ゆにおん・ネタ帳

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2015年

統計的な数字は「わかりやすい」が一番!
渡辺 秀一
2015/10/09
 ある調査から、以下のような結論が導き出されました。


    高速道路に入り走行距離100km未満、時間にして約1時間以内』
   の場所で死亡事故が約5割発生。
    このうち、約27%が居眠り運転や考え事などの漫然運転による
   もの。


 これを読むと、「ああ、高速道路は、乗ってから1時間以内を注意して運転
しないといけないんだな。」と考える人が多いでしょう。
 安全運転にこしたことはなく、こういった啓蒙活動は我々の生命や財産を守
るために必要なことですので、もちろん正しいと思いますし、わかりやすい数
字は多くの人へ働きかけます。

 ただ、へそ曲がりの統計的な観点から見ると、ちょっとだけ「?」となる部
分もあります。

 この調査結果には、次のような集計結果が載っています。

   【第一当事者の高速道路走行距離別の死亡事故件数】
        100km未満  50.1%
        300km未満  27.2%
        500km未満   7.5%
        500km以上   4.8%
        不明       10.5%
        合計      100.0%

 表現は資料のままで、「事故を起こした車の中での割合」としてはわかりやす
い数字で全く間違っていません。

 が、そもそも事故を起こす起こさないに関わらず、それぞれのキロ数を走って
いる車の台数(母集団)の割合はどうなっているのでしょうか。

 平成21年の統計ですので若干古いものですが、小型車、大型車を問わず高速
道路の平均走行距離は、平日で45km、休日で60kmという統計があります。
 ばらつきはありますが、高速道路の走行距離は100km未満が圧倒的に多い
ということになります。
 つまり、100km未満の走行距離の台数(母集団)が多いので、「100km
未満を、無事に事故を起こさず走った車の割合」も高くなると考えられます。
 台数(母集団)の少ない300kmや500km走っている車が各母集団に対し
て事故を起こしている割合はそれぞれ何%くらいなのでしょうか。

 ならば、どのような表現を使ったほうがよいのでしょうか。
 それぞれの該当する台数を明らかにした上で「100km未満の走行距離の車
の中で事故を起こした割合は○○.○%」「300km未満の走行距離の車の中で
事故を起こした割合は○○.○%」「500km未満……」をそれぞれ計算した上
で、その最も高い数字のキロ数を「危険」としてみてはいかがでしょうか。


 こんな重箱の隅をつつくようなことが癖になっている自分は、つくづくへそ曲
がりの統計屋だなと思います。


 ただし、これだけは真実です。
 高速道路に入ったら早目に休憩し、体操したり、コーヒーを飲んだり、ガムを
かんだりしながら心身のリフレッシュをするとともに、交通マナー、ルールを遵
守して運転することが大切です。

 秋の行楽シーズンです。
 皆さんも有給休暇を取ってドライブ旅行に出かけませんか。
 でもその際は、最近かっこよくリニューアルされているサービスエリアで休憩を
取って、安全運転を心がけてください。

 私は「サービスエリア巡り」結構好きです。



誰もが希望を持てる世の中にしよう
大川 守
2015/10/04
「希望学」が誕生した背景

かつての幸福論では、前提として人々が夢や希望を抱くのは当然であるという考え方が土台にあったそうだ。誰もが現在と比べて「すばらしい」未来を思い描き、それらを手にしていくことこそが幸せだと考えられてきたわけだ。
2005年に東京大学社会科学研究所で本格研究が開始された「希望学」プロジェクトでは、玄田有史教授らが中心となって従来の幸福論とは異なった概念で「そもそも希望とは何か?」について捉え直している。「希望の社会科学」(”Social Sciences of Hope”)という正式名称と共にその研究の要諦を知ることは、私たちにも有用なのでご紹介したい。
・希望の社会科学では個人が持つ希望を社会環境から影響を受けるものとして捉える
・個々人の持つ希望が社会に与える影響についても研究対象としている
・コミュニティ内の人間関係が希望の実現にどのように影響するかを調べている
これらの研究は古くからの膨大な調査データや複数のアンケート、さらに地方小都市での社会調査を基に進められ、意義ある研究成果が複数の書籍等で紹介されている。
希望学誕生のきっかけは、多くの人々が前提としていた「希望」が崩壊し、「努力することが必ずしも報われるわけではない」、「欲しいモノが手に入ることだけで幸せになれるわけではない」といった価値観が急速に広まったことと無縁ではないようだ。

「希望」とは何なのか?

希望学では次のように「希望」の意味を定義している。「希望とは、行動によって何かを実現しようとする気持ち」“Hope is a Wish for Something to Come true by Action.”つまり、「希望」とは4つの要素から構成されていることになる。
①「行動」→これが伴わなければ単なる願望。周囲任せ、運任せになる。
②「何か」→希望も多様化の時代。「何か」には具体性が必要。
③「実現」→具体性のある希望だからこそ、実現のための行動が規定される。
④「気持ち」→思い。意思。そしてそれらの強さ。
幸福だと感じている人、やりがいを感じている人は、これらの4要素を兼ね備えた「希望を持つ習慣がある人」だということを明らかにしている。
もちろん個人が持つ希望は、事の大小や実現への期間、難易度もさまざまだ。しかしここで重要なのは、希望が実現した(思い通りになった)から幸福になれるわけではなく、むしろ挫折経験が多い人ほど幸福を感じる割合が多いという事実だ。
つまり、大きい希望を持つからこそ挫折も経験し、その経験からより良い学びを得て次なる希望へと人生を充実させていると言える。

「幸福」とは守りたいもの。「希望」とは手に入れたいもの。

労働組合として、組合員の雇用・労働条件に関して「安定・安心感」を求めることは当然だといえる。しかし、問題の本質は「安心感」は幸福の必要条件だが十分条件にはなり得ないということだ。安心感を得たいという気持ちが強いほど、不安に陥る傾向が強いことも明らかである。現代は若年層も中高年層も将来不安が大きい時代だといわれるが、これは一定水準の生活レベルや今の幸福を守り続けることへの不安ではなかろうか。
反対に経済状況が劣悪で生活水準が低くとも、地道な努力で少しずつ充実していくという見通しや実感があれば、「希望」が得られ幸福感に満たされることも多いであろう。極端な例だが、発展途上国の子供たちも学校に通うことができ、治安が安定した世の中であればイキイキと輝いた笑顔になれることも多い。やはり「希望」とは、自分自身の行動がより良い状態へ導いてくれると信じられることで、そのことが幸福感につながっていくものだと考えられる。

「希望」の実現、継続には周囲との関係性も重要

前述のとおり、希望はその実現性以上に「希望を持てている状態」そのものが幸福感につながりやすい性質がある。そして希望の社会科学(希望学)では、特定のコミュニティにおける人間関係も「希望」を持ち続けるためには重要な要素だと指摘している。したがって、地域に関することであれば都会より地方が優位であり、生活面では独居者より家族同居者が優位だという調査結果となっている。
はたして仕事に関してはどうであろうか。職場の関係性はどのような影響があるのだろうか。みんなが希望を持ちつつ働いていくためには、支えあう仲間の存在が重要なのだろう。
国政や地方行政はどうか。より良い社会の実現を希望し続けるためには、地域や職場の仲間といった自分の関わるコミュニティと関係性を深めることが重要なのだろう。
偉い人にはそれがわからんのですよ
佐々木 務
2015/09/27
もうすぐ10月1日、内定式の季節です。いろいろなところで話題になっているので皆さんもご存知かと思いますが、今年度の大学生の就職活動は解禁(就活開始)時期が後ろ倒しとなり、学生も企業も非常に混乱していました。

昨年度の就職活動は「3年生の12月解禁、4年生の4月選考開始」でしたが、これを「3年生の3月解禁、4年生の8月選考開始」と後ろ倒しに変更したのです。

就職活動の見直しは安倍政権が経済界に要請し、これに応じた経団連が指針を定めたものでした。

大義名分は「学業に専念する時間を増やす」ということ。就職活動の長期化を防ぎ、学生が学業に専念する時間を増やしたいという大学側の強い意向を踏まえ、政権が動いたものです。

しかし、経団連が打ち出すこの就職活動に関する指針は、加盟企業に限った申し合わせであり、大手企業でも非加盟の企業や中小企業などが縛られるものではありません。
また、表向きは指針を守っていても、インターンシップやセミナーが、実態としては選考の場になっているという指摘もあります。

実際に大義名分の狙い通りに学生が学業に専念する時間が取れたのかというと、大学側の6割が就職活動期間の長期化を指摘し、半数が前年度に比べて「授業の出席状況」「卒論指導」などに支障が出ると見ています。学生も大半が4月から採用面接を受け始めたと回答しており、就職活動の短期化は狙い通りにはいかなかったようです。

なぜ、こんな事になったのか?もともとこのような状況になる事を心配する声も上がっていたはずですが、政権や経団連、要請した大学側も、経団連の申し合わせスケジュールさえ変更すれば、多くの企業や学生の動きをコントロールできるはずだという驕りがあったのではないでしょうか?

「経団連の申し合わせが後ろ倒しされれば、非加盟企業や中小企業も後ろ倒しするに違いない。」「学生の行動期間も少なくとも以前よりは短くなり、学業に割く時間が持てるはずだ。」
机上の空論とまでは言いませんが、現場の実態、学生や企業側の本音や、実際にスケジュール変更した場合に起こりうる様々なケースに考えが及んでいなかったとしか思えません。

政治でも組織でも、トップで大きな意思決定をする人たちは、現状を打破するために、分かりやすい大きな方針変更を打ち出せば、人々はそれに沿った行動をとるはずだという安易な考え方に陥りがちです。間違った単純なイメージや既成概念、自己の経験にとらわれ、現場でその方針変更を受け入れたときに、どのように反応し、行動するのかという事までは思いが至らないのです。

もちろん全てがトップの責任というわけでもありませんが、現場の実態や本音の声はもっと聴くべきだったのでしょう。
同時に現場の人間たちには、現場の声や実態をトップに届ける努力が必要です。いやその責任があると言ってもいいかも知れません。

今回の件では、経団連非加盟の企業や中小企業、就職活動に関わる全ての人たちがもっと警鐘を鳴らすべきだったのだと思います。
偉い人たちには現場のことはわからないのです。労働組合のような現場を知る存在が、経営に現場の声を届ける役割はとても大事なことなのです。

早くも経団連はスケジュールを元に戻すことも含め、見直しを検討しているようですが、その年の学生にとっては一生に一度の機会です。
何よりも彼らのために、もっと慎重に現場の実態を考えて決定して欲しいものです。


ものづくりの町で思うこと
綱島 廣太郎
2015/09/20
今年の4月から勤務地が変わり、弊社の名古屋支店に勤務しています。

千葉県に生まれてからこれまでに何度か転居を経験していますが、関東を出て暮らすことはこれが初めてです。
初めての転居は小学校6年生の4月でした。転居先は同じ市内でしたが、学区が変わったために転校をするこ
とになりました。同じ市内の小学校への転校でしたが、初めての経験に当時は随分と戸惑ったことを覚えてい
ます。戸惑いの原因は、教師と生徒の間にある距離感や生徒同士の休み時間の遊び方など極めて些細な違いにありました。こ
れまで慣れ親しんできた教室内の暗黙のルールは、どんな小学校でも共通である訳ではなく、別のあり方もあり
得ること自体に私は戸惑っていたのでした。しかし、この戸惑いは同時に新鮮な驚きでもありました。小さな
異文化体験に当時の私は心を躍らせていたことも事実です。

あれから数十年が過ぎた今、私は転勤をきっかけとして再び戸惑いながらも新鮮な驚きを実感する毎日を過ご
しています。愛知県は日本を代表する世界有数のものづくり産業の中心地です。産業の中心地にはもちろん働
く人々がいて、労働組合とその活動があります。世界でここでしか見ることができない風景があります。今日
も1万人を超える組合員全てが参加する職場活動を展開する労働組合の職場委員研修に参加してきました。こ
こでその活動を詳らかにすることはできませんが、激化するグローバリゼーションの中でも世界を牽引するもの
づくりの現場を支える組合活動の力強さを垣間見た気がしています。

転校も転勤も自分で選ぶものではありません。多くの場合において転校は両親の都合であり、転勤は会社都合
です。これらは自分で選ぶことができないという意味において、いつ自分がどこに行くのかを偶然に左右され
ている出来事でもあります。しかし、一つの場所にとどまっていたにせよ、仕事には多かれ少なかれ変化がつきも
のです。そして、そうした変化は予期せぬタイミングで個人に降りかかり、戸惑いと新鮮な経験をもたらすも
のです。

こうした偶発的な出来事を学びと成長の機会に転換することを重視するキャリアカウンセリングの概念にJ・
D・クランボルツの計画的偶発性理論があります。計画的偶発性理論においては、私たちのキャリアにおいて
偶然が果たす役割が大きいとされています。確かに偶発的に訪れる変化がしばしば私たちを成長させることが
あるという主張は、私たちの経験的な直観に照らしても納得できる面があります。しかし、この理論の興味深
い点は、こうした偶発的な変化を経験する私たちの態度に示唆を与えている点です。

計画的偶発性理論によれば、偶発的に訪れる変化を学びと成長の機会にできるか否かは5つの条件、具体的に
は「好奇心」「持続性」「柔軟性」「楽観性」「リスクテイキング」に関わっているとしています。つまり、
偶発的に訪れる変化を戸惑いの中でも興味を持って受け止め(「好奇心」)、うまくゆかないことがあっても
努力を怠らず(「持続性」)、新しい環境や条件の中で過去のやり方を見直せる勇気を持ち(「柔軟性」)、
新しい事態の中でも過剰に不安に陥らず(「楽観性」)、どうなるか分からないという不透明さの中でも行動
できる(「リスクテイキング」)という態度が大切だとしています。

今、グローバリゼーションの中で日本のものづくりの現場も変化をしています。そして、その変化の真っただ
中に労働組合の活動もあります。こうした変化の多くは働く一人ひとりの組合員にとっては、予期されたもの
というよりは偶発的な変化として訪れ、戸惑いと不安をもたらすことも少なくはないでしょう。だからこそ、
学びと成長の機会に転換するためのこれからの組合活動のあり方について、組合役員のみなさんと共に持続的
かつ柔軟に考え続けていきたいと思います。
似ているけど違う
伊東
2015/09/13
普段は東京で勤務しているが、仕事でさまざまな都市に行く機会がある。

飛行機でも新幹線でもバスでも、幸いにも長距離移動は苦にならないし、
初めていく駅や町に行くのは新鮮な気持ちになれるので、少し楽しみにしている。


なお本題から離れるが、最近で印象的だった景色は
「日本三大車窓」(その存在を電車に乗ってから知った)のひとつ、
長野県にあるJR篠ノ井線「姨捨駅」近辺の眺めだった。

非常に雄大な景色で、電車も心なしかスピードを落として走ってくれるらしい。
http://is.gd/VIf6S6


さて日本中の組合役員の方と話をしていると「おや、前にもこんな話をしたな」と感じることがある。
業界も違うし場所もかけ離れているのに、である。

どうやら、組合役員が感じている組織の課題や、取り組んでいる活動に関する悩みは、
ある程度ではあるが日本全国どこでも似ている。

そう思うと、弊社が毎月開催している“現場知フォーラム”が毎回盛況をいただいているのも良く分かる。
毎回さまざまなテーマで、ゲストスピーカーの組合リーダーに講演していただき、
その話を受けてグループごとに話し合う会合である。

http://j-union.com/-/pands/html/page.php?cd=31971

業種業界、住む土地は異なるが、似たような課題を抱えた組合役員が集まり話し合うことで、
ある種の仲間意識を感じることもできる。(ひとことで言うと「どこも一緒なんだな」という思い)

ただ似たような課題を持っていても、解決に向けたアプローチはさまざまである。

その違いを共有できるのも現場知フォーラムの良いところであり、
その違いを認認することで、自分たちは他と違う「らしさ」を持っていることを
発見できるのも良いところである。


そういえば大都市の駅はどことなく似ているようにも思う。
駅を東西または南北に通る連絡通路、直結する駅ビルや百貨店、といった具合に、
構造が似ている。

だからこそ、歩いていてその土地「らしさ」を感じるものを見つけると嬉しくなり、
大事にしたくなるのである。

引き受け
服部 恵祐
2015/09/06
「やってみせ 言って聞かせて させてみてほめてやらねば 人は動かじ」
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」
「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」

有名な連合艦隊司令長官山本五十六の言葉である。
人材育成に携わる身として、未だこれ以上の人材育成の名言に出会ったことがない。
部下の育成に正対して悩み、苦脳された者からしか紡ぎ出されない箴言である。
山本五十六元帥が生まれた新潟県長岡市へ出張の機会を得たので、山本五十六記念館と生家跡まで足を運んでみた
(筆者は、隣国に緊張感を与える軍備拡張、まして集団的自衛権を全く支持しておりません。無差別に人を殺傷する戦争は、
いかなる理由があろうとも反対です。念のため)。
長岡市は北越戊辰戦争で敗れ、藩の財政が紛糾していた豪雪の地。「最後のサムライ」河井継之助、「米百俵」の小林虎三郎など志ある人物も輩出している。
経済的困窮が精神性の高い人格者を生むのは歴史の教訓でもある。

父親が56歳(母45歳)の時に生まれた子であり、復元された生家も質素で狭小な家であった。
当時、優秀な者しか入学が許されなかった江田島(海軍兵学校)を卒業し、その後海軍エリートとしてアメリカなど諸外国を視察。
世界情勢にも詳しく、日本の世界における状況を冷静に俯瞰できる稀有な軍人であった。
アメリカとの戦争に勝ち目がないことを熟知し、日独伊三国同盟・太平洋戦争に最も反対した。
そのため当時威勢がよかった陸軍や右翼から命を狙われたが、遺書を書きつつ持論を曲げることはなかったそうである。
しかし、自分の意思と反する太平洋戦争が東條内閣(陸軍大臣から1941年に内閣総理大臣就任)で閣議決定されれば、軍人としてこの戦争を最も引き受け、
連合艦隊司令長官として最前線に立った人物でもある。個人の意思とは真逆の組織決定の狭間においてさえ、全てをのみ込み、全てを引き受けた人物、
それが山本五十六という人物である。

石油も武器も圧倒的優位にあるアメリカとの長期戦では勝ち目がないことを見抜き、真珠湾攻撃という短期決戦を立案した戦略家でもある。
元帥は、1943年4月18日にブーゲンビル島上空で戦死している(その時に乗機していた機体の実残骸は、今尚、記念館で過去と今を繋いでいる)。
その後、日本人だけでも300万人の尊い命を失くした太平洋戦争は、1945年8月15日に終戦。

それから70年を経て世界有数の経済大国になった日本。モノが溢れ、自分らしさと自分勝手の区別さえつかなくなった豊饒な物質社会で、
正しいがさもしい権利主張と義務からの意図的無関心に陥ってはいないだろうか。周囲への「引き受け」だけが深海の底に沈んでいく。
そこに在るのは、真面目で優秀だが無縁な世界。

私たちは、これからどんな世界に住み、どんな働き方、生き方をしたいのだろうか。
そのために何を「引き受け」たいのか。「引き受け」ねばならないのか。

戦争を実体験している戦前派や戦中派が鬼籍に入る中、戦争を知らない戦後派為政者が虚勢を高らかにあげ始めた。
私たちは、有権者として何も「引き受け」ず、政治屋(=国民や未来のことを考える政治家ではない)に白紙委任状を渡してしまってはいないだろうか。
手っ取り早く楽して儲けたい株主資本主義者の相棒と成り果てたROE至上主義経営屋に、労働組合として雇用課題も「引き受け」られず、
誤った経営対策活動をさせられてはいないだろうか。

私たちは、未来の子どもたちに対して、今、何を「引き受け」ているのだろうか。

これからの70年、日本人は、労働組合は、私は、世界にまず何を「やってみせ 言って聞かせ」られるのだろうか。
最後に、元帥のもう一つの言葉。
「苦しいこともあるだろう。云い度いこともあるだろう。不満なこともあるだろう。腹の立つこともあるだろう。
泣き度いこともあるだろう。これらをじつとこらえてゆくのが男(人)の修行(引き受け)である。」


女性とは、一緒に働きにくい???
加藤瞳
2015/08/30
4月から、女性組合役員のための人材育成プログラム「美脳塾(全4回)」を
スタートさせています。
※詳細は下のカリキュラムをご覧ください。

予想以上に好評をいただき、第2期を10月から実施することにしました。
開催まで2ヶ月程ありますが、あと8名で定員締め切りとなってしまうほどの
盛況ぶりです。
(冒頭から宣伝色が強くすみません…ですが、好評なのは事実です!)

1期生から紹介されて第2期に申込された方もおり、人に勧めたくなる内容
だと感じてもらえているのではないか、と思っています。
参加者の「勉強になるよ」「美脳塾に参加するのが楽しい!」という反応や、
組合役員を担うことを肯定的に捉え、「来期も組合役員を継続する」といった
声を聞くと、企画に携わった1人として組合活動に微力ながらも貢献できて
いるのでは、と嬉しい気持ちになります。

さて第1期は全4回のプログラムのうち、3回目が終了しました。
その3回目のプログラムのひとつに「ロジカルシンキング」があります。
それは男性役員が大多数を占める組合組織の中で、論理的な発言力、提案力
を身につけることをねらいとしたものです。

冒頭に講師より衝撃的なデータを提示したのですが、それは男女ともに
「女性とは働きにくい」と感じているというものでした。
「男性と女性、一緒に働きやすいのはどっち?」という問いに対し、男女ともに
約50%は「どちらともいえない」、つまり性別による違いは意識していない
と答えています。
しかし男性の43.8%%は男性との方が働きやすいと回答し、わずか5.7%が
女性との方が働きやすいと答えています。
では女性はどうかというと、男性と同様の傾向が見られ、40.6%の人が男性
との方が働きやすく、7.5%の人が女性との方が働きやすいという回答でした。
(『日本経済新聞』2015年4月18日)

主な回答理由には、「男性の方が気をつかわない」「男性の方が上下関係をわき
まえており、女性は感覚や感情での好き嫌いが優先するように思える」といった
ものがあり、男性中心の職場・会社・組織で女性と働くことに慣れておらず、
今までのビジネス習慣が通じる相手と働きたいと考える人が多いことがうかがえ
ます。

これは職場での働きやすさを調査したものですが、組合活動にも当てはまる意識
なのでは、と感じています。
女性の活躍が進む中で組合にも女性役員が増えましたが、お互いに意志疎通に
壁を感じているのではないでしょうか。
講師からは「女性は必ずしも非論理的というわけではない」という話もしましたが
講義を終えて、多くの参加者がなぜ自分の意見が組織に伝わりにくいのか、
気づいたようでした。
男女双方が円滑に働いていくために、組織に理解されやすいコミュニケーション力
を身に着けていくことが必要だと、痛感しています。


いよいよ9月9日が最終回となります。
最終回はプログラム内で企画をした「女性の声を集める・女性同士の繋がりを強化する」
というテーマでの取り組み(正確には女子会)の報告をしてもらいます。
人を集めるためにどのような工夫をしたのか、どういった声が挙がってきたのか、
組織にどう良い影響をもたらしたのか、発表が今から楽しみです。
そこで共有される情報がお互いに良い刺激を与え、またそれを各組織に持ち帰る
ことで組合活動の活性化に繋がるのではないかと思っています。

最終回は私たち企画側からのサプライズ企画もあります。
参加者の喜ぶ顔や涙するところを見られるのではないか・・・と今からワクワクして
います。
ネタバレしてしまうので詳しくお伝えできないのが残念ですが、また何かしらの形で
お伝えします!


※美脳塾カリキュラム詳細



※1期生の皆さん




「思い」を伝えてモノを売る
細越 徹夫
2015/08/23
 最近、我が家ではお掃除ロボットを購入しました。
我が家は、猫一匹と家内と私の3人家族ですが、ネコ君を放し飼いにしている
こともあり、猫の抜け毛対策のお掃除はかかせません。
日々の掃除は私の担当なのですが、猫の抜け毛シーズンになると頻繁に掃除を
しなければならず、何かいい方法はないものかと以前から考えていました。
そんなある日、家内と部屋の掃除のことで話をしていると、「新しい掃除機を
買ったら掃除を手伝ってやっていいいよ」と、何ともラッキーな発言を引き出
したのでした。我が家の掃除機は10年以上前に購入した旧式のゴミパックタ
イプで、アレルギー体質の家内はゴミパックを交換しないといけないことや、
掃除機から出る排気に抵抗があったようなのです。新しいタイプならそんな問
題も解決するので、家内の手伝ってもいいという発言につながったのだと思い
ます。そこでこの機会を逃すものかと、直ぐに勇んで近所の家電量販店に掃除
機を購入しに出かけたのでした。

 はじめのうちは、普通の掃除機を購入することを念頭に、今はやりのD社のサ
イクロン式掃除機にしようか、それとも他メーカー掃除機にしようか迷ってい
ました。家電量販店に入り、掃除機コーナーで普通の掃除機をいろいろ比較し
ていたのですが、そのコーナーの担当者がS社の掃除機を勧めてくれました。
いろいろ丁寧に説明してくれただけでなく、思い入れのある説明でした。
その対応に、ほとんどそのお勧め掃除機を買おうと思っていたのですが、他コ
ーナーの商品も購入しようと考えていたので、「後で来ます」とだけ伝えて売
り場を離れました。

その後、掃除機コーナーに戻ってみると、先ほどの担当者が休憩に出た後で、
隣のコーナーから年配の女性店員が代わって接客してくれました。その時、何
気なく女性のいた元のコーナーを見るとロボット掃除機のコーナーでした。
折角だからと、その女性店員に頼んでロボット掃除機のデモを見せてもらうと、
商品知識にたけた熱い説明をしてくれるのです。
この時、すでに普通の掃除機を購入するつもりだったので、あくまで興味本位
で見るだけ見せてという感覚でした。
私が段差があっても大丈夫?とか、2cmの高さでものり越えらえるの?、ど
のくらいの吸引力なのか?ネコ毛は吸い込むのか?とか・・・疑問に感じてい
たことをつぶさに質問します。それでもその女性店員は私の興味本位の質問に
快く説明してくれ、デモと共にロボット掃除機のあるライフシーンを説明して
くれました。
「この掃除機は音声で動いてくれるんですよ。掃除ってきれいにするというだ
けじゃなくて、掃除自体が楽しくなるように、ロボットが会話もするんです。
あまり必要じゃないかもしれませんど、ロボットを動かすのが楽しくなります
よ・・・」まさに「商品を売っているんじゃない、夢を売っているんだ」とい
う言葉が思い出されました。

その説明を聞いているうちに、冒険かもしれないけれど「ロボット掃除機」を
試してみようかという気持ちになってしまったのです。
冒険というのは、本当に実用に耐えうるか「ロボット掃除機自体」を信用して
いなかったからです。しかも、説明してくれた機種はS社のコ○ロボくん。ロ
ボット掃除機といえばル○バでは?と思っていたのですが、その女性の商品へ
の思いがこもった熱心な説明に心が動かされてしまいました。

いまコ○ロボくんは、我が家で大活躍です。本当に買ってよかったと思ってい
ます。家内も音声で「コ○ロボくん。起きて」とか「きれいにして」と楽しん
で掃除してもらっています。しかも、掃除した後の部屋の空気がとてもすがす
がしいような気がします。イオンのせいでしょうか。
なぜか、あまり必要でないと思っていたオプション機能が意外に楽しいお掃除
ライフにつながっているようです。
まさに、女性店員さんが話してくれた夢を買えたことと、モノを売るというこ
とを改めて気づかせてくれたことに感謝したいと思っています。


個性を活かした人材育成ができていますか?
渡邊祐
2015/08/16
異なった特性を持つ二人の組合役員がいたとします。
皆さんはどちらの役員が優秀だと思われますか?

■定量的な観点を重視するAさん
Aさんは職場点検の際、組合組織内で定められたチェック項目を定められた手順の通り、
漏れなく確認します。そして、すべてのチェック項目の現状をとりまとめ、相対的な比較
の中から重要な課題を選定し、取り組むべき施策を立案します。選定された課題は、
執行部としても認識していた課題であり、Aさんの職場点検活動によりその仮説が立証
されたことで、組織としても優先順位を上げて取り組むという判断を容易に行うことが
できました。しかし、Aさんは限られた時間のほぼすべてを「チェック項目の点検」に
充てたため、組合員と直接コミュニケーションを取る時間が確保できず、現場の生の声を
多く聞くことはできませんでした。

■定性的な観点を重視するBさん
Bさんは職場点検の際、組合組織内で定められたチェック項目の確認をほとんど行いません。
限られた時間のほぼすべてを組合員とコミュニケーションを取る時間に費やし、現場が感じて
いる不安や不満を明らかにしていきます。その中から今現場が求める最も重要な課題を選定し、
取り組むべき施策を立案します。選定された課題は、執行部としても認識していなかった新たな
課題であり、Bさんの職場点検活動によって明らかになったことで、組織としても新たな課題
認識の下、取り組むべき領域を設定し直すことができました。しかし、Bさんは限られた時間の
ほぼすべてを「組合員とのコミュニケーション」に充てたため、定められたチェック項目を確認
する時間を確保できず、定量的な観点での現場実態を把握することはできませんでした。

 定められた行動を着実に行うことで仮説を立証したAさん
 現場の声を大事にし、新たな課題を明らかにしたBさん

結論から言えば、Aさん・Bさんどちらも優れていると考えます。

もちろん、両面の観点から重要な課題を選定し、取り組みを立案できることが最も望ましい
のでしょうが、人にはそれぞれ異なった個性があります。組織としての決まり事をきちんと
行わせる指導はもちろん必要ですが、一人ひとりの個性を理解せず、「こうあるべき」という
型にはめて行動を管理することが必ずしも良い結果につながるとは限りません。
「何のために行っていることなのか?」を理解させ、目的達成のための行動になっているのか
を評価してあげることが大切なように思います。

それぞれの異なった強みを活かして行われた行動を共有し、横の連携によって活動を昇華
させていくことができれば、現場主導の職場改善がもっと進むかもしれませんね。

握手の効果
池上 元規
2015/08/09
みなさん普段、握手をする機会はありますか?

私は実家にお盆、GW、年末に帰省すると、父が握手を求めてくる記憶がある。
父の拍手は力強く、「元気にしていたか」と毎回帰省すると声を掛けてくれた。
また、今の住まいに帰る時も「頑張れよ、体には気を付けろ」と握手をして別れる。
父が昨年の11月に他界してから握手をする機会がなくなり、
他の人とも握手をすること自体が減った。
父からの励ましは、いつも心に沁みた。大きな存在だった。

今、プロジェクト会議に参加するために定期的に訪問するA労組がある。
このA労組は毎回、全員とスマイルで握手をするところから始まる。必ず全員が全員と行う。
これまで多くの労組に訪問して研修を行ってきたが、こんな労組は初めてだ。
女性からも握手を求められ、少し最初は戸惑った。
プロジェクトの参加メンバーには組合員もいて、戸惑うことなく積極的にスマイルで握手をする。
これは会社でも実施していて、社内の人だけではなく、関わりのある人に握手をしている。
この風土を仕事だけではなく組合活動にも浸透させている。

握手の効果をネットで調べると、根拠は定かではないが次のような効果あるようだ(一例として紹介)
・握手には人を正直にさせる効果がある
・握手は一つの“ボディタッチ”、ボディタッチにはリラックス効果や安心感を与える効果がある
・握手をして皮膚の感触があると、相手に暖かさや信頼感が伝わる
・握手の強さは好意や熱意のあらわれ
・ぐっと力を込めて握手をしてくる人ほど、積極的な性格の人
・そっぽを向いたままや仏頂面で握手すると、逆効果になる

私も毎回A労組でのプロジェクト会議時する握手は参加メンバーとの距離が縮まる気がする。
そして、このメンバーのために全力で活動のお手伝いをしたいとより思うようになってきた。
とにかく全員が日常から行うことがすばらしい。
突然握手を相手から求められると、避けたり、疑問を感じるたり、不信感に変わることもあるのではないか。
場合によってはセクハラにあたる。
しかし、メンバー全員で行うことで握手が当たり前になり、違和感がなくなることで普通にできるようになる。
握手はものすごく簡単な行為だが、意外と勇気が必要でハードルがある。
ハードルも全員が行い習慣化することで普通の行為になる。
スマイルでの握手は人の気持ちを変化させる行為だと思う。
今、職場では人と接触を嫌う人も多い中、あの父との握手とは別に、改めて握手のすばらしさを実感した。