■盛り上がる女性活性化促進の動きと労働界の実情
政府を筆頭に、日本社会における女性活性化促進の動きが止まらない。
労働組合も同じで、弊社のそれに伴うサービスへの反応もよく、
とりわけ女性委員会向けのコンサルティングへのお問い合わせが多い。
ということで、さまざまな労働組合の女性委員会についてのご相談を伺う機会が増えている。
そういったお話を聴かせていただく相手は、ほぼ労組の男性執行役員以上の方である。
女性委員会は大概どこの労組にもあるが、活性化しているところとそうでないところがあるようだ。
ただ、よくよくお話を聴くと、活性化しているところでも、その男性役員が
リーダーシップを発揮して切り盛りしている様子。
したがって、その役員が退任したりすると、途端に勢いがなくなり、有名無実化することになる。
男性でさえ、労組の活動に求心力を持たせるのが難しいのに、家事や子育てがある女性
(本来は男女ともに行うものであるが、日本社会の実態として)なら、なおさら難しいだろう。
■女性委員会が活性化しないわけ
さて、男性役員にお話を聴かせていただくと、概ね「女性たちの意識が足りない」という話になる。
女性全員がそうとは思えないが、否定するものではない。確かにキャリアセミナーなどを通じて、
キャリアに対する意識が低い方が多いということは感じる。
とはいえ、女性たちだけの問題だろうか。非常に言いにくいことだが、お話を聴かせてもらった中では、
話を持ち込んでくるその男性役員がボトルネックになっていることも結構多い。
例えば、過去のコンサル案件で、キックオフのときお互いに自己紹介をしましょうということになった。
すると男性役員が口を開き、そこにいる女性たちの紹介を全部やってしまったことがある。あれには驚いた。
もう一つ、ディスカッション中心の女性向け研修でのこと。女性のグループの中に一人ずつ男性がいる。
ディスカッションは女性同士がやり、発表を男性がするというのだ。
聞けば、その会社では女性が仕事場で発言をする風土がないので、慣れていないからとのこと。
他にも全国の女性が集まる集合研修に単組の男性役員が引率するという話も珍しくなく、
こういう話は枚挙にいとまがない。
どの件もやっかいだなと思うのは、その男性たちは、女性のことを思ってやっている行動だということだ。
だからこそ、こちらも指摘の仕方には気を付けなければならない。
ちなみにコンサル契約をしていただいた労組には、そこを正直に伝え、
そのあたりについても包括的に支援させていただいている。
つまり女性活性化支援を行うときに、男性の意識改革や教育が不可欠だということである。
■配慮と遠慮
さてこれらの男性の女性に対する行動だが、男性から言わせると「配慮」というものだろう。
しかし、私から言わせてもらえば、それは「配慮」ではなく「遠慮」だ。
そして誤解を恐れず言わせてもらえば、このテーマにおいて遠慮は差別だ。
私自身、若いころから、この手の遠慮には泣かされてきた。
「女性だから現場は無理だよね、車で待機してて」「女性だから出張は難しいよね、○○君に任せよう」など。
中には家庭の事情で出張などは無理という人もいるかもしれないが、それは個人の問題であって、
女性だからと一括りにしてはいけない。
同様に、昨今は男性でも家事育児をする時代なのだから、「男だから大丈夫だろう」というのもなしだ。
卵が先か鶏が先かわからないが、男性が遠慮するから女性がそれに甘んじるという風土ができている。
それを女性の意識の低さのせいだけにしていてもよいものだろうか。
もちろん配慮が求められる局面における配慮は必要である。
重い荷物を運ぶなどの作業は男性の方がいいし、休憩室を男女でわけましょうとか、そういう配慮は必要だ。
■女性を育成する男性リーダーへ
男性の中に、女性は弱いものであって守るべきものだという思考があるのだと思う。
その生物学的議論については、どなたかにお任せするとして、ある組織が男女共同参画を掲げているのなら、
役割は男女平等に与えられるべきである。
その役割を受けるかどうかは、あくまでも個人の問題で、男女の問題ではない。
また女性に立場や役割を与えたところ失敗をしたから、次から他の女性にも役割を与えないという話もたまに聞く。
しかし、同じように男性が役割を全うできなかったら、次からは他の男性にも役割を与えないという話は聞いたことがない。
これから女性を育成しようとする男性リーダーは、不安はあるだろうが、まずは思い切って女性に役割を与えてほしい。
そして、最初からあれこれ口を出さずに見守ってほしい。時にはうまくいかないこともあるだろうが、
失敗から修正する力を身に付けることも重要だ。
任せるときのコツは、相手が男性だったら、自分はどのような態度をとるだろうかと、いったん考えてみることである。