高い割合を示した課題は[次世代組合役員の育成](以降、[次世代役員育成])で50.2%という結果でした。以下、「組合員とのコミュニケーション強化」(以降、[コミュニケーション強化]) 46.2%、[総労働時間の短縮(休暇取得促進・所定外労働時間の削減)]35.1%と、上位2項目が共に50%前後を占めています。ちなみに、前回(2008年)で最も高い割合だった課題は[総労働時間の短縮]58.1%でした。今回は3位と順位を下げ、割合も23.0ポイントの大幅下降となっています。一方で、[次世代役員育成]が34.4%、[コミュニケーション強化]が31.5%と30%強の割合に留まっていました。3年の間に[次世代役員育成]と[コミュニケーション強化]の課題がより重要になったことが分かります。

【課題の推移】
筆者は多くの労働組合様の調査活動をお手伝いしていますが、労働時間の問題は3年前と比べて大きく課題解決に至っているとは実感できません。ただし、調査結果に意を唱えるわけではなく、労働時間の短縮よりも役員育成やコミュニケーションの確立の方がさらに重要になったと考えられます。換言すれば、人の育成や人との関わりを重視するようになったとも言えるでしょう。

【コミュニケーションの良化と課題】
調査項目2では、過去3年間を振り返った組合員とのコミュニケーションの変化を聴取しています。その結果をみると、16.0%が[良くなっている]、57.8%が[やや良くなっている]と答えています。つまり、73.8%が良くなったと回答していることが分かります。コミュニケーションの良化のために取り組んでいる内容としては、直接対話の機会増、情報発信の質・量を考慮などが主なものです。
コミュニケーションが良化していると答えているのにも関わらず、コミュニケーションの強化を重要な課題として挙げています。このことは、組合員とのコミュニケーションの重要性に気付き、永続的にコミュニケーションの質を高めなければならないと思っていることを反映していると言えるでしょう。また、良化しているもののまだまだ十分な状態ではないと感じていることが推察されます。当調査ではこのことに言及していませんので、あくまでも筆者の考察によるものです。しかし、例えば情緒的支援者という役割はメンタルヘルスの問題を解決する端緒となる役割ですが、これは労働組合が果たすべき役割です。こういった例以外でもコミュニケーションの良化は、労働組合が課題の解決に至るための端緒となるので、筆者の考察は的を外してはいないでしょう。
一方で、組合員のコミュニケーションを高めるには組合役員の存在が不可欠です。役員が有機的に機能することで組合が活性化するということから、組合役員の育成や教育が重要になってきます。

【今後の労働組合の方向性】
調査結果から、労働時間の短縮と言った具体的な課題よりも、役員育成と組合員とのコミュニケーション強化といった組織そのものを強化することに対する重要性が高まったことが分かります。もちろん、これらが課題の全てではありませんが、これらの対応ができることで多くの課題は解決されるでしょう。
さて、こういった取り組みをどのように行うべきでしょうか? 全て自前で考え、実行できれば何の問題もないでしょう。しかし、こういったことを課題に挙げているわけですから、自前で考えるにも限界があります。やはり、他労組の事例を聴取する、同じ課題を持つ労働組合と共同で考え実行するといった知の共有が必要と言えるでしょう。そのことによって組合間のコミュニケーションも生じ、課題解決の一助になることも考えられます。


~「目的」と「目標」~
三橋 秀郎
2012/05/13
~「目的」と「目標」~

【目的】
行動するときの理由(なぜ、なんのために?)

【目標】
到達点・達成状態(どの時点でどのレベルまでおこなうか)

最近、組合活動を支援する際によくお尋ねしていることです。
「目的」と「目標」が混同していたり、組合活動も仕事も、すること自体が目的化している場合がよくあります。
組合、仕事でも考えさせられることであります。

例えば、
■レク活動
「今年は何をしようか?」「毎年人気があるから、集まりやすいから○○をしよう!」
→やることが目的になっている

本来の目的から言えば、
<目的>参加者同士がレクに参加することによってお互いの結びつきを強め、協力関係を築けるきっかけの場とする
→そのために何をする、どのような仕掛けなどすると考えないといけないかと思います。

これは何も組合活動だけでなく、仕事でもそうかと思います。

■仕事:売上予算を達成する(目標)のが目的ではなく、仕事を通じて世の中に対し●●の貢献をする(目的)と位置づける。

特に組合活動の場合は強制的でない活動だけに、目的・目標を明確に持たないと何のためにやっている活動かわからずモチベーションが上がらないのではないでしょうか。

そのためにも、オススメは、組合でも個人でもビジョンを作ることが有効かと思います。
目的(何のためにするのか)を明確にし、目標(どのレベルまで行うのか)を設定し、実行(目的に向かって突き進む)する。
※組合活動においてはビジョンと年度活動内容とのリンクが必要

組合活動でも、仕事でも忙しくて、目先の仕事に囚われて、先の事が考えられない状態かと思われます。
そんな時こそ、一度、立ち止まってコレをする目的は何?って考えてみてはいかがでしょうか。


人前で話しをする時に気を付けていること
丸山
2012/04/29
皆さんは、人前で話すときにどんな点を意識して話しをしているだろうか?私は、年に数回程、組合役員研修の講師として講演をさせて頂くことがある。今回は、講演を行う際に、基本的なことではあるが、私なりに特に気を付けている点についてお伝えすることとする。

・話す題材について、徹底的に調べる
話す内容について、十分に理解していない限り、人前で緊張なく話すことは難しい。例えば、“組合活動の取り組みが必要である”といくら訴えても、なかなか伝わらないのである。重要なのは、“なぜ”を自問し、本当に伝えたいことは何か、自信を持って伝えられるまで考え抜くことである。基本的なことではあるが、これをやらないで成功する講演は無きに等しい。あるメーカーの組合役員曰く『知識が整理されていない段階で(自分の腹に落ちていない)組合員に協力を仰ぐことは、組合活動の組合員参画力の低下を自ら助長している行為に等しい』

・参加者にとって、関心のあるテーマ、仕事、職場で起こっていることを取り上げる
正確には、“参加者がイメージできるような題材を用いて”伝えること。例えばコミュニケーションの必要性をどんなに訴えても、それは世間一般での話であり、参加者にとって顕在課題でない限り、ただうざったい話しなのである。ましてや、組合活動の動機付け研修を依頼された時に、いかに動機付くことが重要かを伝えても……である。従って、参加者が今最も興味あること、職場でどんなことが話題になって、どんなことに関心を持っているのか、講演の前には、必ず企画担当者からヒアリングを行い、そこで得た題材を講演に織り込むようにしている。


人前で話す機会の多い、ユニオンリーダの皆さんに少しでも参考になれば幸いである。

効果的な面談が組織活性化の鍵
室橋
2012/04/22
組合活動は会社の仕事と違い、上司部下の日常的な情報共有が十分にできず、こまめな活動の進捗管理を行う時間が取れません。
したがって、組合活動の実行力を高めるためには、支部役員が主体的になれる活動目標を設定することが重要になります。

今回紹介するのは、目標管理面談の考え方を組合活動に取り入れて、人材育成を行っている労働組合の取り組みです。

●支部役員の自己成長を支援する
支部委員長は、支部役員に年3回(10月・4月・7月)の面談を行っています。
支部委員長としての期待する気持ちや活動の価値観を明確にして、支部役員一人ひとりに役割と期待を伝えています。
また、役割と期待だけを伝えるのではなく、実行力を高める(行動を促す)ために、支部役員自身の考えを引き出しています。
面談では、「できたこと」「できなかったこと」といった活動成果のみに注目するのではなく、本人の自己成長を支援することを意識しています。
支部役員の活動による「成長」の気づきを分かちあうことが、面談の目的になっています。

●人材育成のための基本的な考え方や取り組み方を学ぶ
支部委員長としてどのようにメンバーと接して、リーダーシップを発揮すれば、メンバーが主体的に組合活動に取り組むことができるのかについて研修を開催しました。
メンバーが悩みや問題を抱えている時に、十分に相手の想いや考えを聴き(リスニング)、質問によってメンバー自身が考え、問題の答えを見つけ出す手法(コーチング)や、支部委員長の思いや考えを率直に伝える手法(アサーション)などを実践的に学びました。
面談による育成の方法を実践的に身につけ、委員長が自信を持って面談に臨めるように支部委員長の教育機会が設けられています。


「自己成長感・活動意欲」に着目したマネジメントで組合活動への積極性が現れ、取り組み姿勢に違いも出ているようです。
目標面談を取り入れ、支部委員の活動意欲を高め、組織的に支援体制を強化していくことで、その結果として人を育てる、そして人が育つ組織文化が築かれています。

組合役員自身が活動を通じて自己成長感が得られ、組合活動に対する主体性が発揮されるような取り組みが、ますます重要になってきていることを感じます。
余談ですが、支部委員長も上司である中央執行委員長と目標面談を行っています。

企業の組織力を高めるために組合でできること
松山晃久
2012/04/13
 今回は「企業の組織力・活性化に関する実態調査2011(社団法人日本能率協会)を参考にして、組織力向上対策について、組合活動でできることを考えてみたい。

 調査結果の概要として、組織力向上対策に取り組むものの、経営上の具体的成果が出ていない企業が全体の72.8%、具体的な成果が出ている企業は16.4%にとどまることが明らかとなった。多くの企業組織でうまくいっていないと感じている結果となっている。
※組織力については下記のように定義されている
会社のミッション・ビジョン・目標を達成するために、個人の能力を束ね部門の能力を最大化し、さらに部門間の持てる力を束ねていける力。個人ではなく組織の持てる力の最大化
 調査結果から着目したポイントは2つある。一つ目に成果が出ていない理由として、課題の診断や適切な対応策に関する十分なノウハウがないことがハードルの一つとなっている点。
 二つ目に社員一人当たりの生産性指標、技術・ノウハウ蓄積と製品・サービスの収益性が高い組織の特徴として、後に挙げる9つの項目が明らかになった点。

 着目ポイントの一つ目である課題の診断については、現在j.unionでは多くの組合で従業員満足度を図り、その結果に基づいた活動策定・浸透の支援をさせて頂いている。参考までに指標として、下記5分野で調査を行っている。
①戦略・風土(企業への一体感など)
②マネジメント(指示命令など)
③コミュニケーション(人間関係、上司との関係)
④モチベーション(職務満足などモチベーションの源泉がどこに存在するか)
⑤労働環境(経済的報酬、作業環境など)

 しかしあくまで、診断は現状把握の手段であり、大切なことは、経営側が実施する調査を活用するにしても、組合主導で調査を行うにしても、結果から①組合で出来ること(組合主導)②労使協働(労使一体で取り組むこと)③経営提言(会社に提言すること)に分類し、当事者意識を持ち、自分たちでできることから取り組んでいくことである。さらに組織力と一概に言っても、抱えている課題は様々であり、上記の診断項目を元に、指標化し目標を立てて(状態基準・数値基準)、取り組んでいくことが重要である。

 二つ目の組織力の高い組織特徴(9つの特徴)に近づけるために、項目と共に具体的に即実践可能な取り組み(弊社が実際に支援している取り組みを含む)を記載してみることにする。

①経営理念・ビジョンが社員に理解・共有され、組織に一体感が醸成されている組織
・会社の経営理念やビジョンの理解度を調査し、機関紙(情宣物)や職場集会を通じて継続的に浸透していく取り組み
・会社の目指す方向性(経営理念・ビジョン)を共有し、組合ビジョン、組合員像を描き、実現するための人材育成活動
②目標達成へのこだわりが強く、高業績実現に向けて自主的・自律的に努力している
③会社と社員の信頼関係が確立し、目標への高いコミットメントがある
 上記②③については、車の両輪に例えると、組合として考課者訓練の実施を会社に要求するだけでは、目的地までまっすぐ走れない。被考課者訓練(組織の価値観・組織目標を共有するための目標管理制度の運用支援)及び高業績職場、高業績者の組織知、組合員個人の現場知の共有が有効である。現に弊社でも年間多くの労組から研修実施の依頼を受けている。
④部門間で利害対立が払拭され、相互に信頼し、援助しあえている
⑤部門間で連携が円滑でスピーディーに行われている
 上記④⑤については、組合で支部役員や職場委員を対象にファシリテーターを養成して労使課題に対して実際のテーマで実践していくことが有効であろう。
⑥職場に建前に縛られず、言いたいことを言い合える風土がある
⑦葛藤や対立を、積極的に前向きの姿勢で取り上げる風土がある
 上記⑥⑦については、トップメッセージを発信し、トップ層及びミドル層からの実践が重要であると考えるが、職場横断的に集まって現場の課題について本気で対話し、葛藤や対立の改善策などを考える場として、職場集会の進め方の手法改善、職場ミーティングツールの活用が考えられる。その際重要なポイントとしては、執行部からは、風土づくりを行っていくために、是非組合員の知恵を借りたいというスタンスを示すことである。
⑧一人ひとりの能力や適性が活かされ、チームとして相乗効果がある
⑨一人ひとりの多様性が活かされ、創造性を発揮できる職場がある
 上記⑧⑨については、ワーク・ライフ・バランスやチームとしてのノウハウの見える化のために、モデル職場の行動特性をインタビューして冊子作成、あるいは職場の仲間と協力しあってチームとしての相乗効果を図る、職務互換率向上の取り組みなどである。

 実際にj.unionと各労組が展開している取り組みを紹介した。いづれにしても一足飛びに組織力が向上し、理想に近づくわけではない。組合員、組合リーダー(職場リーダー)の育成が職場の元気、活性化につながり、小さな力の集積がやがて組織力の活性化として帰結する。

 自分たちの所属する職場、会社、組織の活性化のために、取り組んでおられる組合リーダーと共に取り組んで行きたい。



~(若手)組合員は組合活動に無関心~
小野
2012/04/01
~(若手)組合員は組合活動に無関心~

よく耳にする組合員の実態は、およそ次のようである。

1) 自ら参画するという意識はない
2) 活動は他人任せ
3) そもそも組合員という自覚が薄い
4) 意見も出さないし、集まらない
5) 身近なことにしか関心がない 

組合員の多くは、お金(組合費)を払うことで、(他人任せで)労働組合幹部が会社側と交渉してくれるし、全てやってくれると思いこんでいて、(組合員)自らが活動に関与する意欲は低く、関心もない。
(その一方で労働組合は、あったほうがよいと考えている。)

~役員は、なぜ組合に関わったのか~

組合幹部が組合に関与した動機にヒントが隠されているのではと思い、次のように質問してみた。
『 あなたは、なぜ、労働組合に強く関わるようになったのか? 』 すると 『 頼まれ、断れなくて就任した』 とほとんどの幹部が答える。

さらに、詳しくインタビューすると、次のような共通のキーワードが幹部から発せられ、そこに課題解決の糸口が見え隠れする。
『 組合活動に関わる中で、貴重な体験を積み重ねてこられた。その小さな成功体験を積むうちに、組合に強く関わるようになった 』というのだ。

その体験とは“人に喜ばれた、感謝された、救われた”、“困っていた人を救えた”、“現場の声をラインに伝えて改善された”、“人脈ができた”、“学び・成長”などである。

~プラス反応、マイナス反応、無反応~

人は、自分が関わったことで何かのプラスの反応があると徐々に関わりを増やす傾向にあり、気がつくとドップリと、はまっていることが多い。

その逆に、自分が関わったことで何かのマイナスの反応があると関わりを避けるか反撃する傾向にあり、意識的に距離を置くことが多い。

さらに、自分が関わっても何の反応も感じられない場合には、反応を期待しなくなり関わることも減り、無関心となることが多い。

そこで次のような仮説が考えられる。
幹部役員は、小さな成功体験という、プラス反応を通じて、組合活動に強く関わるようになったという仮説である。

プラスの反応とは、委員長からのねぎらいの言葉でもいいし、人脈や貴重な体験でもいい。
重要なポイントは、自分が関わる際の苦労が多ければ多いほど、そのプラス反応の効果が高いということ。そういう関与とプラスの反応を感じ取らせるように、リーダーが意識づけを行っているということだろう。

一方、組合員は消極的な活動への参加という点で(幹部役員ときっかけは類似しているが)、自分が関わったことで何かのプラス反応(小さな成功体験など)が彼らには感じとれなかった。そのため組合員は、組合に何も期待しなくなり、無関心になったという仮説を立てることができる。

自分が関わったことで、誰かから感謝されたり、参画の意義を感じられたり、人脈が形成されたり、楽しかったり、達成感が感じられるように、職場の組合リーダーが意識して演出していることがポイントとなる。

~(若手)組合員に小さな成功体験を~

仮説に基づき具体策をいくつか掲げてみることにする。

1)イベントの見直し
複数の組織で取り組んでいる事例に「イベントを通じた活動参画」がある。
若手組合員に、運動会やキャンプ・異業種交流などを主体的に企画運営させ、連帯や感動体験をさせる事例である。

2)アイデア募集
現場役員を中心に職場ごとの小集団で集まって、アイデアを出し合い、よい案を組織的に採用する。(自分のアイデアが、組織として取り上げられることは、それだけでモチベーションが高まる)

3)アンケート結果の職場ミーティング
アンケート結果を基に、課などの職場単位で、自分たちの職場課題とその改善策などを、仲間同士で話し合い共感・共有する。

これ以外の具体策も沢山考えられる。組合員に身近で、小さな成功を体験させる活動を考え実践することで、組合活動に組合員を巻き込んでいくことを、ぜひオススメしたい。

以上、何かのネタになれば幸いである。

羽地朝秀に学ぶ 屈辱的な選択肢を選ぶ勇気
小林 薫
2012/04/08
先月家族で、沖縄に行ってきました。3回目でしたので、今回はガイドブックではなく、事前にもっと風土について知りたいと思い、沖縄の歴史について本を読んでいきました。

琉球王朝の歴史は、平安末期に源為朝が、保元の乱で敗れたのをきっかけに、沖縄に流れついたことから始まるとされています。その後、北山・中山・南山の三山時代を経て、尚氏によって統一され、明への朝貢貿易で発展します。また明だけでなく東南アジア諸国との貿易で栄えますが、1609年に薩摩藩の侵攻を受け、支配下に置かれることになります。これは中国へは、独立しているようにみせておきながら、実質的には島津氏の支配を間接的に受けている状態で、現在の日本とアメリカの二重の支配を受けている状況と重なってみえます。

島津侵攻から約50年後、疲弊した琉球を立て直すべく、摂政に就任した羽地朝秀(はねじちょうしゅう)は政治と宗教を分離して財政を再建します。また、歴史書「中山世鑑」を編纂し、琉球王朝の歴史が、源為朝から始まっており、日本と沖縄の祖先が同一であると主張し、薩摩藩の支配を和らげようと努力します。羽地朝秀は、おそらく当時ほとんどの人が信じていなかったであろう、しかも相手に迎合するような「伝説」を引っ張り出してまで、琉球を守ろうとするのです。

当時の文化や状況、組織の論理からすれば屈辱的な選択肢だったことでしょう。しかし、生き残るためには最善の選択肢であったのかもしれません。体裁やプライド、これまで積み上げてきたものを手放すことになっても、現実を直視し、本当に組織のために何が必要なのか選択するべき時が、私たちにもあると思います。カーッとならずに、冷静に最善の選択肢を選びたいものです。