ゆにおん・ネタ帳

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2019年

組合活動の原点は職場にあり
渡邉祐
2019/01/20
「ウチの組合員はいつも他責で他人事。どうしたら自分事として考え、主体的に行動してくれるのだろうか?」

日々、様々な組合様へお伺いさせていただいておりますが、このようなお悩みをよく聞きます。

組合活動に限らず、日常業務においても同様かと思いますが、主体性が生まれない要因として以下のようなことが考えられないでしょうか。

 □あらゆる取り組みの実施背景(なぜ)が正しく理解されていない
 □物事の決定プロセスに自分自身が関与していない
 □取り組みを牽引する職場のリーダーが不在である

例えば、労使で取り組んでいる働き方改革の取り組みにおいても、取り組みの必要性は理解しているものの、いざ取り組みを推進しようとすると自分事として行動するのは、一部の人間のみというのが現状です。
長時間労働の是正や有給休暇の取得促進など、多くの取り組みにおいて「なぜこれらの取り組みが行われているのか」「取り組みの先に何を見据えているのか」が理解されていないことや、自分自身が取り組むことなのに、その「決定プロセスに自らが関与していない」ことなどが原因となり、結果、トップダウンで降りてくる「業務」として認識されています。当然、現場の組合員には「やらされ感」が生まれ、うまくいかないとその原因を他人に求めるようになります。

これでは、どんなに良い取り組みであっても目指す理想の姿を実現することはできません。

まず認識すべきことは、自身が描く理想の状態は誰かが実現してくれるものではなく、働きやすい職場をつくるのも、働きがいを高めるのも、その起点はすべて自分自身にあるいうことです。
昨今、労働組合は自分たちのために活動している組織であり、声を挙げる=要求(不平不満)を伝える相手と認識している組合員が増えてきたように感じます。本来、労働組合とは組合員一人ひとりのものであり、組合活動とは組合員全員で行うもののはずですが、どうしても他責の感情から脱却できないのです。
そのような意識が定着してしまっている組合員をすぐに変えることは難しいかもしれません。だからこそ、労働組合は日々現場に足を運び、組合員とコミュニケーションをとることで相互理解を深め、信頼関係を構築しているのだと思います。

組合員の不平不満の根源は、賃金・一時金の高低などではなく、自分の意見が職場運営に反映されていると感じられるかどうかだと思います。建設的な意見を述べてもそれが聞き入れられていないと感じた瞬間に、自分は必要とされていないと感じ主体性は一気に低下します。この自己重要感を高めるための取り組みこそが労働組合が行う対話活動(世話役活動)ではないでしょうか。

日々の対話にて経営の考えを組合員感情にあわせてわかりやすく変換し伝えていくこと、そして、何をどのように行うかを自分たちで考える場を提供することで、その取り組み自体を支援することが労働組合の役割であり、取り組みによって得られる小さな成果・変化を見える化させることで、承認・称賛の機会を与えていくことが、活動の継続性と組合員の主体性向上につながると考えます。

労働組合だからこそできること。それは、業務改善ではなく、風土づくり。
労働組合の強みを活かし、現場を牽引する強いリーダーを育成していくことの必要性を改めて感じるとともに、人の成長は活動を通じてしか得られないのではないかと思います。

私たちはこれからも職場を起点とした組合活動をご支援していきたいと思います。

あなたにはレシピがありますか
池上 元規
2019/01/13

私の趣味は料理。プロフィールにも記載しているように、
日常から料理をする。
冷蔵庫にある食材を調理すること
もあれば、自分が食べたい料理にチャレンジすることも
ある。
ネットでレシピを探して軽く流し読みをして、後
は感覚で調理して適当に味を合わせる。
自画自賛だが、
意外とうまくいく(私だけが勝手に思っているだけかも
しれない)。時には失敗もするが、家庭料理だから大丈
夫。

ただ、プロがつくる料理店ではこのようなことでは通用
しないだろう。
例えば和食料理の「椀物」なら、だしの取り方、素材の
カットの仕方、加熱時間、味付けの手順などの基本があ
る。さらに四季に合わせて食材を変え、味の濃さや手順
に変化を加えて、飽きさせないように工夫をしている。
プロがつくる料理は味が安定していて、対象顧客に応じ
て変化させ、顧客を満足させられることができる。これ
はレシピをつくり鍛錬を重ねた故に再現ができ、そこに
アレンジを効かせられるから、さらに美味しい料理が提
供できる。

このことを仕事に置き換えたらどうだろうか。皆さんも
プロとして仕事をしている上で、計画通りに仕事を進め、
状況によって変化対応し、慣れない仕事でも顧客の信頼
と評価を得るために努力をして、時間と戦っている。特
にデスクワークが中心の人は定型業務以外に新規の業務
が日々やってきてタスク管理に奮闘する。その中でも慣
れない業務を感覚や手探りで仕事をすることも多いと思
うが、結果的には品質にムラが出て時間も掛かる。よっ
て生産性が低くなる。

生産性の高い仕事するためには、料理と同様にまずはレ
シピをつくり、これをもとに仕事の手順や段取りを理解
して取り組むことだ。

は部下に新たな仕事を任せた時に仕事の手順を聞くこ
とがある。その時に明確に手順を話せ、書ける人は仕事
がうまくいくことが多い。一方で「手順のイメージはあ
ります。でも、うまく言葉で表現できないですが、大丈
夫です!」と返事をする人は、その後何度もやり直しに
なることが多い。仕事の工程や手順を想定できていなく、
仕事のレシピをつくれていないからだ。

一方で上司側も仕事を部下に依頼する場合に、タスクと
期日を部下に伝えるだけ。そこで、不安を抱えた部下か
ら仕事の進め方を相談されても「こっちも忙しくてなぁ、
そこを自分で考えるのが仕事なんだ」などと返答し、上
司もレシピを持ち合わせていないと、部下もわからない
まま仕事をすることになり、これも生産性を下げるパタ
ーンになる。

今年も課題となる「働き方改革」の取り組みとして、職
場で日々、仕事の棚卸しをして工程や手順を書き出し、
上司や仲間と共有し調整して仕事のレシピをつくり仕事
をすることが生産性向上への近道だ。レシピがあれば振
り返りもしやすく、再現性も変化対応力も高まる。仕事
のレシピ(可視化した仕事の工程、手順)を使ったOJT
を薦めしたい。

 

働き方改革の推進と労働条件の向上について考える
吉川 政信
2019/01/06
◆改正労働基準法における労使の責任
今回の、2019年4月より施行される“働き方改革法案”の中で、労使による労務管理において最も
インパクトを与える部分は、改正労働基準法の“時間外労働の上限の設置”ではないかと思われ
ます。「新たな規定」に基づく取り扱いの詳細については、今後、厚生労働省や労働基準監督署等
から発表・説明がなされると思いますが、現行と改正後の取り扱いにおいて、大きく変わる点につ
いては主に2点あるといわれます。
【その1】三六協定における時間外労働の取り扱いが、労働省告示(省令)による規定から、労働
基準法(法律)による規定に基づく取り扱いとなり、規定に違反した場合に罰則が科せられること
になったこと。
【その2】現行、労使の協議に委ねられている、1年、1カ月、複数月の時間外労働時間の限度(上
限)時間について、数値による限度時間が規定されたこと。さらに、現行、時間外労働時間には含
めない取り扱いとなっている休日の労働時間を時間外労働時間に含めることになったこと。
これにより、今後ますます時間外労働ならびに休日労働についての、より厳密な管理・運用が求め
られることになります。また、職場で働く従業員も、より一層、業務を遂行するための工夫や新し
い仕事の進め方が求められます。職場の生産性向上を図っていくためには、職場のチームワーク向
上や従業員一人一人の自ら効率よく質の高い働き方を行う意識改革が必要となります。

◆働き方改革推進と労働条件の考え方
今後も労使で力を入れる「働き方改革」では、生産性向上運動を通じて自分たちの労働条件を向上
させることに力を入れることが重要だと考えます。総実労働時間の短縮も職場の生産性向上のため
に必要な取り組みといわれます。最近では、総実労働時間短縮に向け現状の就業ルールでは目標数
値への対応が難しいために、所定労働時間の縮減や休日数にも着目した取り組みを本格的に検討す
る労働組合も増えています。所定労働時間が多少でも縮減されれば、労働単価の引き上げにつなが
り実質的な賃上げになるとも考えられます。

現在、多くの労働組合で5年連続となる賃上げ要求を行い平均2%台の賃上げが実施されたといわ
れます。仮に、賃上げ相当分を所定労働時間の縮減で対応したと仮定した場合、職場の組合員はど
のように感じるでしょうか。また、所定労働時間が縮減されても残業が増えるようであれば、本末
転倒でもあります。

◆職場労使一体の取り組みへ
今日のように働き方改革を推進しながら労働条件の向上を図るために労働組合として大切なのは、
一人一人の組合員が今まで以上に効率よく質の高い働き方をするためにどうすればよいのかを考え
る場づくりを行うことです。例えば職場集会や職場の労使で共に考える職場労使懇談会の開催がそ
の一つといえます。仮に所定労働時間の縮減を行った場合には、この対策は組合員だけでなく職場
の管理職にも影響します。であれば職場の労使が真剣にこれからの働き方を見直すための具体的な
対策を検討することが必須といえます。また、その対策は組合員一人一人のやりがい、働きがいに
よい影響を与えるものか意識する必要もあります。

最後に、これから労働組合においては、本格的に2019年春闘準備に向けての対応が進みます。
働き方改革においては、春闘をスタートラインに労使の取り組みに対する強いコミットメントを行
い、職場の管理職・組合員にとって働くことへの期待が高まる施策を生み出してほしいと思ってい
ます。そして生み出された施策を労使双方が責任をもって実行することが組合員や組織にとっての
成長につながります。