ゆにおん・ネタ帳

ゆにおん・ネタ帳はリニューアルいたしました。

以降の記事は新ページでご覧ください。

https://www.j-union.com/idea/

全国3700ほどの労働組合とのお付き合いの中で、記憶に残るエピソードや、これは使えるといったネタをご紹介していくコーナーです。

2019年 - 2018年 - 2017年 - 2016年 - 2015年 - 2014年 - 2013年 - 2012年 - 2011年 - 2010年 - 2009年 - 2008年

2014年

人を育成できる人材を育てる
室橋
2014/12/28
組合役員がやりがいを持っていきいきと活動している組織には、人を育て、組織を活性化するための仕組みがあるな、といつも思います。

組合活動は会社の業務と違い、業務命令ができません。組合活動の実行力を高めるためには、組合役員一人ひとりが活動にやりがいを感じることが重要になります。

ある労働組合では、支部委員長が支部役員に年3回、面談を行っています。支部役員と活動による「成長」の気づきを分かちあうことが面談の目的で、本人の自己成長を支援することを意識しています。

主体的になれる活動目標を設定するために面談の場では、
・支部役員一人ひとりに役割と期待を伝える
・支部委員が悩みや問題を抱えている時に、相手の想いや考えを聴ける
・質問をされることによって、支部委員自身が考え、問題の答えを見つける
・支部委員長の想いや考えを率直に伝える

目標面談を取り入れ、支部委員の活動意欲を高め、組織的に支援体制を強化することは組合組織の基盤づくりに重要な取り組みになっているとのことでした。

「自己成長感・活動意欲」に着目したマネジメントをするためにも、支部委員長自身が支部活動へのビジョンを明確にする。また、どのようにリーダーシップを発揮すれば、支部委員が主体的に組合活動に取り組むことができるのかを考える機会をもち、それを支部委員長同士が共有している。

支部委員が支部活動を通じて自己成長感が得られ、組合活動に対する主体性を発揮するためにも、人を育てられる人材を育てることが重要だな、といつも思います。

組合員の幸福感について考える
松山 晃久
2014/12/17
 現在どの程度幸せですか?10点満点で何点でしょうか?と聞かれたら組合員は何点と答えるでしょうか?

 今回は、「生活の質に関する調査」(内閣府経済社会総合研究所 25年度)を参考にして、組合でできる具体的に可能な取り組み(弊社が実際に支援している取り組みを含む)を記載してみることにする。
この調査は、主観的な幸福感や満足度を様々な項目との関連で分析しているものだが、調査結果についての基本データの一部を参照したい。
・「現在、どの程度幸せ」であるかを、「とても幸せ」を10点、「とても不幸」を0点として、全体の平均値が6.68という結果となっている。
・女性の方が全体的に現在の幸福感が高い。
・理想とする幸福感は、平均値で7.93である。
その他さまざまな属性での結果が分析されているが、ここでは回答者が幸福感を選択する際に重視した項目に焦点を当ててみたい。

※複数選択であるが、下記に項目と選択率(%)の高い順に転記する。
①健康状況(78.6%)
②家計の状況(所得・消費)(72.9%)
③家族関係(70.2%)
④自由な時間・充実した余暇(55.6%)
⑤友人関係(42.1%)
⑥就業状況(仕事の有無・安定)(34.8%)
⑦仕事のやりがい(31.0%)
⑧職場の人間関係(21.9%)
⑨地域コミュニティとの関係(12.7%)
⑩社会貢献(11.0%)
 
世代や性別で選択率に差があり、重視項目も異なっている。そのことを前提として、実際にj.union及び各労組が展開している活動について項目に沿って列挙する。

①健康状況
 メンタルヘルス対策の充実・強化等を目的として、企業でのストレスチェックが義務化される動きの中で、ココロの健康をテーマに「職場での声かけの仕方」や「事例で学ぶメンタルヘルスセミナー」などの学習機会が増えている。さらに組合員を主な対象に、職場や家で気軽に出来るリラクゼーションのセミナーなどが組合員に好評だ。
心身を対象とした健康支援の一環の取り組みともいえる。その他にもセルフケアを起点に支え合う職場づくりの支援を行っている。

②家計の状況(所得・消費)
 春闘に代表される賃金・一時金向上の取り組みはさておき、若手組合員を対象にした「働く人のためのマネー講座」や、『幸せな人生は心と体とお金のバランスで決まる』をテーマに、ライフデザインを人生に大事な3つのもの(心・体・お金)を、ゲームを使って対話形式で考える講座(ライフデザイン擬似体験ゲーム Happy Choice)などを行っている。所得や消費に関する計画やバランスのとり方を他の大切な要素(心、体)と関連付けてとらえることをねらいとしている。

③家族関係
 ここは幅が広いが、最近では、高齢化による介護の問題も組合の取り組む大きなテーマになっていることから、「働きながら介護を続けるコツ」など、介護休業制度の理解促進を図る取り組みなどを支援している。

④自由な時間・充実した余暇
 余暇開発支援や生涯学習支援という大きなくくりにはなろうが、一つは組合員の余暇の充実を目標に「ジョイフルセミナー」という名前で様々な選択肢を提供している組合がある。10年近く改良工夫を重ねながら続いている取り組みだ。
もう一つのトレンドは、日本タイムマネジメント協会の協力を得て、ホワイトカラー層を中心に、WEB診断と研修を組み合わせて、仕事の生産性とは何かを理解し、個人と組織の成果(生産性向上)に結び付ける取り組みが、徐々に広がっている。

⑤友人関係
 職場を超えたコミュニケーションの充実を図るという目的で、様々なコミュニティを作り、特定の職場や事業所に限定しないで、共通の趣味や目的を持った人たちで構成される集まりを作っている取り組みがある。スポーツや趣味を媒介に、社内の人と関係を深める取り組みである。

⑥就業状況
 少し視点がずれるかもしれないが、連合中心に非正規雇用に関する取り組みを行っているが、j.unionとしては、「仲間づくり」をテーマに職場の雇用形態に関わらず、どのように組合活動に参画してもらうかを戦略(考え方)、戦術(方法)の両面で様々な形で支援している

⑦仕事のやりがい
 私たちは経済的価値(賃金・一時金)に対置して、精神的価値(働きがい・仕事のやりがい)を一つの柱として、もっとここを大切にして組合活動を推進しようと問題提起を続けている。そのことが、結果として付加価値の向上や生産性の向上に寄与することになるという考え方だ。
多くの組合が「組合員の働きがいを高める」をスローガンに様々な活動を行っている。お勧めの取り組みを2つご紹介する。
 一つ目は、「職場点検アンケート」や「目標管理アンケート」を実施し、分析した結果に基づいて、職場実践することである。組合員がどのようなことに働きがいを感じているかを数値化し、執行部だけでなく、分析結果を元に、職場委員にも共有して「支部カルテ(支部ごとの診断表)」を元に支部単位で行動計画を立てることである。
 二つ目は、「なぜ、今の会社で働いているのか」「そもそもこの会社で働くのは生活のためだけなのか」「働きがいって何?」と組合員一人一人に考えてもらう「働きがいワークショップ」を実施することである。このことで、仕事で得られる報酬(無形の報酬)に気づいた時、本当の「働きがい」(=自分が働く価値)を知ることができると考えている。

⑧職場の人間関係
 ご機嫌な職場度(組織感情診断)を起点に、職場活性化リーダーの育成や、ご機嫌な職場づくりフェスタを通じて、職場づくりのノウハウや具体的事例を共有し合う活動など、職場づくり活動を組合起点の活動として進めていこうという運動を弊社は行っている。(株式会社ジェイフィールと共催)

⑨地域コミュニティとの関係⑩社会貢献
 関東地域のある協議会では、労組の役員が講師役となり、地域の子供たちを対象に、自社で作っている製品や仕事内容について話をする取り組みを継続されているようだ。未来の組合員に働くイメージを持ってもらうことを、身近な会社の組合員から聞くことで、社会貢献活動にもなる取り組みだ。

全体として、健康状況が上位に来ているのはある意味健全であるし、想像の範囲内の結果だ。しかしながら、就業状況や仕事のやりがいの順位が思ったより低いような気がする。(6位、7位)職場と健康状況は密接に影響し合っていて、(身体的健康においても、精神的健康においても)組合員に焦点を当てれば、職場や会社が生活の基盤であり、やりがいを感じられているか否かはここで掲載されている数値以上の影響を主観的な幸福感に与えているのではないかと思う。

関心を持たれた役員の方はご一報ください。

労働組合は「転ばぬ先の杖」
小林 薫
2014/12/15
わが家には小学2年生の娘がいます。
小さいころから食物アレルギーの症状を持ち、小麦・卵・乳・そばなどを
含むものを食べることができませんでした。
誤飲により、救急車に来ていただいたことも何度かあり、
現在も携帯用の注射器を持ち歩いています。

妻は、治療のためにいくつもの病院を調べて実際に治療を受けに行ったり、
同じような体質の子どもを持つ親と情報交換をしたり、
特定の食物を含まない料理を工夫したりと、努力を続けています。
また通院のためには、妻は会社を休んで連れていかなくてはならず、治療に苦慮しています。

私たちは、長い期間働いていく中で、家庭環境の変化によって働き方を見直す必要が発生します。
これまでのように思い通りに時間を確保して働くことが
困難な状況に陥るときがあるかもしれません。
育児や介護、自らの病気の治療など、働き方を見直す必要が発生したときに、
安心して働けるような環境づくりを平常時から取り組んでいきたいものです。

会社においては、労働組合が問題発生した時だけでなく、「転ばぬ先の杖」として、
会社や働く人々の万が一に備えて、あらかじめ準備を呼びかけることが必要だと思います。
当事者になって初めてありがたみが理解できるのだとしても。

男女共同参画社会における配慮と遠慮
中岡 祐子
2014/12/07
■盛り上がる女性活性化促進の動きと労働界の実情
 
 政府を筆頭に、日本社会における女性活性化促進の動きが止まらない。
労働組合も同じで、弊社のそれに伴うサービスへの反応もよく、
とりわけ女性委員会向けのコンサルティングへのお問い合わせが多い。
 ということで、さまざまな労働組合の女性委員会についてのご相談を伺う機会が増えている。
そういったお話を聴かせていただく相手は、ほぼ労組の男性執行役員以上の方である。
女性委員会は大概どこの労組にもあるが、活性化しているところとそうでないところがあるようだ。
ただ、よくよくお話を聴くと、活性化しているところでも、その男性役員が
リーダーシップを発揮して切り盛りしている様子。
したがって、その役員が退任したりすると、途端に勢いがなくなり、有名無実化することになる。
男性でさえ、労組の活動に求心力を持たせるのが難しいのに、家事や子育てがある女性
(本来は男女ともに行うものであるが、日本社会の実態として)なら、なおさら難しいだろう。


■女性委員会が活性化しないわけ

 さて、男性役員にお話を聴かせていただくと、概ね「女性たちの意識が足りない」という話になる。
女性全員がそうとは思えないが、否定するものではない。確かにキャリアセミナーなどを通じて、
キャリアに対する意識が低い方が多いということは感じる。
とはいえ、女性たちだけの問題だろうか。非常に言いにくいことだが、お話を聴かせてもらった中では、
話を持ち込んでくるその男性役員がボトルネックになっていることも結構多い。
 例えば、過去のコンサル案件で、キックオフのときお互いに自己紹介をしましょうということになった。
すると男性役員が口を開き、そこにいる女性たちの紹介を全部やってしまったことがある。あれには驚いた。
もう一つ、ディスカッション中心の女性向け研修でのこと。女性のグループの中に一人ずつ男性がいる。
ディスカッションは女性同士がやり、発表を男性がするというのだ。
聞けば、その会社では女性が仕事場で発言をする風土がないので、慣れていないからとのこと。
他にも全国の女性が集まる集合研修に単組の男性役員が引率するという話も珍しくなく、
こういう話は枚挙にいとまがない。
 どの件もやっかいだなと思うのは、その男性たちは、女性のことを思ってやっている行動だということだ。
だからこそ、こちらも指摘の仕方には気を付けなければならない。
ちなみにコンサル契約をしていただいた労組には、そこを正直に伝え、
そのあたりについても包括的に支援させていただいている。
つまり女性活性化支援を行うときに、男性の意識改革や教育が不可欠だということである。


■配慮と遠慮

 さてこれらの男性の女性に対する行動だが、男性から言わせると「配慮」というものだろう。
しかし、私から言わせてもらえば、それは「配慮」ではなく「遠慮」だ。
そして誤解を恐れず言わせてもらえば、このテーマにおいて遠慮は差別だ。
私自身、若いころから、この手の遠慮には泣かされてきた。
「女性だから現場は無理だよね、車で待機してて」「女性だから出張は難しいよね、○○君に任せよう」など。
中には家庭の事情で出張などは無理という人もいるかもしれないが、それは個人の問題であって、
女性だからと一括りにしてはいけない。
同様に、昨今は男性でも家事育児をする時代なのだから、「男だから大丈夫だろう」というのもなしだ。
 卵が先か鶏が先かわからないが、男性が遠慮するから女性がそれに甘んじるという風土ができている。
それを女性の意識の低さのせいだけにしていてもよいものだろうか。
 もちろん配慮が求められる局面における配慮は必要である。
重い荷物を運ぶなどの作業は男性の方がいいし、休憩室を男女でわけましょうとか、そういう配慮は必要だ。


■女性を育成する男性リーダーへ

 男性の中に、女性は弱いものであって守るべきものだという思考があるのだと思う。
その生物学的議論については、どなたかにお任せするとして、ある組織が男女共同参画を掲げているのなら、
役割は男女平等に与えられるべきである。
その役割を受けるかどうかは、あくまでも個人の問題で、男女の問題ではない。
また女性に立場や役割を与えたところ失敗をしたから、次から他の女性にも役割を与えないという話もたまに聞く。
しかし、同じように男性が役割を全うできなかったら、次からは他の男性にも役割を与えないという話は聞いたことがない。
 これから女性を育成しようとする男性リーダーは、不安はあるだろうが、まずは思い切って女性に役割を与えてほしい。
そして、最初からあれこれ口を出さずに見守ってほしい。時にはうまくいかないこともあるだろうが、
失敗から修正する力を身に付けることも重要だ。
任せるときのコツは、相手が男性だったら、自分はどのような態度をとるだろうかと、いったん考えてみることである。


統計なんて誰でも知らずに使っている
渡辺 秀一
2014/11/23
 調査活動の中でアンケートデータを分析する際に「回帰分析」や
「因子分析」などといった統計手法と、「平均値」「標準偏差」
「相関係数」などの結果(これらを「統計量」と言います)がしばし
ば出てきます。
 統計=数学=難しい、という方程式は容易に想像できます。
 かくいう私自身も、数学はおろか算数でギブアップした一人であ
ります。
 とはいえ、数字の見方がわかることで、活動へのつなげ方も明らか
になってくることも事実です。

 私が社会に出て、統計を生業にして四半世紀ほど経つわけですが、
統計の師匠が「そもそも統計なんて生活の中にいくらでもあるもので、
統計学なんて学問にした途端につまらないものになってしまうんだよ
ね」といった口癖を思い出します。

では、普段の生活の中にある統計とはどんなものがあるでしょう。


【宝くじ】
 例えば、これから年末にかけて発売される「ジャンボ宝くじ」です
が、これを1枚買ったとしましょう。「当たる確率」はどのくらいだ
と思いますか?
 多くの方は「何千分の1とか何万分の1」と回答されるでしょう。
 その考え方はけっして間違ってはいません。

 しかし、「1枚のくじが当たるか、当たらないか」ですから、確率
は2分の1になります。
 もちろん、これは言葉の あや で、1等2億円が当たる確率は1ユ
ニットの発行枚数とそれに含まれる当たりくじの数から計算し、その
当たりくじを引くまでの確率は「何千分の1とか何万分の1」という
ことになるでしょう。だからこそ当たった時の喜びは大きい訳です。

 一方で、当選期待金額という別の側面から見たときに、宝くじの場
合およそ50%といわれています。つまり、300円のくじを1枚買
うと返ってくると期待される当選金は150円ということです。 
 つまり、1枚買うと150円の損になるということなので、10枚
買うと1500円損します。1枚買うだけのほうがその傷が浅くてす
みます。買うなら1枚にしておくのが被害が少ない訳です。

 とはいえ、3億当たったらどうしよう。とりあえず高級車だなとか、
これで老後は安泰だなとか、廻ってないすし屋で食ってやろうとか、
そんな夢を描くことにお金を払うことは悪くはないですよね。
 私もたまに買います。



【偏差値】
 受験の時に誰もが気にした「偏差値」。

   50が真ん中でそれより高い低い……、やら。
   灘高校や開成高校は79でスゲー……、とか。
   おれは45の高校が限界だな……、など。

 何となくはわかっているものの、この数字の正体を知っている人は
あまり多くないと思います。

 そもそもテストの点数を見るとき、国語の試験の70点、数学の試験
で70点とどちらも同じ点数を取ったとします。では同じ70点ですが、
どちらの70点を取るのが困難なのでしょうか?

 それには試験問題の難易度や、平均点などを知らなければなりません。
 たとえば、国語の平均点が60点、数学の平均点も60点だったらど
うでしょう。やっぱり同じですよね。
 でも、そこに点数のバラつき(これを標準偏差といいます)を加えて考
えたときに、国語は40、数学は10だった場合、受験者のおよその点
数の分布範囲は下記のようになります。

     点数  平均点 標準偏差 およその点数の範囲
  国語 70点 60点  40   20点~100点
  数学 70点 60点  10   50点~ 70点

 点数が集中しているのが数学で、低い点から満点まで幅広く網羅して
いるのが国語であることが見て取れます。

 これらの値を元に偏差値を割り出すと、国語52.5、数学60.0とな
り、数学の70点を取るほうが困難であったことがわかります。
 偏差値の計算式は、(点数-平均点)/標準偏差 ×10+50になり
ます(表計算ソフトなどでは関数も用意されています)。

 「偏差値」というと受験戦争の権化といった悪いイメージを受けますが、
条件の異なるものを同じ土壌で見ることができるようにする計算式の一つ
に過ぎません。


 このように、我々の生活の中には統計的なものの考え方がたくさんあり
ます。これらの計算式など難しい部分は、数字好きな人に任せて、その数
字の本質を知ることが大切ではないでしょうか。

 『今日の降水確率40%』、あなたは傘を持って出かけますか?



紙媒体か電子媒体か
佐々木 務
2014/11/16
パナソニックの紙媒体の社内報が2年ぶりに復活する事が発表されました。
同社では経費削減の一環で2012年に廃止し、イントラネットでの配信に切り替えていたそうです。

廃止当時の報道などでは、廃止の目的として印刷コストの削減はもちろんのこと、
グローバル化に伴う多言語化への対応や電子化によるSNS的な双方向コミュニケーションの効果を狙ったものとされ
「紙媒体は85年の歴史に幕」など、もはや紙媒体の時代は終わったかのような印象で語られていました。

紙媒体の廃止以降、電子化によってもたらされた様々なメリットは大きなものであったでしょうが、
イントラネットの社内報を読まなくなった社員が増えた等の大きなデメリットもあったようです。
紙媒体復活の決断の背景には、同社の構造改革による業績回復があったことはもちろんですが、
一度廃止したことであらためて紙媒体では紙媒体でしかなしえない効果があることを痛感したのでしょう。

ネットは膨大な情報から自分の必要な情報を見つけ出す検索性、新着ニュースの配信が即座にできるなどの即時性、
記事に対してコメントを返すことができる双方向性、モバイル機器さえあればどこからでもアクセスできる携帯性など、
紙媒体には決して真似のできない多くの優れた側面を有しています。

一方、紙媒体には何度も読み返すことが容易な閲覧性や一覧性の高さ、システムや端末の変更に左右されない保存性の良さ、
閲覧端末の起動を待たなくてよい気軽さ、インターネット環境に左右されないというネットとは別の携帯性の良さ、
何よりも紙としての実体があることで、「感覚」に訴えかけ記憶や印象に残りやすい情緒的価値の高さがあると思います。

新聞などの即時性を重視するニュースものはモバイルを中心に電子媒体にその位置を奪われているのが実態で、
特に若者の新聞離れは顕著なものがありますし、この流れはもはや止まりそうにもありません。
しかし、読み物などメッセージを伝えたり、情緒的な伝達性において紙媒体は電子媒体に勝る面があります。
電子媒体には膨大な情報の中から自分の興味があるものを直ぐにアクセスできるその利便性の反面、
読者は興味のあるものしか読まず、興味が薄いものは基本的に見てもらえないという傾向が高いという弱点があります。
記憶や印象に残りやすいという点でも、関心を持っていない社員に少しでも関心を持ってもらいたい経営側のメッセージや、
組織の一体感を醸成したいという情緒的な効果をねらう場合は、紙媒体に圧倒的な優位性があると思われます。

パナソニックでもこの点を強く意識したのか、復刊する社内報では毎号巻頭に社長のメッセージを掲載したり、
復刊号では創業者を語る企画として松下幸之助氏を詳しく取り上げるようです。
同社では構造改革を経て新たな成長目指す今だからこそ、組織の一体感を醸成することを何よりも重要視して
紙媒体の復活を決断したのではないでしょうか。

紙媒体か電子媒体かを考えるときに「紙媒体は時代遅れ」と単純に切り捨てる考え方こそが時代遅れで、
電子媒体が浸透すればするほど、その時々情報発信の目的や活用場面から紙媒体との機能的特徴の棲み分けを考え、
それぞれのメリットを活かしながら併用していくというのがこれからの情報発信のあり方ではないかと思います。

「組合活動」という言葉
綱島
2014/11/09
かつて「不倫は文化」という芸能人の発言が話題になったことがありました。この発言に
対する批判的な反応の多くは、「不倫」と「文化」それぞれの言葉の持つ含意がかけ離れ
ていることに起因していました。「文化人」といえば、私たちは知識と教養に溢れる洗練
された人物を思い浮かべます。しかし、もしも「不倫は文化」なのだとすれば、「文化人」
は同時に非道徳的な「不倫人」でもあることになり、私たちのイメージを混乱させてしま
うことになるでしょう。むしろ、「不倫は文化」という芸能人の発言は、こうしたそれぞ
れの用語が持つイメージのギャップをあえて利用した自己正当化の戦略だったともいえます。

実際のところ、こうしたことは「不倫」に限らず、人類の歴史の中で何度も繰り返されて
きたといえます。なぜなら、「文化」という言葉はどのような人々の営みであっても包み
込んでしまう曖昧さを持つと同時に、「文化」であることによって、自らの営みについて
もっともらしさや美しさを証明し得る性格を持つためです。その結果、何が文化であり、
何が文化でないのかという境界線をめぐる論争は至る所で行われています。
古代ギリシャの哲学者・アリストレスは都市国家ポリスを論じる中で、政治とは善い社会
を実現するための営みのことだという意味のことを述べています。つまり文化をめぐって
何が真・善・美に値するかについての議論は常に政治的な振る舞いでもあります。実際、
「文化の政治学」は現代の人文社会科学においても重要なテーマです。文学や音楽、映画
はもちろんのこと、ファッションやゲーム、そしてアニメに至るまで何が文化であり得る
のかについての議論は後を絶ちません。
「文化」という言葉がその境界線の曖昧さゆえに、あらゆる人々の営みとともに議論され
ていることについて、私は肯定的に捉えています。このこと自体が「文化」という言葉の
豊かさと強さを象徴しているように思えるからです。果たして現代の労働組合活動は、こ
のような豊かで強い言葉を持っているでしょうか。

労働組合の定期大会が終わって期初の職場委員研修会が増えてきました。私自身も多くの
職場委員の方々と議論する機会が増えています。期初ということもあり、研修会の終盤に
今期一年間の行動目標を職場委員のみなさんに設定してもらっています。参加者が職場委
員である場合、「労働組合における職場のリーダーとして、自分が働く職場をもっと良い
職場にするためにあなた自身がチャレンジしたいと考えることを目標にしてください」と、
一人ひとりへ促します。そうするとこんな質問を受けることがあります。

「組合活動に関係することでなくても、目標にしてみてもいいですか?」

私は「もちろんいいですよ。あなたがその行動目標を実践することで、あなたの職場が
もっと良い職場になると考えるなら、どんなことでもいいですよ。出社したら必ず全員と
あいさつするとか、そういうことだって構いません」と答えることにしています。
安堵する参加者の顔を眺めながら、疑問に思うことがあります。
「組合活動」という言葉は、果たして人々のあらゆる良い会社・職場を実現しようとする
営みを包み込む曖昧さを持ち合わせているのだろうか、と。
言葉が曖昧であることが常に良いことだとは思いません。しかし、変化する時代の中で、
組合活動のあり方そのものも変化が求められているのだとしたら、「組合活動」という言葉が
持つイメージの境界線はもっと曖昧になってよいのかもしれません。それが「組合活動」
という言葉が持つ豊かさと強さにつながる限りにおいて。
「人間力を鍛えるマネジメント教育」の必要性
吉川 政信
2014/11/02
 うまくいかない上司と部下の意思疎通。この原因はどこにあるのか。

 上司と部下のコミュニケーション不全は、生産性の低下や技術の伝承を阻害する要因につながるだけではなく、
職場の安全面をも脅かす重大な問題へと発展しかねない。

 特に職場の安全、災害の未然防止は規則やマニュアルに従った管理だけで防ぐことは難しい。
なぜなら、マニュアルがあっても人それぞれの解釈の仕方の違いや作成者の思いを伝え切ることが困難なためだ。
そして何より、日々の仕事の中で常にマニュアルを意識した行動をとることは、現実的に難しい。
 ここで必要となるのは、日々の業務の中でしっかりと部下を指導し、部下が上司からの指導や対話を通じて体感しながら学ぶ機会である。
しかし、コスト削減と作業効率を追求する職場においては、上司・部下の対話の時間は削減され、
最近では「叱り方」も「ほめ方」も知らない上司が増えていると聞く。
 さらに、上司が叱りたくても、パワハラを意識するあまり叱ることを躊躇するケースも増えているようだ。
このような職場環境では、上司と部下が衝突することが減るとともに、自分の思いを伝える機会も奪われている。
 そんな状況でこそ、組織として管理監督者の育成に注力すべきと考える。安全な職場を運営するにあたり、
上司は部下に技術や技能の説明のみでは十分ではない。悪いものを「悪い」と言い、
正しいことを勇気をもって実践するリーダーシップが必要不可欠である。
 上司が部下の成長の支援のために真剣に叱れば、部下はパワハラとは認識せず、
信頼関係も深まるのではないか。血の通ったマネジメントのできる人材育成は、組織全体で必要であり、
労使で協力して取り組むことが大切だと思う。

 実際、ある製造業(従業員2万人以上)においては、血の通ったマネジメントを行える管理者育成として、
労使共催のマネジメント教育を展開している。
その内容と、立ち会った際に感じたことをお伝えしたい。

 研修は1泊2日で実施され、対象は工場勤務の係長が中心。1回あたり約30名程度の参加者で開催している。
研修会のテーマは「良心のマネジメント」。形だ け、机上だけ、資料でだけ語るマネジメントごっこではなく、
人や人の心を動かす真のマネジメント力の習得が目的。
メインのカリキュラムは、「管理者としての熱意や部下への期待を、いかに情熱をもって伝えるか」をチーム対戦形式で切磋琢磨すること。
参加者たち自身が考える、ありたい職場や部下への期待を語り、対戦を通して学び、周囲からの評価も受けながら自己認識していく。
その語る姿は、研修とは思えぬほど真に迫っており、周りで見ていた私も思わず引き込まれそうになった。

 夜は、全員が座敷で車座に。管理者としての悩みを共有しながら、参加者同士の絆を深める目的で、お酒も入れながら語り合った。
 その中で、「参加者の上司」と「参加者の部下・同僚」からのメッセージを渡し、読んでもらう。
 今回の参加者たちは、生産ラインを目標通り稼働させるため、部下や周囲に日々厳しいマネジメントを繰り返し、生産ラインを死守するプロ集団。
工場ではいわば「鬼」のような存在ともいえる。そのような参加者の多くが、上司、部下・同僚からのメッセージを読み、涙している姿を目の当たりにした。
 自分が今まで辿ってきた仕事や人生の中で、苦境や不安を乗り越え、精鋭と呼ばれるキャリアを真摯に振り返る機会。
そこには、間違いなく上司や部下、そして 家族の支援があったことに気づかされ、自分の無力さや周囲への感謝を怠ってきた自分への悔しさや
もどかしさからくる涙であったと感じる。
 
 日々の忙しい仕事の中でも、このように一歩踏みとどまって「上司としてのあり方」を考える機会を設け、職場の仲間と学び合うこと。
それが、本当のマネジメント力、ひいては人間力の養成になると痛感した。

子どもの質問
伊東隆太郎
2014/10/26
我が家には2歳になる息子がいて、毎日少しずつ成長していくのを
楽しく見ています。

最近では起きた瞬間から寝るまでひたすら動き回り、
片時も目を離せません。

はじめは単語だけだった言葉も、主語と述語がハッキリとしてきて、
ただ「パパー」だったのが「パパーあっち」になり、
今では「パパー、あっちいって」と言うようになりました…

そんな成長著しい息子ですが、最近のはやりは、
何を見ても「これなに?」と聞くことのようです。

聞かれてみると、知っているようで知らないことも多いと気付かされます。
食パンの袋を留めるプラスチック製のあれの名前が分からなかったり、
色とりどりの花壇の花の名前が一つも分からなかったりするのです。

どうやら「知らない」ということに気付くのは簡単なことではなく、
「当たり前」と思っていたことが「当たり前ではないかも」と感じるのは、難しいようです。

当然ながら、人は自分の知っていることの範囲内からしか物を考えることが出来ず、
自分の常識の範囲内からしか常識的判断を下せません。

そういう意味では、自らの知識や既成概念の幅を広げるうえで、
異なる視点を持つ人との関わりは大きな価値があるのです。

最近の組合役員研修では、こういった「互いの考えや価値観を共有しあう」スタイルが
非常に増えてきています。

職種や年代、性別が異なる者同士の価値観のぶつかり合いは、これからの活動の進め方や、
新たな組織の運営について模索したい場合には、最適と言えるのでしょう。

ぜひ研修や会議などでも、時には子どものような純粋な視点を持ち
「それは何?」「それはなぜ?」と問いかけてみてください。

組合の相談機能の高め方
2014/10/19
よく労働組合では「組合にいつでも相談にきてください」「困ったことがあれば近くの役員に気軽に声をかけてください」
というメッセージを発信していますよね。
しかし、実際に相談に来る人は数%で、たとえ職場会を開いても全く意見が出てこないというのをよく聞きます。
組合員の組合離れを年々感じて困っている、という組織は多いのではないでしょうか。

私が担当している、とある労働組合の書記長も同じ悩みを抱えていましたが、解決行動のその姿勢が素晴らしかったので
ご紹介します。

最初は機関紙で「いつでも相談ください!」というメッセージを発信しようと考えていました。
どんな原稿にしたら組合員に響くか、どんなデザインにしたら目を引くかを一生懸命考えていましたが、ふと気付いたのです。
これでは、組合は待っているだけだと。
こちらから組合員のところに行って話を聴かないといけないのではないかと。
機関紙だけでは執行部の本気が伝わらないと思い、執行部から組合員へ積極的に話を聴きに行くという取り組みを開始されました。

丸腰で行くのはちょっと・・・ということで、2日間かけて「ユニオンリスナー養成講座(※)」による実場面を想定したロールプレイング
で個々の相談対応力を高めていきました。
そして今、現場実践期間として執行部から組合員に積極的に話しかけにいっているのです。

いくらわかりやすく、また見た目に素晴らしいデザインで広報物が作られたとしても、そのメッセージを発信する役員の行動が
伴わなければ組合員には伝わらないと、その書記長は思われたのでしょう。
だからこそ多くの役員を巻き込み、待ちの姿勢ではなく積極的にコミュニケーションをとり相談機能を高めていくという行動を
起こしたのです。
私はこの書記長をはじめとする、執行部の組合員に対する熱い思いだけでなく愛情を感じました。

また私自身、熱い思いを抱いていてもなかなか行動に移せていないこともあり、自分の生き方を省みる良い機会となりました。


※詳細が気になった方は添付ファイルをご参照ください。