ゆにおん・ネタ帳

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2013年

他者と自分の違いを理解するということ
加藤瞳
2013/08/11
先日、実家のある秋田に帰省し、久々に家族と一緒にゆっくりとした時間を過ごしてきました。
東京とは気温差が10度もあり少し肌寒いくらいで、クーラーがなくても扇風機だけで夏を過ご
せていたのを思い出し、故郷に帰ってきたなぁと実感しました。

高校までを過ごした秋田での記憶で、社会人になってからよく思い出すことがあります。
それは中学生の時の文化祭のことです。
当時、私は生徒会の執行部メンバーで文化祭を企画運営していました。
文化祭のコンセプトは【1人1人がそれぞれの花を咲かせよう】で、文化祭当日もそうですが
当日を迎えるその日まで1人1人が自分らしく輝けるようにとの思いを込めたものでした。
花の大きさや、色や、形はどんなのでもいいので自分らしく咲く機会とし、そして周りも様々
な個性や違いを受け止め、むしろ楽しむくらいのひと時にしたいという思いで動いていました。

当時の私は、人それぞれ個性や違いがあることは当たり前で、その違いを嫌がるのではなく
受け止め活かしていこうと頭で理解はしていましたが、実際に対応できていませんでした。
社会人になったら、きっとできるようになっているだろうと思っていましたが、そんなことは
なく、むしろ難しさを感じるようになっていきました。

特に仕事上では周りと自分の感覚の違いにヤキモキし、コミュニケーションがうまくとれず
悩む事が増えました。
「この進め方ではうまくいかないんじゃないかと思っても、相手はそこまで考えすぎること
はないと言って取り扱ってくれない」
「話しかけているのに、なんだか反応が薄い・・・何を考えているのだろうか」
といったように、お互い自分にとってはそれが自然な対応なのに、お互いの感覚からすると
相手の考えや行動が理解できず、違いを受け止め活かすことができないというものです。

そんな悩みを抱えている時に知ったのが「気質理論」です。
「気質」の違いによるパーソナリティの特徴を知り、それぞれの違いを活かした生き方や付き
合い方をしていくことが重要で、筑波大学大学院の宗像恒次名誉教授が伝えているものです。
「気質」は【循環】【粘着】【自閉】【執着】【不安】【新奇】の6タイプがあり、多くの人が
重複してもっています。

「気質理論」を学んでからは、理解し難い相手の行動にも納得がいくようになり、相性が合わ
ないと決めつけて諦めることもなくなりました。
「気質」以外にもその人の特性や性格を形成する要因は様々ありますが、自分や相手の「気質」
を知ることで長所を活かして、短所をセルフケアしていくという行動ができるようになって
いったのです。
また苦手意識のあった人とも良好なコミュニケーションが取れるようになっていきました。

今では私がその「気質理論」をベースに良好な人間関係を築いていくコミュニケーション研修
をするまでになりました。
参加者からは「職場のみんなの気質チェックをしてみたいと思った!」「なんとなく苦手意識
のあった人を避けていたが、これからうまく付き合っていけそうでワクワクします」といった
反応をもらっています。
これらの経験から、人との付き合い方で悩みを持つ人に、少しでも解決の糸口を提供できる人
になれるよう、日々鍛錬していきたいと思っています。
労働組合のストーリー戦略を描こう!
浅野淳
2013/08/04
定期大会を迎え、年度方針を一年間のストーリーとして組合員に問いかけ議論する時期。
組合員がその運動方針から自分なりのストーリーをイメージできるか、ここが重要です。
今回は、労働組合のストーリー戦略を『ストーリーとしての競争戦略』(楠木健著/東洋経済)
で紹介されているストーリー戦略論を参照しながら、考えます。
本著では、組織にストーリーを作る上で大切な要素は3つ、
「コンセプト」「クリティカル・コア」「サイエンスよりもセンス」とされています。

(1)コンセプト(誰に何を提供しているのか?)
「本当のところ、誰に何を提供しているのか?」という問いに答えるものが「本質的な顧客価値の定義」であり、コンセプトです。本著では、例としてスターバックスの「第三の場所」というコンセプトを紹介しています。顧客に売っているものは、コーヒーではなくて第三の場所(職場でも家庭でもない場)だという。「第三の場所」というコンセプトを起点にして、顧客が対価を支払いたいと思う水準を上げて競争優位を確保し、長期的で安定した利益を得ていく戦略ストーリーを描いたわけである。
労働組合におけるコンセプトとは何か?まずは、顧客を定義することが前提となります。その顧客に対して何を提供しているのか?この場合、物質的・経済的な指標で計れるものと、そうでない事に区分して考える必要があります。例えば「成長の場」「働きがいを得る知恵」「仲間との関係性を築ける場」などでしょう。

(2)クリティカル・コア(要素間のつながり/一見不合理に見えること)
次にストーリーの起承転結の「承・転」に当たる部分として、「クリティカル・コア」という発想が大切です。クリティカル・コアとして認められる条件は、「幾つかのストーリーを構成する要素が多くのつながりを持っていること(承)」「一見して不合理に見えること(転)」この2点です。先ほどのスターバックスの場合では、他社との違いには、①リラックスできる雰囲気の店舗②一等地への集中的な出店③一貫した直営店方式④顧客とのコミュニケーションを大切にするスタッフ⑤高品質のコーヒーに代表されるメニューの、5点です。③の「直営店方式」は一見不合理に見えますが、他の要素と多くのつながりを持っており、直営店だからこそ、ゆったりした店づくりができ、一等地への集中的な出店も可能になる。また、スタッフに対する教育もゆき届いて、人間のサービスを介して第三の場所をつくりやすい。一つの要素そのものは一見して非合理だが、戦略ストーリー全体のなかでは強力な合理性を発揮する。この二面性にこそ、クリティカル・コアの本質が秘められているのです。
では、労働組合におけるクリティカル・コアとは何でしょうか?組織全体のストーリーを作り上げる上で、組合員個々のアイデアや知恵を出来る限り繋ぎ合わせることが重要です。また、その核になる働きがいや・生きがいといった明確な指標が示せないことはまったくもって非合理の極みとも言えます。しかしその非合理性が、ストーリーを作る上で大切な要素です。良い会社を作ることを労使共通目的としている労働組合がその非合理を正々堂々と核に据えて活動することは意味のあることと言えます。

(3)サイエンス(分析)よりもセンス(統合)
最後にサイエンスよりもセンスですが、戦略ストーリーはサイエンス(分析)というよりもアート(統合)の世界に属します。スキルを磨くことも重要ですが、センスを高めることのほうがよほど大切になります。そもそも戦略をストーリーとして考え、組み立てるということは、創造的で楽しい仕事です。戦略はいやいや考えるものではなく、自分で面白がれるからこそ努力できる。努力が持続する。まずは自分で心の底から面白いと思えるストーリーをつくること。優れた戦略構想の出発点はいつもそこにあります。
私たちはついネガティブなストーリを描いてしまいますが、コンセプトが明確で、一見非合理に見えることに意味を見出し、現場で起こっていることをそれぞれ繋ぎ合わせ、面白いストーリーを描くことを忘れてはいけません。
私たちの顧客が誰であるか?その顧客に何を提供しているのか?そのストーリーを構成する「職場集会」「労使協議会」「イベント」「研修会」「機関誌」などがどのような「核」によって繋がっているのか?そして何よりも私たちリーダーが面白いストーリーと思えているのか?そのような観点で組合員に問い掛けることで長期的に支持される組織としてのストーリーが仕上がっていくのではないでしょうか?
「職場づくり」は「野菜づくり」
細越徹夫
2013/07/23
 毎年この季節になると、自宅のベランダは鉢植えの植物やプランタで育てて
いる野菜が元気良く伸び始める。なかでも一番元気がいいのは、一昨年から育
て始めたパッションフルーツとイチジクの木である。南国のパッションフルー
ツは、はたして自宅のベランダで育つのだろうかと思いつつも、育ててみると
意外に寒さに強く旺盛な繁殖力で緑の葉を茂らせている。その隣の鉢植えにや
はり同時期に購入したイチジクの鉢植えがあるのだが、こちらも50cmほどに
成長し実をつけている。
無機質なマンション住まいにあっては、植物の緑が癒しや安らぎを与えてくれ
ることもあり、観葉植物やちょっとした家庭「植物園」を楽しんでいる方は多
いと思う。

今年、この小さな植物園の中にミニトマトとキュウリの苗が加わった。以前も
何度かプランタを購入し、野菜づくりにチャレンジしたのだが暑さと強い風
のせいか全滅させてしまった。今年は、その経験をもとにしっかり根が張れる
ように大きめのプランタに変え、暑さ対策も工夫した。そして、忘れてはなら
ないのが毎日の水やりと余計な芽の剪定、加えて肥料の追加だ。たくさんの実
を付けてもらうには、継続的な手間暇のかかる作業が欠かせないのである。

 昨年の5月から「ご機嫌な職場づくり運動」の実行委員として、この職場づ
くりを参加職場の皆さんと歩み始めて1年が経つ。自分たちの職場を自分たち
が主体になって、働きやすい職場、イキイキとした職場にしていこうというの
が本運動の趣旨である。
この「職場づくり」労働組合の活動の中でも昔からとても重要なテーマの一つ
ととらえられていた。しかし、成果がわかりにくく、手間暇のかかる活動でも
あり、なかなか手を付けることが難しい活動でもある。

職場を良くしようと云ってみたって、誰がやるの、具体的に何をすればいいの
など...。何から手を付けていいのか、確立されたやり方など何もない。ま
さに暗中模索で手探りの活動にとどまっていたのが現実ではなかろうか。
そんな職場づくりをみんなが一緒になって、良いやり方を学び合い、共有しな
がら、自分たちの職場でできることから実践してみる。そのための推進役であ
り、支援策を提案し続けることこそ「ご機嫌な職場づくり運動」の設立意義で
もある。

さて、先のベランダのミニトマト。手間暇かけた甲斐あってか今年はたくさん
の実をつけ始めている。週末、そのベランダ脇に椅子を持ち出しミニトマトを
つまみにビールを一杯。
眼下の公園からは「みーんみーん」という蝉の声。
  閑さや 岩にしみ入 蝉の声
そんな歌が脳裏をかすめながらも夢うつつ。
なぜか、「ご機嫌な職場づくり運動」の関係者全員がみんなで農作業に励んで
いる。
実行委員長の高橋が「もっと腰入れて耕せ!手間を惜しんじゃいけないぞ」
「職場づくり」はまさに「野菜づくり」に通じているようだ。今年も熱い夏が
始まった。

周年事業について考える
渡邊祐
2013/07/21
 みなさんは何のために「周年事業」を行いますか?

 「来期、組合結成○○周年を迎えるので周年事業を行いたい」というご相談をいただくことがあります。式典を開催したい、記念誌を制作したい、記念品を配布したい、イベントを行いたい、記念映像もつくりたいなどなど、「やりたいこと」は何となくイメージを持たれていて、「j.unionなら何ができる?」といったご相談が多いのですが、それら周年事業を「なぜやるのか?」とお聞きすると、明確なイメージを持っていらっしゃらない場合もあります。

 大切な組合費を使うわけですから、組合員にとってメリットのあるものであったり、思い出に残ることを行いたいというのはある程度共通していますが、組合員にとっての「メリット」であったり「記憶に残ること」というのは、その組合が歩んできた歴史や現在置かれている環境(組織課題)などによって様々であり、どこかの組合で成功したからといって、自組織で同じことをやっても成功するとは限りません。

 周年事業に限ったことではありませんが、活動を考える上で大切なことは、「なぜそれを行うのか」を明確にすることだと思います。

 ある広域分散型組織の組合では、業務上、電話やメールでのやりとりは行うので名前は知っているが顔は見たことがない、という話を組合員からよく聞いていたので、周年事業として、組合員全員の顔写真を掲載した「アルバム」を制作し、全組合員に配布しました。

 この周年事業のコンセプトは「ヨコのつながり」です。

 近年、業務上求められる役割が高度化・複雑化しており、一律の教育では対応しきれず、かといって自助努力で能力を伸ばそうにも長時間労働という別の課題によって、その時間をつくることもできていないという状況で組合員が孤立していたそうですが、この「アルバム」の制作を通じて、写真撮影時に組合役員と組合員のコミュニケーション機会が生まれ、配布後にその「アルバム」をネタに組合員同士の会話の機会が増えたことで、仕事で困ったことが起こっても気軽に相談できる職場風土に変わったそうです。また、名前だけしか知らなかった仲間の「顔」が見えるようになったことで、より身近に感じられるようになり、仕事が以前よりもスムーズに行えるようになったとの声が聞かれるようになったそうです。

 この組合は「ヨコのつながり」をコンセプトに、周年事業を「一人では解決できないこともチームで解決する」という職場改善活動につなげたのです。また、アルバム制作そのものを現場に近い組合役員に任せたことで、組合員との距離が近くなり、組合と組合員をつなぐパイプ役としての役割が機能し始めたそうです。組合役員の人材育成機会にもしたのです。

 周年というタイミングを良いきっかけとし、明確な「コンセプト」のもと、会社と組合と組合員の未来を創る活動を考えてみてはいかがでしょうか?

目標管理制度とキャリア形成で中長期的視点を持つ
依藤 聡
2013/07/07
■目標設定の有用性と中途半端な目標設定

前回(2012年12月当誌192号)で「調査結果にみる目標管理制度の現在」を寄稿したが、
今回は目標管理とキャリア形成の関係について述べることとする。
目標を設定することで効率や成果が上がったという実証が数多くあることからも、目標設定の有用性は言わずもがなである。
一方でその目標は、付け焼き刃的な内容であったり、上司との話し合いが不十分で中途半端な目標設定になったりすることを
多くの労働組合様から耳にすることがある。また、どんな目標を立ててよいのかがよく分からないということもよく耳にする。
このような目標設定だと、弊社の過去の調査事例から以下のような状況になることが考えられる。
【付け焼き刃・中途半端な目標設定⇒目標達成へのモチベーションが上がらない⇒評価に対して納得しない⇒制度への不満⇒
賃金ヘの不満⇒会社への不満】

■目標設定とキャリアビジョン

そういったことにならないためにも、キャリアビジョンに基づいた目標設定を提案したい。
ここで言うキャリアビジョンとは「仕事上、今後こうなりたい・こういうことをしたいという明確な方向性」と定義づけることとする。
キャリアビジョンを考えることによって中長期的に自分の仕事の方向性をイメージづけることができる。
ただし、単独で考えるのではなく上司と共有した上で考えないと、近視眼的なキャリアビジョンになる可能性がある。
ちなみに当社が行った調査では、キャリアビジョンを主体的に考えている組合員ほど上司とキャリアビジョンを共有できているという傾向が見られた。
また、上司と共有することによってそれに沿った目標を立てやすいというメリットがある。

■制度満足度とキャリアの関係

弊社で行った調査結果で、人事制度の満足度とキャリアとの相関を知ることができる例を二例紹介する。
一例目は、面談においてキャリア形成について話し合っている割合が高く(低く)なるほど制度満足度が高く(低く)なるという結果であった。
もう一例は、人事制度の課題において社員のキャリア形成が見えにくいと思うほど制度満足度が低くなっているという結果であった。
経時的なことを考えると、キャリアについて話し合うことや、キャリア形成がクリアになると人事制度に対して満足するという関係性が見えてくる。

■キャリアアンカーと計画的偶発性理論

つまり、キャリア形成の基本となるキャリアビジョンを考えることで、組合員は中長期的な視野を持つだけでなく、制度満足度も高くなる傾向にあるわけである。
キャリア形成は目標管理制度において重要なものであることが分かる。
キャリア開発に関しては、エドガー・シャインの「キャリアアンカー理論」が主流であった。
キャリアアンカーとは、「ある人が自分のキャリアを決める際、指針にも制約にもなる自己イメージ」のことを言う。
最近ではジョン・クランボルツの「計画的偶発性理論」が主流となっている。変化の激しい時代において、
あらかじめキャリアを計画したり、計画したキャリアに固執したりすることは非現実的であり、すべきでないという理論である。
偶発的出来事を個々の主体性と努力によって最大限に活用することが重要であり、その偶発的出来事を意図的・計画的に
ステップアップの機会へと変えていくべきだというものが同理論の中心となる考え方である。

■キャリア開発と自己の強み

キャリアアンカーは規定するのに10年くらいかかると言われている。
確かに、昨今の社会や企業の環境変化を見ると10年かけて構築しようとしても、無駄になる可能性が高い。
一方で、自己の核(≒アンカー)となるものは必要である。そのためにも、自己の強みを常に複数以上認知する必要がある。
また、上司は常に部下の強みを考えなければならない。当然部下も自己の強みを考え、面談時にそれを活かすための目標設定を行う必要がある。
仮に環境が変わったとしても、別の強みを活かすための目標設定(もちろん強みを活かすこと以外の目標もあるが)を行うことで、
自己のキャリアが形成されていくことが考えられるわけである。
目標管理に関しては多くの課題が挙げられているが、キャリア形成の観点から課題解消の一案を掲載した。
ご参考になれば幸いである。


「職場」って何だろう?
服部 恵祐
2013/06/30
組合の「職場づくり」を応援していると、たくさんの職場に出会う機会に恵まれる。
世界中に自分と同じ人間がいないように、自分たちと同じ職場は世界中どこにも存在しない。
唯一無二の職場。

「転勤が決まると、1週間その転勤者のために送別会という飲み会が強制開催されるんです。月曜日から金曜日までです」、そんな職場があるのかと思ったら、
「うちは派遣の組合です。派遣先では、歓迎会も送別会もほとんどされることはありません」、そんな職場もある。
職場も千差万別である。

業績の良い職場・悪い職場、
人数の多い職場・少ない職場、
ギスギスした職場・あたたかい職場・イキイキした職場・冷え冷えした職場、
不機嫌であれご機嫌であれ、職場は職場。
多くの働く人は、職場で職業人生のほとんどを過ごす。


毎年会社では、「事業方針」が策定され、「事業(数値)目標」と「個人業績目標」が設定される。
なぜ、「職場方針」と「職場目標」が設定されないのだろうか。

「○○な職場で働きたいよね」
「みんなで、△△だけは守ろうね」
「誇り」「一体感」「成長できる」「支え合える」「笑顔の絶えない」「仲間」「自立と協力」「プロフェッショナル集団」「後輩への面倒をしっかりみる」「仕事に厳しい」「認め合える」「面白い」・・・。
目指したい職場のキーワードはいくらでもある。

自分たちの目指す職場を定義してみてはいかがだろうか。

紋切り型の行事に陥った定期大会を活用しても面白いのではないか。
「職場方針」と「職場目標」は組合の専売特許ではなかったか。

支部(事業所)単位の「事業所職場方針」や職場単位の「職場目標」が発表される定期大会。
ワクワクしませんか。

組合がスローガンだけではなく、実際の「職場づくり」「職場の再生」にこだわってみてはどうだろうか。

就職探しの学生に、「仕事はきついぞ。でも、仕事って本当に面白いぞ」って言えるだろうか。
昔からの親友に、「うちの職場、楽しいんだよね」って心から言えるだろうか。
自分の愛する家族に、「うちの会社が好きなんだよ!」と言い切れるだろうか。

「仕事が面白い」「職場が楽しい」「会社が好きだ」※
これが必要なのではないのかな?
こんなことが言えることが「幸せ」なのではないだろうか?


7月27日(土)の午後、西新宿で「第1回ご機嫌な職場づくり運動 フェスタ(参加無料)」が開催される。
この1年間、「職場づくり」に取り組んだ事例発表や表彰の場である。
「ピン」と来た人は、是非、遊びに来てほしい。

職場の理解も少なく、時間もなく、決して業績も芳しくない中で、ご機嫌に職場づくりをしているリーダーたちに出会えるはずである。


※この言葉は「ご機嫌な職場づくり運動」の共同者:株式会社ジェイフィールの企業目標です。





労働組合の経営対策活動の領域
池上 元規
2013/06/22
 『囚人のジレンマ』って知っていますか?
互いに協調・信頼する方がよい結果になる事が分かっていても、
自身の利益を優先している状況下では、お互いを裏切ってしまう心理をついた事例です。
結論はお互いが信頼し合えている状態が良い結果に繋がります。

≪事例≫
共同で犯罪を行ったと思われる囚人A、Bを自白させる為、警官は2人に以下の条件を伝えました。
・もし、2人とも黙秘したら、どちらも懲役2年。  
・だが、どちらか1人だけが自白したら自白者はその場で釈放する(つまり懲役0年)。
 この場合自白しなかった方は懲役10年。
・ただし、2人とも自白したら、どちらも懲役5年だ。
 ※条件として、彼ら2人は別室に隔離されており、2人の間で強制力のある合意を
  形成できない状況に置かれている。
 この時、2人の囚人は共犯者と協調して黙秘すべきか、それとも共犯者を裏切って自白すべきか、
というのが問題です。人間の心理として、相手に裏切られるかもしれないという懸念や恐怖から、
自分だけの利益を考えてしまいます。これは相手のことをどこまで信頼することができるかどうか
を試されています。
 この『囚人のジレンマ』は軍事競争、商売上の取引、環境問題、恋愛関係などさまざまなシーン
で例えることができるのではないでしょうか。一方の最適が全体の最適な選択にならないことが言
えます。
                                   <一部Wikipedia参考>

 労使の関係も同じで、労使で強い信頼関係が築ければ、会社の存続・発展に大きく寄与すること
は言うまでも無いでしょう。

 最近、幹部の組合役員と『労働組合の経営対策活動』について議論する機会が多々ありました。
最初に感じたことは、組織によって大きく考え方に違いがあることです。原則として“会社に提言
する領域”と“組合が取り組む領域”を区別して考えていることは共通していますが、組合が取り
組む領域の幅に違いがあります。
 経営対策活動の肝は“会社への提言・働きかけ”と“現場での対応”があって両輪をバランスよ
く廻すことが真の対策になると考えます。

 これからの労働組合の経営対策活動は過去の活動領域にとらわれることなく、組合員一人ひとり
が現場で活動に参加するように働きかけ、実践に移すことです。
 例えば『職場の問題を組合員が考え改善する』『職場の仲間との仕事の連携を見直し(職務互換
を高める)効率化を図る』『ハイパフォーマーから仕事の進め方を学ぶ』『上司との目標面談の仕
方(納得して仕事ができるスキル)を組合員に教える』などで、これらは一例ですが、全て実際に
労働組合で取り組んだものです。
 この取り組みは、ボトムアップ型の労働組合だからできることです。現場から取り組む経営対策
活動は会社からも期待され、労働組合への信頼を得る重要な活動と位置付けできます。

 労使の関係は一時的な関係ではなく、会社と労働組合が存続する限り関係は存在し、お互いが
信頼することで幸せになれます。
 相手から信頼を得るには、まず自分達から信頼を得られるアクションを起こすことが大切です。
みなさんもこれまでの経営対策活動を振り返り、労働組合も積極的にアクションを起こしていきま
しょう。


山と畑と笑顔に囲まれて考えたこと
荏本
2013/06/16
ほのかに蒸し暑さを感じる初夏の休日、農業体験講座に運営手伝いとして参加しました。

この取り組みは組合活動の一環で、農業法人の方々にも協力いただいて実現したものです。
組合員だけではなく、家族や友人、地域の方々も参加自由で、参加費もかかりません。
参加者は、親子・夫婦を中心に計120人以上となりました。

育てるのはスイートコーン。初回の今回に種を植え、2ヵ月後に再び集まって収穫を予定しています。
(収穫後、バーベキューにしてみんなで食べるというお楽しみが待っています)

プロの方の指導に従い、みんなで一斉にコーンの種を植え付けていきます。
親は子に、兄は弟に、家庭菜園などで手馴れた方は初心者に教え・・・・・・といった様子です。
この日は農業体験以外に、畑の水路で生き物を採って観察するお子様向けの時間も設けました。
参加者の年齢を問わず、多くを学び、楽しめる場となり、参加者の言葉や表情の多くから
充実感や達成感をうかがい知ることができました。


どこまでも広がる当日現地の里山風景の中。
参加者の笑顔を眺めつつ、この取り組みの意義を考えてみました。
考えたことを改めて4つにまとめてみると・・・・・・

 1)農業や農作物についての見識を深められる
      →参加者個人の知識・ノウハウの習得(個人の成長)

 2)地元の農業を知り、地元の作物を好きになれる
      →地域産業の理解・地産地消(個人発の地域貢献)

 3)家族・友人と協力し合いながら交流できる
      →家族と過ごす時間の確保、社外人脈の構築

 4)会社の仲間(職場内外)と協力し合いながら交流できる
      →職場内の関係性強化、職場の垣根を越えた関係性の構築

個人、地域社会、家族、職場。これらは労組の活動領域そのものと重なっています。
山と畑と笑顔に囲まれながら、「この風景は、組合活動が目指している姿の凝縮なのでは?」
などとも考えてしまいました(やや強引な解釈含み)。


「初めての参加は勇気が必要だったけど、来てよかったです」とはある参加者からの声。
未知の分野を初体験する場に出向くには、人一倍の好奇心を持つか、一歩踏み出す勇気を
振り絞る必要があるのかもしれません。しかし、やってみて得たものが大きければ、
好奇心や勇気を持ったこと自体が一人ひとりの中でポジティブに消化されると思います。
それは、次なる新しいチャレンジや能力開発への意欲につながるのではないでしょうか。

「すごくたのしかったです。とるときにバーベキュウがあるからたのしみです」
参加されたお子様(小学生)が、学校の課題の日記帳にこの日のことを綴ってくれました。
初夏の日の楽しい思い出、日記帳の1ページ。参加者のお子様にとって記憶にも記録にも
残る取り組みとなったことを運営者兼参加者として心よりうれしく思いました。

コーンの成長のように伸びやかに、水路脇を跳ねる蛙のように息づいた、ライブでの組合活動体験でした。
次回の収穫の日を私も楽しみにしています。

調査活動の効果的な活用方法
清水 典明
2013/06/10
弊社では多くの組合で調査活動のお手伝いをさせていただいております。
調査の目的は経営提言・職場改善・組合活動づくりなど様々です。
その目的に応じて内容は多岐にわたります。

今回は、調査結果を組合活動に活用し、PDCAサイクルの実践をしている事例を紹介します。「なかなかここまでは出来ないな‥」と感じた組合活動です。

調査内容は、「労働組合及び活動に対する組合員の意識」「会社に対する組合員の意識」で、企業グループ内で組織している連合会に属する単組ごとの回答傾向を把握し、その内容を単組の組合活動の基礎資料として活用しているというものです。
その単組では、
・経営への提言
・活動方針への反映
に調査結果を活用しています。同じ地域の連合会に属している単組間で、調査結果の活かし方や伴う活動の共有もしています。

伝統的に継続しながら、調査結果などから改善やより組合員にとって有益にしている具体的な活動をいくつか紹介します。
・各専門局で年間の活動計画を月単位で具体的にし、PDCAサイクルを実践している。組合事務所でその内容を貼り出し見える化している。議案書はその内容をまとめたものなので、非常に精度が高く、組合員の活動理解にもつながっている。
・労使協議会は三役と経営陣のみならず、職場の部課長クラスと執行委員が最低週1回協議している。議題によってはそれ以上の回数も実施。年々内容が濃くなっている。
・情宣活動においては、各職場で職場委員が執筆し、月1回発行している。そのネタ探しや職場の仲間へのインタビューなどで人材育成・後継者育成も兼ねている。職場委員が毎月執筆していると聞いたことが初めてでした‥。
上記以外でも、組合活動の振り返りを調査結果などから検証し、ブラッシュアップしている組合です。

活動に対する自信や誇りを持ちながら、現状に決して満足することの無い姿勢が印象的でした。

私自身も皆様の誇れる活動の少しでもお役に立てるように、日々何ができるかを自分に問いかけながら仕事をしてまいります。

失われつつある大事な相互扶助の精神
小野 晋
2013/06/02
◆子どもたちからのメッセージ
少し前の出来事ですが、息子の学校で学芸会があり、学年ごとの創作劇を夫婦で見た時の話です。
その学芸会の劇には全学年を通じた大きなテーマとして次のようなことが掲げられていました。

【「自分だけ・仲間だけが良い」ではなく、それが例え「嫌いな人達のため」であっても互いに助け合おう。】というテーマでした。
劇は、
 •ちょっと悪い人
  (自分のことしか考えない人)
 •普通の人々
  (日和見的に周りに合わせてしまう人)
 •純粋な心を持つ人
  (人を信じ、例え悪い人であっても見捨てない人)
などが登場し、純粋な心を持つ人が、普通の人々を動かし、ちょっと悪い人をみんなで助けるというストーリーでした。
この劇を通じて子どもたちは歌いながら次のようなメッセージ伝えていました。

みんなは、ひとりのために。
 ひとりは、みんなのために。
 みんなは、ひとりのために。
 ひとりのために・・・。

この子どもたちからのメッセージが労働組合のベースとなる精神だと思え、子どもたちの声掛けに恥ずかしながら涙ぐむほど感銘を受けました。

『みんなが使命感をもち一致団結して、たったひとりのために、力を尽くす。ひとりは、私利私欲なく、みんなのために、力を尽くす。
そして、一人ひとりが貢献してくれるようになったとしても、みんなはひとりのために尽くすことを決して怠らない。組織のためではなくひとりのために。』
私にはそう聞こえました。

◆大人たちからうけるメッセージ

 残念ながら昨今では、自分のことしか考えない人が増えているように感じます。われわれ大人が、大切な精神を失ってしまっていることを、同じ学芸会で思い知らされました。

 学芸会の劇が全て終わり、先生が体育館で観覧者に向かって『保護者の皆様、お座りになっていた椅子を片付けて下さい。
ご協力をお願いします』と後片付けのお願いをしました。それにも関わらず、まるで人ごとのように大人たちはさっさと帰っていくのです。
気が付くと500人以上いた観客中、後片付けを手伝っていたのは、わずか20~30人ほどしかいませんでした。

 片付けをせず帰っていく大人たちを、子どもたちはどういう目で見るでしょうか。
『みんなは自分のためにやってくれる』その権利意識だけは享受しながらも、もう一つの『自分はみんなのために』が『自分は自分のためだけに』 行動している大人だなと見るのではないでしょうか。 
純粋な子どもの心が曇っていくのも、そういった大人たちを見ているからではないでしょうか。

『学校が自分たちのために、何をやってくれるのか。国や会社や組合が自分たちのために、何をやってくれるのか』。
それは当然の権利として期待し当たり前のように享受する一方で、自分自身は自分や自分の身内のためだけに何をやるかのみを考える。
そうした大人たちが、子どもの考え方もそうした自分本位な考え方に染めて、そうした大人に育てているのではないでしょうか。

◆失ってはいけない精神

 昔は、田植えから稲刈り、子育てから冠婚葬祭に至るまで、地域のみんなが一致協力しなければ、成り立たない時代であったのだと思います。
 一方で近年の日本においては、経済的にも食生活や生活環境、人間関係においても、他者や地域や会社だけでなく強く依存(しているという意識を)することなく生きられる時代になってきました。
さらに、個の意思が尊重されるとともに、個々の権利意識も高まり、特に望まないこと、手間や負担になることは意思表示して拒否できるようになりました。
そのこと自体は決して悪いことではありません。

 このような時代や社会的な背景もあるでしょう。しかしながら、そのような背景や理由はどうあれ、相互扶助の精神は理屈抜きに、決して失ってはいけない精神だと強く思うのです。
人はひとりでは生きられないと思うからです。
 相互扶助の精神が崩壊すれば家族も学校も、地域も社会もそして会社や労働組合も、いずれ組織自体が崩壊することでしょう。

学校で学芸会の片付けが終わり、運動場に出てみると、自分の子どもの記念写真をとる親たちで賑わっていました。

『この大人たちをなんとかしないと・・・自分のことしか考えないこの人たちを』