今回は厚生労働省の雇用政策研究会のレポート「仕事を通じた一人ひとりの成長と、
社会全体の成長の好循環を目指して(2014)」を参考にして、組合活動でできること
を考えてみたい。
(※労組の後方支援企業としての立場で、現場での支援をさせていただいている中で
の記述であり、レポートに記載されているすべての現状課題や、今後の方向性に
整理、対応していない点は予めご理解・ご容赦ください)
詳細は、実際の報告書を参照いただきたいが、雇用政策の将来ビジョンとして「仕
事を通じた一人ひとりの成長と、社会全体の好循環」を描き、ビジョン実現に向けた
軸として、能力開発の強化などを柱にした ①社会全体での人材の最適配置・最大活
用、働き方の改革などを柱にした ②「全員参加の社会」を実現の2つの軸がある。
今後の施策として5つの方向性を打ち出しているが、(①能力開発・能力評価制度
の整備 ②マッチング機能の強化 ③良質な雇用機会の創出 ④企業の強みにつなげ
る雇用管理の実現 ⑤全員参加の社会の実現)、その中に挙げられている幾つかの項
目に沿って、弊社が支援していることの一部を記載する。
視点)企業内、個人主導などさまざまな機会を捉えた職業能力開発の強化
「生涯学習支援としての、労組主導のセミナー開催」
この取り組みはどちらかといえば、企業の生産性向上にはダイレクトな成果には結
びつかないが、中長期的な組合員の人材育成を視野に入れた活動である。
1つ例を挙げれば、『生き方を考える』をテーマにした、「女性のキャリアマネジ
メントセミナー」や、『ココロの健康』をテーマにした「事例で学ぶメンタルヘルス
セミナー」などである。組合としては、企業が実施する人材育成を補完すべく、組合
員のニーズを踏まえて、積極的に能力開発の場を提供し、支援を図ることが望まれる。
視点)労働者の主体性、内発性を引き出す雇用管理の実現
例えば、公正で納得できる処遇という視点では、目標管理制度が働きがいにつなが
っている制度になっているか、意識・実態の両面で捉え、組合と会社の双方から、組
合員の目標管理を支援する取り組みなどを行っている。
さらには、職場がイキイキしている状態をつくることをゴールに、職場で起こって
いる課題や目指すべき方向性を共有するために ①職場点検調査を実施 ②分析(職
場の課題や満足度をアンケートによって数値化) ③共有(結果を経営陣・組合員に
共有し、課題解決策を具体化 ④点検(職場解決策を実行し、効果を検証する)のス
テップで活動を行い、その過程において職場委員および、組合員を巻き込んでいくこ
とで主体性や内発性を引き出す活動などである。
視点)企業内の労使コミュニケーションの活性化
レポートにある現状、課題認識の中で、労使コミュニケーションは、労働者による
仕事の工夫を引き出すとともに、苦情や不満を解消し、生産性の向上に寄与というも
のが挙げられている。
このテーマに関連するものとしては、職場集会での苦情や不満の聴きとりや、その
苦情や不満を聴くだけでなく、当事者意識に転換する(現実+自分たちでできること)
方法を身につける職場集会の進め方改善、職場委員(上司や同僚と並び組合員の最も
身近な相談者)の相談能力の向上の取り組みなどを支援している。
さらには、職場へのインタビューなどの各種調査を通じて、仕事の工夫を引き出す
などの労使での取り組みである。経営者の視点でみれば、5番目の経営資源(人・モ
ノ・お金・情報・労働組合)として捉える労働組合との取り組みも少しずつではある
が浸透しつつある。
視点)「時間意識」を高め、「正社員=いつでも残業」を変えよう
従来の時短に関する支援活動に加えて、NPO法人 日本タイムマネジメント普及協会
(理事長 行本明説氏)の協力を得て、科学的理論に基づいたタイムマネジメントの
普及の活動を進めている。
組合員の実態調査や組合員の意識付けのセミナー、情宣物(機関紙や冊子)を使っ
てセルフチェックを行ってもらうなど、組織の取り組みの現状に合わせた活動支援を
行っている。
視点)企業内の人材育成の方向性
長期化した職業生涯の途中で、仕事のやり方、技術の変化により習得した技能が無
用化するリスクも高まっており、変化への対応を織り込んだ能力を身につけることが
望まれる。例えば、問題を見つけ、その問題がなぜ起きているかについて仮説を立て
て、それを誰にでもわかる方法できちんと検証して結論を導くというもの。系統的に、
あるいは科学的にものを考える知的能力、課題に対してさまざまな事情や利害得失を
考慮しながらバランスの取れた解決策を導く能力、相手の意向や感情を把握する能力、
わかりやすく物事を伝える能力など、どの職業・産業にも共通の能力を学生時代だけ
でなくもちろん就職後も身につけていくことが必要である。(以上報告書引用)
これらの方向性に対応する具体的な支援策としては、OFF-JTとして、労働組合主催
の勉強会を開催している。
職場課題や調査結果をテーマにした「ロジカルシンキング」や「ユニオンリスナー」
「アサーション」「プレゼンテーション」などの集合教育の支援を行っている。これ
らを複合的に行うことで、上記の企業内の人材育成の方向性に沿った取り組みの一端
を担っている。
皆さんの熱心な活動を推進する一助になれば幸いである。