ゆにおん・ネタ帳

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2014年

ストレスチェックの義務化で従業員が救われるか
加藤瞳
2014/05/23
2014年4月28日の「日本経済新聞」に気になる記事が出ていました。
ご覧になった方も多いのではないかと思いますが、簡単に内容を紹介します。

それは、企業などに従業員のストレスチェックを義務付ける法案が成立する見通し
が高まっており、50人以上の事業所で年に1回、疲労や不安、抑うつなど心理的な
負担の程度を把握するストレスチェックを従業員に義務付けるというものでした。
それが2015年度にも導入されるのではないかということです。

この制度の導入により、症状が深刻化する前の対応を充実させるというのですが、
それだけではメンタルヘルスの予防としては不十分ではないでしょうか。
なぜならば、病気が軽症のうちに早期発見し、早期治療するというメンタルヘルス
対策ではそもそも病気にならないための予防にはならないからです。

これからの労働組合が力を入れていくべき領域はもっと前の段階で、極端な表現を
すると誰もが健康でモチベーション高くイキイキと働いている状態をつくることだと
考えます。
マイナスな状態にならないようにするのではなく、もっとプラスな状態にするという
ことです。
これを私たちは「働きがい追求型」のメンタルヘルス対策と呼んでいます。

社員が病気にならないところをゴールにするのではなく、働きがいや生きがいを感じ、
イキイキしている社員を増やすことをゴールとしてほしいのです。
「働きがい追求型」の組合活動を弊社では以下のように支援しています。
ご興味を持っていただいた方はお気軽にご相談ください。


【主な活動支援内容】==============================

■安心・安全な職場環境づくり
 ≪心の支援者養成(ユニオンリスナー養成)、ご機嫌な職場づくり運動、職場自治活動≫

■個人がストレスと上手に付き合う
 ≪ストレスマネジメント、人間関係改善セミナー≫

■働きがいの向上
 ≪被考課者訓練、キャリアマネジメント教育≫

=======================================

学ぶ場としての行事への思い
細越 徹夫
2014/05/16
みなさん体や心にいいこと何かしてますか。
「人生、半世紀を過ぎて生きていると悪いとこの1つや2つはでてくるよ」そんな会話
が飛び交う年に私もなり、健康管理の大切さを痛切に感じるこの頃です。
学生時代はテニスに熱中し、社会人になってからはスキーやゴルフをしたりと、健康管
理の一環として運動をするように心がけていました。40歳を過ぎてからは、足に過度の
負担がかかりにくいという理由でロードサイクルをするようになり、休日など天気と時
間が許せば3~4時間の範囲で川べりをサイクリングしています。よく走るサイクリン
グコースは、荒川沿いなのですが、休日ともなると川沿いのいたるところでサッカー、
野球、テニスなど様々なスポーツを楽しんでいる風景が見られます。

先日、いつものコースを自転車で走っていると、前方に大きな人だかりができていまし
た。近づくと大きな垂れ幕にマラソン大会のタイトルと共に「○○労働組合 ○○支部」
と書かれていることに気づきました。労働組合という名を見ると条件反射的に観察して
しまうのは職業病でしょうか。
200、300人は集まっていると思われる盛大なマラソン大会で、労働組合が主催す
る福利厚生イベントの一環として企画されていたようです。

しばらく、立ち止まって様子を見てみることにしました。運営テントの受付ではゼッケ
ンやらペットボトルの飲み物を配っています。土手には職場の仲間なのか仲良しグルー
プなのか、お弁当を食べながら応援しようとするグループも散見されました。そんな光
景を眺めていたら、なぜか不思議に懐かしさがこみ上げてきました。
そういえば、私が社会人になったころは、いたるところでこんな行事が開かれていたも
のです。4月は花見、5月はソフトボール大会、6月は社員旅行・・・。会社主催、労
働組合主催、職場主催と、主催が入れ代わり立ち代わり行事がありました。

当時の私には、それらの行事が仕事につながるとか、コミュニケーションの向上のため
だとかの意識はなく、単に楽しく自発的に参加できる機会としての認識しかありません
でした。もしかすると行事の企画者本人たちにも、深い意図があったわけではなく、そ
れらの行事が開かれることをごく普通なことだと思い、それらの行事を通じて「人と人
との関係」や「振る舞い」や「節度」といったことを『ごく自然』に学ぶ場であること
を意識の中に刻み込まれていたのかもしれません。たぶん、一つの文化としてそれぞれ
の企業の中に浸透していた自然なことだったのではないでしょうか。

そんな行事も会社主催のものを中心に1990年代以降、いわゆるバブル崩壊を契機に一気
になくなってしまいました。その理由の第一は費用的なこともあるでしょうが、それら
の行事が月日を経て回を重ねるうちに、必須になり、強要になったりする中で、それぞ
れの参加者の多様な参加動機を知らず知らずに無視し、時にはハラスメントも見られる
など、結果的に行事への参加を疎む人も増え開かれなくなったのだと思います。

ここ最近会社や労働組合でも飲み会に始まり、バーベキュー大会や運動会などのイベン
トや行事が見直され、実施するところも増えているようです。大いに楽しみ参加者が増
え、「人と人との関係」が深まる機会として積極的に実施されることを願っています。
主体性を尊重し過去と同じ轍を踏むことなく、『ごく自然』なつながりができる機会と
して。
人と人の関係で大切なことは、相手を知るということです。相手をよく知ることで、仲
が良くなるとか好きになるとは限りません。しかし、相手を知ることで相手の立場や考
え方を尊重した関係性を築くことができるのではないかと思います。
そんなことを自然に学ぶ場が、「楽しい」「積極的に参加したい」と思える機会になる
ように知恵を絞っていきたいものです。

実効性のある組合活動を行うために必要なこと
渡邊祐
2014/05/11
 多くの組合で、今期の活動を振り返り、来期の方針を検討する大切な時期が近づいてきました。
どの組合においても、魂を込めて取り組むとても重要な活動の一つかと思います。

 毎期、活動方針を立てるとき、当然のことながら「活動の目的」や「達成された状態」を明確に
イメージし、設定されていることと思います。しかし、新しい期が始まり、いざ活動を行っていく
過程において、その活動を行うこと自体が目的化してしまっていることはありませんか?
 労働組合の活動は多岐にわたり、かつ、限られた人数で運営・推進していかなければなりません
ので、時として活動を行う意味が見えづらくなってしまうことがあります。それでも、方針として
掲げた以上、活動を進めていかなければならず、理想と現実の狭間において「なぜ」その活動を
行っているのかを意識できなくなってしまうのです。

 何となく、目標管理制度の運用面における課題に似ていませんか?
 であれば、組合活動も目標管理制度の考え方に沿って進めていくことで、実効性のある活動に
結びけることができるのではないでしょうか?

① 活動方針に沿った役員階層別役割・期待の明確化(上位方針)
② その実現のために必要な行動と達成された状態の設定(目標設定)
③ 立てた目標の進捗を定期的に振り返り、適切な支援を行う(進捗管理)
④ 期末の段階で自己評価し、次期の取り組みへとつなげる(育成面談)

 1年ごとに役員が入れ替わっていくことが多くなっていますので、個人単位で展開することは
難しい場合もあるかもしれませんが、1年間活動に携わり現場で取り組まれた役員のノウハウは
着実に組織に積み上げられていきます。

 活動の実効性を高め、個の成長を図るためには、密な対話と適切な支援による地道な取り組みが
必要であり、そのサポートを弊社が行えるのであれば幸いです。

労働組合のお母さん的役割
中岡 祐子
2014/05/04
■共感ができない労働組合役員

 メンタルヘルスやコミュニケーション力向上、職場の活性化などの課題に奔走している。
さらに最近は支援力向上、女性支援などのテーマも加わった。これら一見バラバラに見えるテーマの根底にあるものは「共感」である。
従って、組合役員向けに共感(傾聴)トレーニングをする日々である。
だが、それは同時に「共感」より「問題解決思考力の強い」の組合役員に四苦八苦する日々でもある。
役員には男性が多いというのを差し引いても、かくも人の話が聴けないものかと愕然としている。
共感するためには、聴き手は話し手に寄り添わなければならない。
例えて言うなら「霧の中に浮かぶライト(気持)の強さの方向に、二人寄り添って進んでいく(ヘルスカウンセリングテキスト2004宗像恒次)」ようなものである。
この「寄り添う」のがポイントである。しかし、組合役員は無自覚に話し手の一歩先を歩いてしまう。
話し手の問題を自分が解決しようとしたり、アドバイスしたり、プラス思考を進めたり、何かしらのゴール設定をしようとするのである。

■労働組合はお母さん 

 昔、上司に「会社を家族に例えると、(管理職を含む)経営側はお父さん、労働組合側はお母さん」と教えてもらったことがある
(最近は子供を叱らないフレンドリーなお父さんもいるが、そうではなく典型的な昔の日本の家庭を思い出してほしい)。
子供(組合員)が、悪いことをしたり、失敗したり、悩んでいるときに叱咤激励しながら正しく、前向きに、問題解決に導いていくのはお父さん(経営)。
では、そのときお母さん(組合)はどんな役割をすればいいのだろう?
お母さんは、子供の気持ちを一番に考え、子供がどんなに駄目であっても、子供の話を聴き、信じて寄り添う、絶対的な味方だ。だから子供はお母さんといると安心する。
そこに労働組合の目指すべき姿がみてとれる。
しかし、最近の組合の活動を見ていると、組合までもがお父さん的になっている印象がぬぐえない。
家庭の中にお父さんが2人いると、子供は萎縮してしまい、悩みがあっても、「こんなことを言って逆にお父さんに怒られやしないか、駄目な子と思われやしないか」と行き場を失い、我慢し孤独になってしまう。
現場主義という言葉を錦の御旗に、職場に起こる様々な問題を労働組合が解決していく。
そこに組合員の気持ちへの共感はあるだろうか。事柄的に問題解決をしてもなお、組合員は悩みを抱え孤独になったままになっていないだろうか。

■事柄的解決の問題

 メンタルヘルス問題としてよくあげられるのが、長時間労働である。確かに多くの人間はそれが解消されると安心感や喜びにつながる。
しかし、世の中には、自分の会社での存在価値を、働く時間の長さに置き換えている人達が少なからずいる。そして労働時間を短縮されると、自分の存在価値が揺らぎ不安になる。
場合によっては、それを防ぐために別の問題行動を始めたりする。あなたの周りにも、仕事を同僚と共有せず抱え込み、周囲からの同情を得て安心している人がいないだろうか? 
このような行動は、愛着障害からくる人の気をひく心理パターンの一つで、やっかいなことに本人も無自覚であることが多い。
このような人の場合、まずはそういう行動を起こす背後にある気持ちに共感し、その人の無自覚なニーズを理解しなければならない。
つまり事柄は同じでも、感情は間逆になることもあり、しかも人の感情など、聴いてみなければわからない。

■あるがままの自分

 先日、ある組合のリスニング研修中に受講生から聴いた話があったので、それを紹介したい。
そもそも会社自体も効率重視で社員をロボットのように使う風土があり、そのうえ支配的な上司の下にいたため、自分がやりたいことを否定され、苦しんだという。
それが組織改変で上司が変り、初回の挨拶時にやる気になったという。「自分のありのままを受け止めてもらえたことが嬉しかったんです。
勿論やりたいこともやらせてもらいますが、言われた仕事も今以上に頑張りたいと思いました!」その後の行動にアクセルがかかり仕事で活躍しているのは容易に想像できるであろう。
人間は感情を持つ生き物だ。感情があるからやる気になったり、悩んだりする。
よほど嬉しかったらしく、何度も「ありのままの自分を受け入れられた」と、その言葉を宝物のように大事に反芻していた。
これが共感し寄り添うということだ。このとき、上司が数字を気にして、ちょっとでも前に出て部下を恣意的にコントロールしようとしたならば、こうはならないだろう。
もちろん、上司は強いリーダーシップを発揮しなければならない場面もある。でもそればかりだと部下はやらされ感に陥ったり、孤独になったり、無理をしてメンタルダウンする。
上司がお父さん的な役割と、お母さん的役割を場面に応じて使い分けられることが理想だ。
では労働組合はどうだろうか? 会社を1つの家族としたとき、組合がとるべきスタンスはどうであろうか? 私たちの調査によると、子供(組合員)は職場で心を許せる人がおらず孤独な状態である。
あるがままの自分でいられる空間、そんなお母さん的な温かさを持った空間が必要とされている。

え、今から? 来春闘の要求どうする
池上 元規
2014/04/27
今春闘の結果に対して皆さんの労働組合ではどのように評価しているか?

 多くの組合では6年ぶりにベア要求を行うと決めたが、その時に要求根拠を作ることに困ったことだろう。
要求根拠は社会・政治的要因(増税、物価上昇、業界の賃上げ動向、人材確保など)から組み立てて臨んだ組合も
多かった。実際に要求額は満額ではないとはいえベアを獲得し、一応の評価をしている組合も多くある。今春闘
は組合員の所得が増える結果が出たことは活動の成果だ。

 そこで、今回の春闘で一定の成果を得た組合も今一度、総括する必要があると強く思う。今春闘の要求根拠
の整合性は過去・未来を見たときにはたして取れているのか? 自分たちのスタンスはブレていないか? 来年
も消費税が8%から10%に引き上げられようとしている中で、来期春闘をどのように臨むのか? 特に社会的
要因を中心にしてベアを獲得した労働組合では、組合員は来年もまたベア獲得の期待をしていることであろう。
組合員は、労働組合がどのように期待に応えてくれるか、注視している。これからの取り組みいかんでは、チャ
ンスにもピンチにもなりうる。

 先日A労働組合に訪問した際に、今春闘の話を聞いてみるとベア要求に対して、満額ではないが会社より思
った以上の回答を得たとの話を聞いた。
 《概要》
 ・組合としても春闘の結果は概ね満足した
 ・ベア回答と引き換えに時間外労働の10%削減を労使で取り組むことを約束した
 ・労使双方が、生産性の向上からなる業績向上なくして、外的な要因での賃上げを実行するのは中長期的に
  危険だと感じている
 ・まずは組合で、現状の労働時間管理に関する制度および運用の見直しと強化を会社に提案する取り組みを始める

 A労働組合はすでに、生産性を高めることで来春闘の賃上げの材料としようとして取り組みを始めている。
生産性について何を指標にするかは難しいが、労使で生産性の向上に取り組むことは、とっても健全だ。このよ
うに、数値目標を定めることで、組合員にも取り組みの結果がわかりやすくなる。だが、実際にA労働組合のよ
うな取り組みを進めると、現場の組合員からは、「仕事は変わらないのに労働時間だけ削減するなんて難しい」
「何から取り組めばいいかわからない」「いまでも限界ギリギリでやっていてこれ以上は……」など、取り組みを
否定する声が出るかもしれない。

 そこで、現場で労働時間短縮に取り組む時に重要なポイントは複数あるが、制度面からの改善には限界がある。
制度面の改善と合わせて、意識と風土の改善をセットにして取り組むとより効果が期待できる。さらに組合役員
が労働時間を短縮して働き方を変えている姿を見せると説得力や推進力が増す。とはいえ、仕事・組合活動・生活
の三つのバランスを保つことが難しいことはよくわかる(私も組合役員を経験したが、本当に大変だった)。だか
らこそ、ユニオンリーダーが職場の仲間から目標となるような働き方を示すことができると、組合員の時短に対
する取り組み姿勢も変わるだろう。そのために労働組合としては、組合役員が自らの働き方を改善し、短い時間で
効果的なアウトプットを出せる、タイムマネジメントスキルを習得する機会づくりと支援が必要だ。

 A労働組合の話に戻すが、労働組合からの支援を通じて組合役員が働き方を改善し、同月前年比で10%の時間
外労働を削減できれば、活動の求心力が高まる。さらには組合役員本人の成長にもつながり、組合活動を通じての
成長を感じることができる。

 次の春闘を見越し、今から生産性向上の取り組みを始めることで、以下2点が期待できる。
 ①組合員からの期待に応えられる
 ②組合役員の成長と、組合活動のやりがい向上が実現できる

今から来春闘対策に取り組むことで、組合への活動がさらに前進すると思う。



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エンゲージメントを高める視点
荏本 太郎
2014/04/19
「何でも執行部頼りではなく、職場に近い組合役員がリーダーシップを発揮して、職場の問題は職場で
解決してほしい」

多くの組合役員の方からこんな話を聞きます。研修をはじめとした人材の育成方法についても、より実践的で
職場目線の内容を希望されるケースがかなり増えている実感があります。

また、近づく役員改選の時期にあたり、「組合役員にしたい人材は、会社も欲しがるから……」という声も
多くうかがいます。ある組合役員の方に、「一言で言うとどんな人材ですか?」と問いかけたところ、
「仕事でも組合活動でも、自ら難局を打開し、そこから学ぼうとする人」「人とのかかわりを厭わない人」
との答えをいただきました。

「組織へのエンゲージメント」という概念があります。直訳すれば「契約」や「つながり」という意味ですが、
人材育成の領域においては「帰属している組織への愛着・納得感」の意味で使われています。
組織にエンゲージしている人材は、「仕事に情熱的に取り組み、ほかのメンバーとも強い絆を感じている」
とされます。役割に対して真摯にぶつかる、仲間との太いつながりをつくる点は、まさに労使双方から
必要とされる人材といえるでしょう。

このエンゲージメントを高める方法として、米国の大手流通「ウォルマート」社が発表した6つの視点があります。
※人材マネジメント協会SHRM2010年次総会にて発表
※下記丸カッコ内は、労使で支援できる例です

1.職場での人間関係
 (上長との関わり方、職場コミュニケーションスキル、チームビルディング、メンタルヘルス予防)

2.職務内容
 (考課者・被考課者訓練、職場上司との育成面談推進、能力の棚卸し、中期的キャリアプラン)

3.仕事・学び・非日常体験の機会
 (自己学習機会創出・ツールの提供、会社以外での活躍機会創出)

4.人間的な生活
 (ワーク・ライフ・バランス推進、休日・休暇制度への提言)

5.考え方や意見の違い、特性を活かす風土
 (ダイバーシティへの推進、地域貢献の取り組み)

6.トータル・リワード
 (プロセス評価[評価制度・制度運用]推進、非金銭的報酬への提言)

丸かっこ内は、各項目に対して労使で対応できる例です。
6番目のトータル・リワードとは、1~5の視点を包括・体系化して賃金以外の福利厚生や職場環境整備など
さまざまなアプローチで社員に報いることだそうです。また、全ての育成・評価のプロセスを
可視化していくことも重要なポイントのようです。

職場内で自立的かつ率先垂範で問題解決を遂行できる人材を輩出するためには、個々の課題に対する研修・講習だけではなく、
広範な視野をもって「組織との密着度」を考えていく必要があると感じています。


活動を担う次世代役員の育成
清水 典明
2014/04/13

 組合活動を担う組合役員の育成について、相談を受けることが増えてきています。組合の特性として、
運営を担う組合役員は任期が短く(多くは1、2年)。活動・業務の引継ぎに苦慮されているという話を
多く聞きます。

 期の初めに「労働組合の歴史(今までの自組合の歩み)」「現在の組合活動について」「組合役員の役割と
活動手法(期待する行動)」を説明して、その後は活動しながら育成をしていくOJTがメインになってい
いるのではないでしょうか?
 執行部や職場役員の”活動品質”を定期的に観測し、その観測結果に基づく人材育成の環境や仕組みを
整えることまで手が回っていないのが現状ではないでしょうか?

 組合活動を活性化するには活動を担う組合役員がいかに動機づき、職場をまとめるスキルを持った
リーダーとして育成できるかにかかっています。
 一例ですが、年間を通じた人材育成の手法について紹介します。

3カ月に1回の定期的な研修
 研修内容に即した3カ月間の活動期間の目標設定をする。
 3カ月後の研修機会に3カ月の振返りを行う。
 受講者同士で改善案を議論し、再度目標設定をする。
 これを繰り返し、徐々にレベルアップをしていく。

組合役員を対象に活動理解アンケートを!
 定期的に役員の活動理解や、現場行動をアンケートで把握する。
 調査結果から支援内容・研修内容を決める。

活動の中で生み出されたノウハウをマニュアル化
 研修と現場活動を進める中で、効果的だった手法を現場の知恵として
言語化し、実践的な行動マニュアルを年度ごとに積み上げていく。



今後の人材育成についての何かの参考になりましたら幸いです。

対話が生み出す「労使イノベーション」
吉川政信
2014/04/07

 景気の回復が進み、企業活動も活性化し、約20年間続いたデフレ脱却の兆しが予測されています。以前
と比べ私たちの働き方も付加価値を高め、その結果として賃上げへと連鎖していく……。そんなシナリオ
こそが望ましい結果といえるでしょう。
 しかし付加価値の分配は労使による前向きな交渉あっての結果といえます。大切なのは、この付加価値
をどのように高めるかについて、日頃から労使で対話しているかです。相互の理解と共感を通じて、お互い
の立場から付加価値を高めるための取り組みを行うことが大切です。
 また職場に目を向けると、多様化していく働き方の中で、一人ひとりのライフスタイルや価値観も多様化
しています。じかに話し合う機会をつくることすら困難で、個々のつながりも希薄になりがちです。
 職場での対話の機会をつくり、多様な考えや価値観を共有できれば、本音の対話から生まれる生産性向上
や職場の課題を解決する知恵やアイデアにつながり、私たち自身の働き方の付加価値を高めやすくなります。
変革期の今だからこそ組合が一歩立ち止まり、対話から生まれる新たなイノベーションに取り組むことも
重要だと感じています。
 以下に労使で真剣に向き合い、組織活性化への取り組みの体験より労使による組織活性化活動のポイント
を紹介したいと思います。


■労使共通の目的・目標を探る

 まずは、労使がお互いに目指す目的や「あこがれる」状態を探ることです。企業ビジョン、組合ビジョンを
再認識した上で、従業員意識調査の結果を活用しながら議論をすることで、結果から見える課題が先に進む
ために必要な目標となります。つまり目指す姿へ進む上での道しるべを定めることです。
 「従業員満足度」「業績目標達成度」「顧客満足度」といった値が該当すると思われますが、この目標指標を
構成する主な要因が、自分たちの組織において何なんのかを考えることが大切です。
 「上司・部下の関係性」「業務スキル習得の方法」「協力体制」など、具体的に見えてくることで、組織の強みや
弱みも自然と浮かび上がってきます。非常に困難な作業といえますが、このプロセスを経ることが、最も重要
といえます。

■知恵・アイデアの共有

 労使の目標を達成する上で、組合員・管理職がお互いの立場で現状の課題を認識し、対応策を検討することが
重要です。大切なのは常に共通の目的・目標を意識し議論を重ねることにあります。
 特にお互いの見解のかい離にこそ、組織の真の課題が隠されていることが多く、そのかい離をお互いに認識し
具体的な対応策へ結びつけていくことが重要です。
 例えば、上司・部下において会社方針の捉え方の違いやコミュニケーション齟齬(そご)があれば、お互いの
期待に違い(ズレ)を生み、どんなに労使で努力しても期待以上の成果を生み出すことが困難になります。
知恵・アイデアの共有でといわれるイノベーティブな手法だけでなく、お互いの価値観や働く上での力点を確
認することにもつながります。

   [Aさんの見解]
     ↑↓ ・・・・・・・・・お互いの見解の“かい離”に、真の組織課題が隠されている!
   [Bさんの見解]


■実行計画と進捗管理

 課題とその対策が検討できれば、具体的な実行計画の作成となります。ここで重要なのは、目標に対して
計画を進める上で進捗確認の時期を明確に定めることです。計画は必ずしも予定通りにはいきません。大切
なのは計画とのかい離を定期的に確認することであり、修正すべき点を話し合うことにあります。

 進捗管理はいつするの? ○○○でしょ!! 
   [Plan] → [Do] → [Check] → [Act]


■労使委員会の設立

 取り組みの重要性を象徴するのが、労使委員会の存在です。労使委員会は取り組み全体のマネジメント
機関であると同時に、その存在自体が従業員のモチベーション向上へもつながります。
 経営幹部と労組代表で組織された労使委員会による取り組みという意識は組合員にとっては自分たちの
知恵・アイデアと行動が組織変革への期待にもつながるという意識を生むからです。その期待は取り組みを
促進します。労使委員会の役割は目標に対する進捗確認や効果測定だけの役割だけではなく、労使の目標を
達成するために必要な活動を企画し実行していくシンクタンク的な役割も担います。
 取り組みに対して優れた行動をした従業員への称賛や人材育成計画、人事評価制度などと連動すること
もできます。


 今後、企業活動も活性化し高付加価値な働き方を目指す上でも、労使を核とした組織力の強化が必要だ
と確信します。


【労働組合マネジメント】
三橋 秀郎
2014/03/30
労働組合マネジメントという言葉を聞いて、どのようなイメージをされるでしょうか?
ある労働組合から、このようなテーマの研修依頼があり、私なりにまとめてみた内容を
今回はお伝えします。

一般的にマネジメントというと、リーダーシップという言葉と比較されることが
多いかと思いますが、一般的な違いとしては以下のようかと思われます。

■マネジメント
・管理、処理、経営
→組織の目標を達成するために様々な資源や資産、リスクや複雑な事象などを
 管理、整理、対処すること

■リーダーシップ
・指導者としての地位、任務や資質・能力・力量。統率力
→魅力ある目標を設定し(ビジョンニング)、その目標を実現するために、
 人々の意欲を高め成長させながら、課題や障害を解決すること

 一般的に企業の創業期においては、リーダーシップが求められ、組織が成長し成熟期に入ると
マネジメントが求められ、変革期に入るとマネジメントからリーダーシップが求められます。
また、現在のような変革期においては、会社の中の中間管理職の方々は、現場での瞬時の判断や
対応(マネジメント)と部門のメンバーをやる気にさせるビジョンニング(リーダーシップ)の
両方を求められる方々が多いかと思われます。

では、労働組合の場合はどうでしょうか?
組合員の組合離れ、組合活動への無関心層が増大し、なかなか組合活動に対して理解されない
状況ではないでしょうか。

そのような状況において、労働組合マネジメントの3つのポイントをしっかりと実践することを
オススメいたします。

①みんなが夢を描けるビジョンを示す
 会社は直近の収支に目が行くので、長期的に、こうなっていきたいという夢を描かせる
ただし1人で考えず、メンバーを巻き込んでビジョンを考えていく(関わりをもたせる)

②それを具体化する計画をしっかり立てる
 ビジョンを描いても夢物語で終わらないためにも、実現できそうと思わせるように
3~5年後のビジョン達成のために1年目は何する、2年は何する、3年は何するなど
ビジョン実現に必要な活動を年度計画にブレークダウンしていく

③計画したことが実現できるように支援する
 計画してもなかなか計画通りにいかないことが多いかと思います。その時に、
こまめにメンバーをフォローし支援したり、鼓舞していく

現在の先の見えない世の中において、労働組合が主体となって、みんなを元気にする
ビジョンを持って、活動していくことが必要ではないでしょうか。

組合活動に関心を持ってもらい、参画してもらうための今後の参考になればと思います。

“対話する力”を高める秘訣とは?
丸山 由紀夫
2014/03/23
“対話する力”を高める秘訣とは?

『職場がギスギスしている』
『思いが伝わらない』
『組合への興味・関心が年々低下している』……etc.

これらは、実に多くの組合役員から寄せられる悩みである。
そして、それを改善すべく、多くの組合では“対話”
キーワードに組合役員教育や組合活動を行っている。
今回は、この『対話する』とはどのようなものなのか、そして、
“対話力を上げる”とは、どのような活動なのか述べていくこととする。

まず、そもそも“対話”とは何なのか?
一般的には“異なる価値観や考え方を知る行為”と定義されている。
交渉や討論と混同されるケースも見受けれるが、それとは明確に異なる
コミニケーション技法である。
交渉や討論の主目的を勝ち負けに置いていることが多いが“対話”とは
お互いの考え方やそれに至る背景、さらに価値観の相異や異なる判断基準を
明らかにし、お互いの成り立ちを知る行為である。


つまり、周囲にいる人達は、どのような背景の中で育ち、どのような歴史があり
今に至るのかを認識していく活動である。究極的には、意見や価値観のギャップは
あるが、我々の仲間であるという意識を醸成していく技法である。
この“対話”と“交渉や討論”の目的の技法の違いを認識し、必要に応じて
使い分けることが重要である。


次に、“対話する力”をどのように高めていくか述べることとする。
これに関しては、多くの教育学者がさまざまな理論や技法を述べているが、
組合活動の現場で活用できる観点で、対話技法のポイントを私なりに整理したのが
下記の3点である。

①どんな意見でも、決して否定(攻撃)しないようにする

②対話を保持する司会役をたてる

③なぜそう思うのか、その判断に至ったきっかけや出来事、それを起こした背景を聴く

実にシンプルでとっくにやっていると思われる読者の方もあろう。
しかしながら、筆者はこれが実に難しいと感じている。なぜならば、
最初のうちは意見を聞いているが、時間の経過とともに、“私はこう考える…”
といった主張のみを述べたり、時には説得したり、いつの間にか、
討論やディベート的な話し合いにすり変わっていくことが多く見受けられるからである。

対話の真髄は相互探求である。
そして、相手の思考(物の捉え方や考え方)の観察者になることである。
相手の意見の内容とその背景に関心を寄せ、なぜそれに至ったかを探求し続けることである。

つまり“対話する力”とは、“探求する力” 考え方の源泉を探る旅なのである。
そして、直線的な結論を得ることを目的としない、相互探求を行う過程そのものを重要視した活動を行っているのが労働組合と筆者は考える。

まずは、近くにいる組合役員や組合員の考え方とそのバックボーンとなっている
背景を知ることから、対話活動の環を拡げてみてはいかがだろうか?

かくいう、私自身もこの対話の未熟さに気付き、できるところから実践
(アルコールの力を借りた話し合い)し始めたところである。