今回はワーク・ライフ・バランスと職場について、連合総研の提言論文「広がるワーク・ライフ・バランス」(2009)を参考にして、健康職場をキーワードに組合活動でできることを考えてみたい。私たちは労働組合のビジョンの一つとして「自分たちの所属する会社を良い会社にする」ということを日常の組合活動支援の中で問題提起している。そもそも良い会社とは良い職場なくして実現しえないであろうし、一面では「良い職場の集まり=良い会社」であるという式も成り立つ。
提言論文の第一章、健康職場とワーク・ライフ・バランスの中で山崎教授(東京大学大学院准教授)はワーク・ライフ・バランスを促進する要因として「健康職場」の6つの条件を提示している。
健康職場とは「(たとえ今はきつくとも)健康で明るく元気にいられる、良くなる希望の持てる職場」、あるいは単に「健康で明るく元気に働き続けられる職場」などと定義されている。このような職場なら大半の人が、可能な限りその職場で働いていたい、頑張ろうと感じるだろう。
以下山崎教授が提示する6つのキーワードと共に、具体的に可能な取り組み(弊社が実際に支援している取り組みを含む)を記載してみた。まさにこれらは労働組合が得意とする取り組みではないだろうか。
この6つのキーワード(課題と言い換えてもいい)は弊社が多くの労働組合で実施している組合員意識調査の中でも出てくる、多くの職場で抱えている課題となっている。
①情報の共有が測られている職場
・会社のビジョンや方向性及び組合員に関わる重要な事項(組合員が知りたい情報)について職場オルグや職場懇談会を通じて伝え、組合員の声を聴く(情報の共有を測る)取り組み。
・機関紙など情宣物を効果的に活用し、情報の見える化の取り組み。
②コミュニケーションが良好で、相互理解や相互支援協力のある職場
・職場の組合員、職場同士の関係性を高める取り組み
職場集会の開催(テーマとしては職場横断的に集まってそれぞれの現場の課題や改善策などを考える場)や支部イベントやレクなどで組織を超えた組合員同士の集まりを開催することで、そこで培った人脈を通じて何かの際に助け合える風土を創っていく取り組み。
③ものが言える職場
・経営提言活動(組合員意識調査など組合員の声を活用した支部・職場単位での改善活動)や職場巡回の際の職場ヒアリング
・職場の問題を職場で改善するための職場委員の人材育成(職場自治活動)
・組合員のコミュニケーションスキルの向上
④一人の人間として尊重されていることを感じられる職場
・組合役員による持ち場の組合員への声がけと対話(総対話活動)
・ワーク・ライフ・バランスに関する企業のポリシーや施策及び労使双方の取り組みを冊子にして配布
・職場の中で組合員同士、あるいは上司部下がお互いに日常の感謝の気持ちを伝えるサンキューカード配布
⑤価値観や目標がある程度共有されている職場
・組織の価値観・組織目標を共有するための目標管理制度の運用支援(具体的には被考課者訓練)
・働きがいについてみんなで考えるワークショップの開催
⑥学びのある、成長の得られる職場
・仕事のプロフェショナル(達人)にインタビューを行い、職場で共有する取り組み
うまくいっている職場(何をテーマにするかは様々で、例えば調査結果などで、時間外労働が比較的少ない職場)の意識面・行動面を詳細にヒアリングし、機関紙や冊子で展開する取り組み
・生涯学習支援としての組合員セミナーの開催(働く・学ぶなどテーマは様々)
・(自己啓発支援としての)教育訓練機会の提供
これらの取り組みは実際にj.unionと各労組が展開している取り組みを元に筆者の主観的な当てはめで、記載した取り組みである。(論文の視点との齟齬も承知の上で記載した取り組みである。)
大切なことは、自分たちの職場を良い職場にするために、良い会社にするために、「自分たちにとって良い職場とはどんな職場だろう」「どうすれば良い職場(と感じられる場所)になるのか」「そのために組合が支援できることは何か」と組合員と一緒に同じテーブルで対話することである。
そのような対話のある職場集会や職場懇談会なら組合員も時間をやりくりして是非参加したいと思うであろう。