ゆにおん・ネタ帳

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2014年

一人ひとりの活動による「成長」の気づきを与えあう
室橋
2014/03/16
ある労働組合のPDCAサイクルを回す職場委員研修で感じたことです。

職場実践の成功体験や失敗体験を振り返る研修をインタビュー形式で行いました。自分の発言に対する、他のメンバーからの質問に答えることで、自分の取った行動の意図がさらに明確になっていく。インタビューで互いにフィードバックしあうことで気づきを与えあう関係性が生まれていました。


「そうなった理由には何がありますか?」
「もう少し詳しく聞かせてください」
「取り組んでみてどうでしたか?」など……。

質問は、大事なことに気づくための重要な役割を果たしているといえます。他者からの質問によって新たな視点が見えて、新しい気づきを得ることができます。そして、その気づきを瞬間的なもので終わらせることなく、次の行動目標として意識的に定着させていくことが重要です。


振返り研修後、担当者から「職場委員の発言が変わった」とお聞きしました。

研修の目的はスキルを伝達すること、知識を教えることだけではなく、参加者の行動変容に影響を与えることが重要だとあらためて思いました。職場のリーダーが組合活動を通じて自己成長感が得られ、組合活動への主体性が発揮されるような環境や仕組みを考えることも必要になります。

『人材育成(計画)をPDCAサイクルの「P」と「D」で終わらせていませんか?』



◇◇◇ j.union公開セミナーのお知らせ ◇◇◇

【テーマ】
《人材育成編》第1回/伝える人をどう育てるのか?

【ねらい】
組合活動を進めるにあたり大事になるのが、いかに職場で組合役員が行動できるかです。組合役員一人ひとりが組合活動の必要性を理解し、主体的に活動できれば、さらに魅力ある組合を組合員に周知できます。
そんな組合役員を育てていくには、どうしたらよいのか? 
役員の交代後も活動のステップアップが図れる人材・組織を目指す、人材育成のポイントをお伝えします。

【お申込み】 こちらから

雇用政策の将来ビジョンに向けて、組合活動でできること
松山晃久
2014/03/09
 今回は厚生労働省の雇用政策研究会のレポート「仕事を通じた一人ひとりの成長と、
社会全体の成長の好循環を目指して(2014)」を参考にして、組合活動でできること
を考えてみたい。
(※労組の後方支援企業としての立場で、現場での支援をさせていただいている中で
  の記述であり、レポートに記載されているすべての現状課題や、今後の方向性に
  整理、対応していない点は予めご理解・ご容赦ください)

 詳細は、実際の報告書を参照いただきたいが、雇用政策の将来ビジョンとして「仕
事を通じた一人ひとりの成長と、社会全体の好循環」を描き、ビジョン実現に向けた
軸として、能力開発の強化などを柱にした ①社会全体での人材の最適配置・最大活
用、働き方の改革などを柱にした ②「全員参加の社会」を実現の2つの軸がある。
 今後の施策として5つの方向性を打ち出しているが、(①能力開発・能力評価制度
の整備 ②マッチング機能の強化 ③良質な雇用機会の創出 ④企業の強みにつなげ
る雇用管理の実現 ⑤全員参加の社会の実現)、その中に挙げられている幾つかの項
目に沿って、弊社が支援していることの一部を記載する。

視点)企業内、個人主導などさまざまな機会を捉えた職業能力開発の強化
 「生涯学習支援としての、労組主導のセミナー開催」
 この取り組みはどちらかといえば、企業の生産性向上にはダイレクトな成果には結
びつかないが、中長期的な組合員の人材育成を視野に入れた活動である。
 1つ例を挙げれば、『生き方を考える』をテーマにした、「女性のキャリアマネジ
メントセミナー」や、『ココロの健康』をテーマにした「事例で学ぶメンタルヘルス
セミナー」などである。組合としては、企業が実施する人材育成を補完すべく、組合
員のニーズを踏まえて、積極的に能力開発の場を提供し、支援を図ることが望まれる。

視点)労働者の主体性、内発性を引き出す雇用管理の実現
 例えば、公正で納得できる処遇という視点では、目標管理制度が働きがいにつなが
っている制度になっているか、意識・実態の両面で捉え、組合と会社の双方から、組
合員の目標管理を支援する取り組みなどを行っている。
 さらには、職場がイキイキしている状態をつくることをゴールに、職場で起こって
いる課題や目指すべき方向性を共有するために ①職場点検調査を実施 ②分析(職
場の課題や満足度をアンケートによって数値化) ③共有(結果を経営陣・組合員に
共有し、課題解決策を具体化 ④点検(職場解決策を実行し、効果を検証する)のス
テップで活動を行い、その過程において職場委員および、組合員を巻き込んでいくこ
とで主体性や内発性を引き出す活動などである。

視点)企業内の労使コミュニケーションの活性化
 レポートにある現状、課題認識の中で、労使コミュニケーションは、労働者による
仕事の工夫を引き出すとともに、苦情や不満を解消し、生産性の向上に寄与というも
のが挙げられている。
 このテーマに関連するものとしては、職場集会での苦情や不満の聴きとりや、その
苦情や不満を聴くだけでなく、当事者意識に転換する(現実+自分たちでできること)
方法を身につける職場集会の進め方改善、職場委員(上司や同僚と並び組合員の最も
身近な相談者)の相談能力の向上の取り組みなどを支援している。
 さらには、職場へのインタビューなどの各種調査を通じて、仕事の工夫を引き出す
などの労使での取り組みである。経営者の視点でみれば、5番目の経営資源(人・モ
ノ・お金・情報・労働組合)として捉える労働組合との取り組みも少しずつではある
が浸透しつつある。

視点)「時間意識」を高め、「正社員=いつでも残業」を変えよう
 従来の時短に関する支援活動に加えて、NPO法人 日本タイムマネジメント普及協会
(理事長 行本明説氏)の協力を得て、科学的理論に基づいたタイムマネジメントの
普及の活動を進めている。
 組合員の実態調査や組合員の意識付けのセミナー、情宣物(機関紙や冊子)を使っ
てセルフチェックを行ってもらうなど、組織の取り組みの現状に合わせた活動支援を
行っている。

視点)企業内の人材育成の方向性
 長期化した職業生涯の途中で、仕事のやり方、技術の変化により習得した技能が無
用化するリスクも高まっており、変化への対応を織り込んだ能力を身につけることが
望まれる。例えば、問題を見つけ、その問題がなぜ起きているかについて仮説を立て
て、それを誰にでもわかる方法できちんと検証して結論を導くというもの。系統的に、
あるいは科学的にものを考える知的能力、課題に対してさまざまな事情や利害得失を
考慮しながらバランスの取れた解決策を導く能力、相手の意向や感情を把握する能力、
わかりやすく物事を伝える能力など、どの職業・産業にも共通の能力を学生時代だけ
でなくもちろん就職後も身につけていくことが必要である。(以上報告書引用)

 これらの方向性に対応する具体的な支援策としては、OFF-JTとして、労働組合主催
の勉強会を開催している。
 職場課題や調査結果をテーマにした「ロジカルシンキング」や「ユニオンリスナー」
「アサーション」「プレゼンテーション」などの集合教育の支援を行っている。これ
らを複合的に行うことで、上記の企業内の人材育成の方向性に沿った取り組みの一端
を担っている。

 皆さんの熱心な活動を推進する一助になれば幸いである。


導入期における「ユニオン大学」という発想
淺野 淳
2014/03/02
年間100回、講師としてセミナーやワークショップの場に立ち、組合活動を後方からサポートするようになり、10年が経ちました。
その間、多くの組合リーダー・組合員との出会いを通じて、また、労働組合を通じて、働く人と組織と社会づくりに情熱を注いできました。
10年の組合支援の中でも今回の春季交渉は、これからの労働組合の存在を占う上でとても重要な意味があり、心してかからねばと痛感しています。
今回の春季交渉が、これからの労働組合像のターニングポイントになることは、組合リーダーの間では公知のことです。
一方の組合員にとっても、今春闘が政・労・使の関係をあらわにした「社会契約的な取組み」という捉え方をすれば、
労働組合との関わり方を自分事として受けとめ考える好機となってくるでしょう。
しかし、労働組合に関わる多くの人たちの間では、「逆風だ!」「存在価値が吹き飛ばされる!」「組合員の組合離れが加速度的に進む!」
といったアゲンストのイメージが吹き荒れているようです。

本当にそうなのでしょうか? 時代の流れを俯瞰して捉えれば、労働組合が何か新たな価値を、社会に導入するフォローの風が吹いていることを
暗示しているようにも思えてなりません。
労働組合を「サイクル論」になぞらえてみると、過去の変遷は以下の通りです。

【導入期】戦後からの復興を労働者とともに支えた10年間。日本における労働者の権利として労働三権に則った労働運動の導入時期。
【成長期】高度経済成長とともに発展した20年間。日本的経営三種の神器の一つともいわれた日本独自の労使関係の基礎が築かれた時代。
【成熟期】オイルショックからバブル崩壊までの20年間。経済整合性を図りながら経済成長の状況を労使で睨みつつ労働条件の向上を獲得した時代。
【衰退期】バブル崩壊、金融自由化、ITバブル、リーマンショック、大震災などを経験し、企業の生き残りに対応した時代。
(「衰退期とは失敬な!」とお叱りを受けるかもしれませんがご容赦ください。)

この間に組合リーダーが経験し蓄えた知恵は今、どのような価値があるのでしょうか? これらの先人の知恵を活かしながらも、
労働組合がソーシャルキャピタル(社会関係資本)といわれるような社会的なポジションの確立に向けて導入するものは何か? を考えたいと思います。

労働組合は、今、社会的使命感をもって新たなブランド価値の創造に向けて再スタートする新たな「導入期」にきています。
そんな労働組合を応援する「導入期」に立ち、あるビジョンを描いてみました。それは「ユニオン大学」です。
「ユニオン大学」は、労働組合のブランド価値向上に貢献します。ブランド価値は、従前の労働組合への固定概念を壊し、新たな場や仕組みを生み出し、
人の成長をサポートすることで高まります。
当事者意識をもったプロフェッショナルである組合員が社会に貢献することで、労働組合を起点に世の中に好循環を生み出します。
また、「組合員」というポジションが社会の中で確立され、その他働く仲間に勇気を与えるリーダー的な存在になることを目指します。

これらのビジョン実現をバックアップする機能として以下の7つの活動サポートを考えています。

①組合リーダーが自由にアクセスし仲間や蓄積したデータから活動ヒントが得られる〝Q&Aサイト〟
②労働組合に関する基礎情報の統計や、活動の分析を担い労働組合専門に研究する〝ナレッジシステム〟
③業種を超えた他労組と交流し、活動の知恵を創発する執行部の学び場〝フォーラム〟
④職場リーダーが休日や就業後に他流試合でセンスを磨き、人間力を高める〝スクール〟
⑤組合員が自らの意志で参加し、コミュニティの重要性に気付き、企画・実践を通じて学ぶ〝スタディーツアー〟
⑥労働組合に関わる団体・組織が集まり、労働界の発展に貢献するためのシナジーを生む〝コンベンション〟
⑦ユニオン大学に集まるナレッジを独自視点で分析し、マーケットの姿を浮き彫りにする〝レポート〟

組合リーダーはもちろんのこと、職場リーダーや組合員とその家族、組合OBや経営者、地域社会、各教育関係者、などの方が
オープンな関係で関われるこのようなスペースやシステム、プラットホームの構築が21世紀の労働組合のブランド価値の向上に貢献できると考えます。

自分の役割を楽しむために
小林薫
2014/02/23
最近、新幹線の清掃会社TESSEI(テッセイと読みます)さんの話題をよく耳にします。仕事柄よく新幹線は利用するので、注意して見ていると、確かに熟練の技。スタッフ一人が一車両を担当し、短い停車時間の間にきれいに掃除されています。無駄な動きがありません。そういえば何となく働いている方々の接客も以前より良くなっているような印象です。

興味を持ったので本を読むと、会社を変えていった取り組みが書かれていました。筆者の矢部輝夫さんは、JRを定年後に現在の会社に異動し、「どうせなら楽しい会社にしたい」と考え、従業員が仕事にプライドが持てるよう、社内の昇進制度や制服のリニューアル、プロジェクトチームを発足してのサービスマナーの向上などに取り組みまれたそうです。当初は従業員からは様々な反発があったそうですが、「自分たちの商品は『掃除』ではなく、『旅の思い出』なんだ」と自分たちの役割を再定義することで、徐々に巻き込んでいくことに成功したそうです。

組合活動も正直なところ、イヤイヤ・渋々・順番が回ってきたから仕方なしに役割を果たす方が多いでしょう。でもどうせやるなら、「楽しい組合活動にしたい」と思って活動したいものです。組合活動の商品を再定義することが、前向きな活動への第一歩かもしれません。また、組合活動に限らず様々な業界での成功事例は「組合活動にも応用したらうまくいくかもしれない」と期待感を持たせてくれるエピソードです。「楽しい活動」にするためのヒントになりうるものではないでしょうか。

私も来年度、地域の学童保育の一部の役割を担うことになりました。やるなら「楽しい活動にしたい!」ということで、次年度以降にも、役に立てるようなやり方を工夫して、周りに貢献したいと考えています。

「第三の場」をつくろう
藤栄麻理子
2014/02/16
私事で恐縮なのですが、昨年秋に引越しをしました。
引越してみて意外だったのが「ご近所づきあい」があること。
地元でもない土地で、まさかご近所づきあいができるとは!と驚いています。
世代も仕事も趣味も違う方と、さまざまな交流ができるのは非常に楽しく有意義なもので、
素敵なコミュニティに仲間入りできて、つくづく「私ついてるな~♪」なんて思ってしまいます。

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、
「サードプレイス(第三の場所)」という概念があります。
アメリカの都市社会学者であるレイ・オルデンバーグ教授が提唱する概念で、
「家(第一の必要不可欠な場所)」でも「職場(第二の必要不可欠な場所)」でもない「場」を指し、
家庭や職場での役割から解放され、一個人としてくつろげる場所、一人ひとりの生活を支える場として
機能するものだそうです。サードプレイスの代表的な例として挙げられるのがフランスのカフェやイギリスのパブ。
オルデンバーグは「インフォーマルでパブリックな営みを促進する場」としています。
こうした空間での自由でリラックスした対話が、良好な人間関係を生み出し、都市生活を支えるのだそうです。

他者に強制されず、一人ひとりの自由な意思によって参加でき(インフォーマル)、
一人きりではなく他者とのかかわりがある(パブリック)活動。自分らしくいられる対話の場。
私がご近所づきあいで感じる心地よさは、こういった部分に起因するのかもしれません。
と同時に、このような場を提供するのに、組合活動はうってつけなのではないかと感じています。

同じ趣味を持つ組合員さんを集めたコミュニティづくりや
就業時間後のオフサイトミーティング活動、部門や職場を越えた横断的なコミュニケーションの促進。
考えてみると、たくさんの組織で「サードプレイス」づくりが行われています。

何かを決めるための会議や議論の場だけではなく、お互いを認め合う場、
情報交換・意見交換ができる対話の場づくりが、私たちの生活をよりハッピーにしていく土台になるのではないでしょうか。
仕事が終わったあとに、ふらり立ち寄って、ちょっとお茶をしながらおしゃべりをして帰る。
組合がそんなサードプレイスになれたら素敵ですよね?
私もそんな場づくりのお手伝いをしていきたい、とご近所さんとおしゃべりをしながら思うのでした。

参考:中原淳・長岡健『ダイアローグ 対話する組織』ダイヤモンド社

「組合の皆さん頑張ってください!」は褒め言葉? 自由記述の落とし穴
渡邉秀一
2014/02/07

 先日、ある書記長とお話をしている中で、アンケートの自由記入欄に「組合
のみなさん頑張ってください!」と書いてあったことにたいそう喜んでおられ
ました。
 アンケートの自由記入欄で「時代遅れ」「組合費が高い」「組合なんていら
ない」などと切ない文字列が並ぶ中、「組合のみなさん頑張ってください!」
は非常にホッとする温かい意見だったのだろうと思います。
 もちろん記入された方も素直な気持ちでそう書かれたものであろうことは推
測ができます。

 一方で、同じ様な意見を見たある委員長は、「我々だけが頑張るのではなく、
組合員みんなが一緒に頑張るもんだろう、ひとごとにしないでほしいなぁ」と
おっしゃっておりました。
 どちらが正しいという論議ではなく、読み手によって同じ内容でも解釈が
180度異なることがあるんだなと感じました。

 このように自由記入欄の記述というものは、受け取る側によってその内容が
肯定的なものなのか否定的なものなのかが大きく変わることがあります。
 我々の仕事の中でも自由記述をコード化してほしいという要望を受けます。
 もちろん、ある程度のまとめ方はできますが、全てが正しくコード化できる
かといえば、「だいたい」のレベルを超えることができないと思います。
 Aさんが「これは肯定的な2番のコード」となっても、Bさんが同じコード
に分けるとは限りません。
 やはり、その組織をよく知っている方がコード化するのが、最も正解に近い
のではないかと考えます。

 そこで私は、少なくとも三役は、書いてある自由記述は一言一句全て読んで
いただくことをお勧めしています。

 例えば、「組合費が高い」というコードに次の2つの自由記入が分けられた
としましょう。

  ①「くみあいひたかぁ~い!」
  ②「収支を見ると、会議費に出費が多すぎる、効率化を図るなどして
    節約してほしい。高い組合費を取っているのだから。」

 2つとも確かに「組合費が高い」と訴えています。
 でもこの2つの意見をどちらも「組合費が高い」で済ませてしまってよいので
しょうか。
 どんな意見が多かったか傾向を出すことも大切ですが、組合員一人ひとりの叫
びをしっかりと見て受けとめるのも必要ではないでしょうか。

 普段から組合に言いたいことがあってもなかなか言う機会がない方が、「アン
ケートの自由記入欄」を主張する場の一つとして考えていることもあるようです。
 せっかくの主張が正しく伝わるためにも、ぜひ自由記入欄を隅から隅までお読
みいただくことをお勧めいたします。
 ボリュームが多く、切ない文字列で凹んでしまうこともあるかもしれませんが…。



『ももクロ』に見る目標設定理論
依藤 聡
2014/02/02
■ももいろクローバーZとは

「ももいろクローバーZ」というアイドルグループ(以降、ももクロ)をご存知だろうか。
5人組の女性アイドルグループで、それぞれ赤・桃・黄・緑・紫と各自のイメージカラーが割り当てられ、
アクロバティックな踊りとインパクトのある曲でここ数年人気を博しているグループである。
なお、去年、一昨年と紅白歌合戦にも出場している。当誌を読まれている層には認知者やファンが少ないかもしれないが、
40代以上の男性ファンも結構いるという。私もこの1年でかなり執心している。
もっとも、ライブに行ってサイリウム(棒状のケミカルライト)を振ってコールをかけるほどではない、にわかファン程度であるが。
もちろん、にわかファンである私がここで『ももクロ』の魅力を語ることが目的ではない。
彼女たちの成長(=課題解決)のプロセスを見ていると、はっきりとした目標が設定され、
その達成のためのプロセスや周囲の協力が多分に見受けられるのである。その内容を論ずるのが本論の目的である。

■課題解決プロセスの具体例

彼女たちの成長(=課題解決)のプロセスの事例として、さいたまスーパーアリーナのライブまでのプロセスを挙げてみる。
これまで経験した倍以上のキャパシティー(収容人数)でのライブということであり、
当時(2011年)の人気を鑑みるとかなり無理のある設定であった。
そのため、彼女たちだけでなくマネージャーをはじめ周囲のスタッフも強く意識している状況で、厳しい指摘や指導を続けていた。
更に、さいたまスーパーアリーナでのライブを見越したプロトタイプのライブを行い、常にさいたまスーパーアリーナを意識させていた。
結果、素人の私が見ても(DVDでだが)大成功と思える内容であった。以降、ライブの告知を観客の前で行うようになり、
彼女たちにとって具体的で難易度の高い目標が常に設定されている状況にあった。
目標設定に関して言えば、結成当初から与えられている。彼女たちは結成当初、代々木公園で路上ライブを行っていた。
ファンも少ない状況では見に来る人も少ないので、ライブの認知をさせなければならない。
そこで彼女たちのマネージャーが彼女たち自身にビラ配布のノルマを与えた。
ノルマを果たせば、公園の屋台で売られているソフトクリームやたこ焼きを食べさせるというインセンティブを与えていた。
ノルマという目標↓達成インセンティブというシステムには慣れていることが分かる。

■目標設定理論とは

ここで、目標設定理論について説明したい。目標設定理論とは、目標という要因がモチベーションに及ぼす効果を把握することを目指した理論で、
1968年にアメリカの心理学者ロックが提唱している。当理論では、目標設定の違いがモチベーションの高低を規定すると考えられている。
本人が納得していることを前提とした上で、より明確で難易度の高い目標を設定すると結果としての業績は高いことが確認されている。
さて、現状になぞらえてみると、目標設定直後(ただし、彼女たちへの一方的な通告である)の納得度合いは高そうには見えないが(ライブDVDで確認できる)、
徐々に納得している様子が見て取れる。そして、いつどこで何人収容するライブを行うかという明確な目標があり、
前回の目標を更に上回る収容人数のライブを行うというより難易度の高い目標となっている。

■周囲の協力の重要性

これら一連の目標は彼女たちが設定したものではなく、彼女たちのマネージャーが設定している。
代々木でのビラのノルマから彼女たちに目標を与えてそれを達成させることを重要視しており、目標の達成を重ねることで彼女たちの成長・成果に繋げている。
先述したように、彼女たちの楽曲振付師やステージ演出家も彼女たちの目標達成に向けて厳しい言葉や指導を与えていることを目にすることができる。
つまり、当人たちのモチベーションだけでなく、周囲の協力や指導が目標達成に対してより効力感を増していることが分かる。

以上のように目標を設定する重要性が垣間見られたと思うが、私としては周囲の人の協力・指導も非常に重要だと考える。
経験の浅い成長途中の従業員は、目標達成への効力感と達成へのモチベーションもともに低いことが考えられる。
その時には上司・先輩・同僚が達成に向けての助言・指導を行うことで効力感が高まり、更にチームワークの良化が期待される。
実際、一連の目標達成によって、彼女たちの効力感は非常に高まり、彼女たち同士やスタッフとのチームワークは非常に良好になっていく。
企業内における目標管理制度の運用のヒントが『ももクロ』からも垣間見えるのである。

「伝えたい言葉」と「伝わる言葉」
佐々木 務
2014/01/26
いろいろな場面で人は相手に「伝えたい思い」があります。
組合員にこんな思いを伝えたい。経営陣にこんな思いを伝えたい。
そんなときに自分たちが「伝えたい言葉」をとにかく並べる。
ちょっと一方的になってしまうことはありませんか?

大事なことは「伝えたい言葉が並べてあるか」ではありません。
伝えたい思いが「伝わる言葉になっているか?」です。

実は私がいつも求人サイトなどの表現で反省する事です。
採用責任者として、この時期に学生向きの文章を考える機会が
多くなりますが、ついつい自分たちの言葉で伝えたい言葉だけを
並べてしまいがちです。

例えば「情報宣伝」という言葉を当社では当たり前のように使います。
しかし組合活動など全く身近でない学生にはほとんど通じません。
そんな時「広報」という言葉に置き換えた表現にするのですが、
「情報宣伝」を使い慣れている私たちの感覚では、最後まで違和感が
残ってしまうことになります。
しかし、これから当社や労働組合を知ってもらおうという学生には
それで十分なのです。

必要なのは発する側が満足する「伝えたい言葉」が並んでいること
ではありません。
その文章で伝えたい思いが、受け手にとって本当に「伝わる言葉」
になっているかどうかです。

そのためには、受け手の立場や理解度を想像する。
相手を思いやる心が不可欠であり、非常に難しい行為です。
コミュニケーションの基本であると分かっていながら、
なかなかできないことではあります。

BtoCのサービスでアルバイト経験をした事がある学生はいても、
オフィスでBtoBの職場を経験した事がある学生などごくわずか。
実体験が乏しい学生が想像する職場は、テレビドラマで見るような
オフィスのイメージでしかないかも知れません。

そんなことを考えながら書いている私の拙い文章ですが、
私の伝えたい思いはみなさんに「伝わる言葉」になっているでしょうか?
自分自身まだまだできていないなと感じる今日このごろです。

労働組合とオーケストラ
綱島
2014/01/19
最近、オーケストラのコンサートを聴く機会が増えてきました。
先日もモーツァルトやシベリウス、そしてヨハン・シュトラウスの楽曲に耳を傾けながら、コンサートホールで週末を過ごしていました。
最近でこそ少しずつ、このような機会が増えてきたものの、元来私はクラシック音楽とはほとんど縁のない人間でした。そんな私がコンサートホールに足を運ぶようになったきっかけは昨年の10月、ある交響楽団のマネジメントスタッフの方から組織論の観点からオーケストラについてお話を聴く機会があったからです。そのお話を通じて、私は企業とオーケストラの共通点と差異に興味を持つようになりました。

その際の演目はグスタフ・マーラーの交響曲第9番。マーラーは19世紀後半から20世紀初頭のウィーンで活躍した音楽家です。交響曲第9番はマーラーの晩年に書かれた作品で、モーツァルトなどの古典的な作品と比較すると交響曲として複雑な構成となっています。実際、当日の演奏家は約80名にものぼりました。これだけの規模になると、オーケストラの左右の両端ではお互いの奏でる音を聴くことはできないそうです。そして、交響曲は複雑になればなるほど楽器ごとのパート譜は独自性を持つようになります。指揮者は全体を把握することができるスコアを見ながら、指揮をとりますが、演奏家は自身のパート譜を見ながら演奏を行います。こうした状況、つまり複数の人間による複数の役割とその複雑な組み合わせの中で、ひとつ作品と感動を観客に届けるということが、コンサートホールにおいてオーケストラが行なっていことなのでしょう。

こうしたことは企業に務める私たちの組織にもよく似ています。
労働組合の役員の方々からよく耳にする言葉で「組織内でコミュニケーションが取れていないことが課題だ」「コミュニケーション不足でお互いの仕事が理解されていない」「自部門の都合ばかり優先されており、全体の最適が考えられていない」というものがあります。現代の企業活動もその複雑を増しています。その姿はまるで複雑な交響曲を奏でるオーケストラのようです。そして、どんなに組織が複雑になり、多種多様な部門構成になったとしても、ひとつの企業としてマーケットに価値あるサービスを届けるなければならないことも共通しているのではないでしょうか?

多くの労働組合は、現代の企業活動が抱える課題に対して、組織内に横串を指すような活動を通して会社に貢献しています。実際、労働組合の会議は部門横断的なコミュニケーションの場そのものです。私は最近、労働組合の活動はオーケストラのリハーサルに似ているのではないかと考えています。オーケストラは本番を迎えるまでの間にたくさんのリハーサルをこなします。リハーサルとは単純に言えば音合せです。コンサート本番でひとつの作品として観客に感動を届けるために各パートが音を合わせていくプロセスです。労働組合が行っている部門横断的なコミュニケーションと似ていると思うのは私だけでしょうか。

鏡を通して自分の姿を見るように、オーケストラを通して労働組合や企業の活動について理解が深められることはまだまだあるのではないかと考えています。
みなさんもコンサートホールへ足を運んで見てはいかがでしょうか?

人を成長させる3つの要素
伊東
2014/01/12
リーダーシップ育成機関として知られるアメリカの調査教育会社ロミンガーの行った調査で、
興味深い結果が出ていました。

優れた経営幹部たちに「リーダーとして成長するための学びをどこから得たか?」と聞いたところ、
7割が仕事上の「経験」、2割が他者からの「薫陶(くんとう)」(上司や顧客、取引先からの影響)、
そして1割が「研修」という結果でした。

これを見て、「リーダー育成にはやはり実践の経験が最も大事だ!」
「研修はそれほど意味がないんだな……」と考えるのはせっかちというものです。
確かに経験は何にも勝る学びですが、それだけでは優れたリーダーを育成していくことはできず、
薫陶も研修も欠かせない要素だからです。

経験は現場でのトライ&エラー、薫陶は上司や目上の人から伝わるメッセージ、
研修は新たな視点や知識の会得といえます。

ここで意外と重要なのは薫陶かもしれません。人は身近な模範となる上司や先輩を見て
育つことが多いものです。したがって、人材を育成していくためには研修の機会を設けるだけでなく、
「この経験や研修に何の意味があるのか?」「リーダーとしての想いや信念」「自らの経験や知識」を
薫陶として伝えなくてはいけません。

人は「経験させておけば勝手に成長する」というものでもありません。
薫陶を与えるうえでは、リーダーにも大きな責任があります。経験を正しい成長に変えるには、
経験の捉え方から教える場合もあるでしょうし、研修で学んだものの見方や知識を正しく活用できるよう
サポートする場合もあるはずです。

自分の組織で経験・薫陶・研修を適切につなぎ合わせ、リーダーを育成できる人を育成していくことが、
組織として中長期的に成長していける強いチームづくりにつながります。

もしあなたがリーダーならば、今年の抱負として「周囲に薫陶を与えること」を加えてみてはいかがでしょうか。