ゆにおん・ネタ帳

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2014年

働きかけること
細越 徹夫
2014/10/12
 自宅マンションの隣には、以前から若いご夫婦が住んでいる。それほど親し
いわけではないが、顔を合わせれば挨拶する程度のご近所付合いだ。
そのお隣には、小学校低学年の女の子がいる。以前から廊下でたまに見かける
ことはあったが、話したことはなかった。
私の住んでいるマンションでは、朝、小学校に通う子供たちが1階のエントラ
ンスで待ち合わせし集団で通学している。エントランスにはいつも5、6人の
小学生が待ち合わせしており、隣の女の子もほかの小学生と一緒になって集ま
っている。
待ち合わせをしている小学生の前を通り、「おはよう!」と挨拶すると元気に
「おはよう!」と挨拶してくれる子も多いのだが、何故か隣の女の子から「お
はよう!」の声を聞いたことがなかった。もしかすると、怖いおじさんに声を
かけられたっていう気持ちなのかもしれない。

そんな折、今年の夏の初めくらいから、待ち合わせ時間が変わったのか、朝の
出勤時にエレベータで一緒になることが多くなった。はじめのうちは、「おは
よう!」と声をかけても知らぬふりである。その後も毎回「おはよう!」と挨
拶しても無視である。まぁー小さな女の子である。警戒心がそうさせるのだろ
うか。「実家の姪も無口だったし、内弁慶だったからなぁ・・・」と、自分を
納得させつつもなんとなく気にかかる。

ところが、先月の初めごろから隣の女の子に「おはよう!」と声をかけると、
軽く「うなずいて」くれるようになった。まだ「おはよう!」とは言ってくれ
ない。たったそれだけのことなのだが、自分としては、なぜかワクワク・ウキ
ウキである。

何がきっかけなのかはわからない。でも、「おはよう!」という言葉に応えて
くれたのがとても嬉しいのである。たぶん、隣のご家族と親しくしていて、お
父さんやお母さんが一緒にいて「ちゃんと挨拶しなさいね」と言われれば、す
ぐにでも挨拶してくれたのだと思う。そうではなく、自分から挨拶しようとし
てくれているのが、とっても嬉しいのである。

 さて、労働組合の活動は、そのすべてが人と人とのつながりを大切にする上
で成り立っている。それは、物理的なつながり以上に、心のつながりという
信頼関係から成り立つ活動である。そのつながりが、組織全般で薄れている
状況にあって、職場という最も身近な「場」にさえ及んでいることは由々しき
事態である。

私はご機嫌な職場づくり運動の実行委員を務めているが、この運動は「心のつ
ながり」の再生を図る運動でもある。そのためにお互いを知り、お互いを認め
、そのための手段として「話し合い」を基軸とした活動を提起しているのだ。
しかし、この運動にほとんどの組合役員は共感してくれるが、実際に一緒に活
動しましょうというところはまだまだ少ない。このような活動が必要だという
「思い」を「行動」につなげることが如何に難しいことなのか痛感している。

「人と人とのつながり」をつくるには、自分から働きかけなければ、心を動か
し行動してくれないものである。どちらが先というものではなく、「自ら」な
のである。しかも、自ら働きかけたとしても、相手が心を動かし行動してくれ
る保証は何処にもない。でも、そうして心を動かし行動してくれることを「信
じて」自ら働きかけるその『勇気』が必要なのだと思う。

私もいつか隣の女の子が「おはよう!」と自らの「言葉と笑顔で」挨拶してくれ
ること、その時を願ってまた明日もおはようの挨拶を通じた『働きかけ』を続け
ようと思う。ワクワク・ウキウキと。

労働組合の未来を考える3つのテーマと4つの眼力
浅野淳
2014/10/06
組織が新たな価値を創造するとき、多面的に物事を捉え、活動の再構築と具現化が大切である。
本稿は、これからの労働組合にどのような可能性があるのか、その実践に向けた3つのテーマ
と4つの眼力(複眼)を紹介する。これらの掛け合わせを通じて、労働組合の存在価値向上の
ヒントになれば幸いである。


その1、労働組合の次世代トップリーダー育成「人物づくり」。

職場における労働組合の存在意義が曖昧化している。これからの企業の存続・発展には、職場
で労働組合が機能している、「開かれた職場」の実現が不可欠である。経営陣からの一方通行
マネジメントだけでは、付加価値の高い製品・サービスが生まれないことは今や、労使共通の
経営課題である。
労働組合の強みを活かした人づくりとして、トップリーダーを育成する場づくりが重要である。
問題解決力のある〝できる人″を育てることも重要だが、胆力のある情理を尽くせる〝できた人″
の発掘と育成に力を注ぐことをお勧めする。そう、未来を託したいトップリーダーとは、以下
の「4つの眼力」を身に付け実行できる人物である。

 ①鳥の目・・・・・・・労働組合を鳥瞰(ちょうかん)する大きな枠組みとして捉え、知る力。
 ②虫の目・・・・・・・労働組合の現実を知り、他労組をベンチマークし、学ぶ力。
 ③魚の目・・・・・・・世の中の流れを読み取り、未来の労働組合のあり方を探る力。
 ④トンボの目・・・複眼思考で物事を捉え、情理を尽くす胆力を持った人物。

これらの目を携え、労働組合を取り巻く環境に合わせて、見えるものの見方を変え、目に見え
ないものを感じられる人物が育つ運動を検討してほしい。


その2、労働組合の経営対策活動としての「職場づくり」。

労働組合の経営対策活動は、主に経営サイドからの経営環境・財務に関する情報に対応するに
留まっていないか。実際の経営対策は多岐にわたっており、まさに複眼的な見方による評価・
分析・対策が必要とされている。
労働組合が経営を学び、主体的に自社の経営に貢献できるポイントは何かを議論することは、
必須である。そのためには、組織を二次元(組織-個人)ではなく、三次元(組織-職場-個人)
で捉えることである。労働組合として注目すべきは、小集団である職場である。職場の生産性
向上が、組織全体の付加価値を押し上げるような組合活動に焦点を当てること。
これからの労働組合の経営対策は、以下の4視点で自社の分析を行い、労働組合としての課題
立案と、その解決策を検討することをお勧めする。

 ①視る・・・自社の足腰(マネジメント・組織力)を視る。
 ②診る・・・自社の心と頭(経営理念・経営戦略・方針)を診る。
 ③看る・・・自社の体力(財務・企業価値)を看る。
 ④観る・・・自社の環境(市場・マーケット環境)を観る。


その3、労働組合の活動品質を高める「組織づくり」。

労働組合の活動品質とは何か、それは労働組合が備えている仕組みを機能させているかどうか
に尽きる。綱領に基づいたビジョンや方針を定め、活動を実践しているかどうかである。言い
換えれば、労働組合が有している機能が発揮できているかどうかである。経営者と向き合い、
労使関係を健全なものにし、労使協議を重ね、組合員による経営参加を実現する強い組織づくり
のための機能を発揮しているのかどうか。そこが今、問われている。そのためには、今一度、
以下の4つの視点で組織を分析してみることをお勧めする。

 ①ヒトをみる目・・・労働組合による人材育成機能の発揮
     雇用と高付加価値な仕事、豊かな人生を生み出すためのビジョンはあるのか?
     そのためにどのようなビジョンを持っているのか?
 ②モノをみる目・・・労働組合のブランドイメージを刷新する機能の発揮
     労働組合の発信する言葉は組合員に届いているのか?
     組合員にどんなイメージを与えているのか?
     その言葉は組合員の働き方・生き方におけるガイドラインになっているのか?
 ③コトをみる目・・・労働組合による組織点検と改善の機能の発揮
     職場でどのような出来事が起こっているのか?
     それは自分たちで解決できることなのか?
     労使共同で解決すべきことなのか?
     組合員は義務を果たしているのか?
 ④情報をみる目・・・情報の共有と、開かれたコミュニティ機能の発揮
     労働組合が取り扱う情報を、関係者にわかりやすく伝えているのか?
     組合員からの情報に意味を持たせて組織の課題として経営に提起しているか?
     世の中の多様性を理解して開かれた組織になるよう情報を発信しているのか?


これら3つのテーマと、それぞれの4つの眼力を掛け合わせ、分析→仮説→計画→実践→評価
のサイクルを回すことが労働組合の可能性を押し広げることに発展にする。


上記3つの切り口については、
 1.本気の人物づくり「徳芯塾」
 2.労働組合の強みを活かした「経営対策サポート」
 3.活動品質をブラッシュアップする「活動アセスメント」
としてご案内中です。お気軽にお問合せください。

「イクメン」は本当に増えているのだろうか?
渡邊祐介
2014/09/28
 近年「イクメン」という言葉が定着し、各企業においても男性の育児関与を高める様々な取り組みを
行っていますが、実際にはどれくらい効果が表れているのでしょうか?

 内閣府男女共同参画局が発表している「育児休業取得率」に関する調査結果によると、平成24年度
時点における女性の取得率は83.6%に対し、男性は1.89%とかなりの差があります。どの組織でも本腰
を入れて取り組まなければならないテーマであると認識しているでしょうが、期待する効果にはまだまだ
程遠い現実のようです。

 一方、積極的な取り組みで男性の育児参画や復職後の活躍を促進している組織があり、とても素晴ら
しい取り組みでしたので、少しご紹介したいと思います。

 その組織では、ワーク・ライフ・バランス実現とダイバーシティ推進を掲げ、育児参画を積極的に行って
いる男性にインタビューを行い、「なぜ、仕事と育児の両立ができるのか」を広報誌を通じて発信されて
います。また、復職後に育児を行いながら働く女性に対しても、同様にインタビューを行い、そのポイント
を共有されています。置かれている立場や環境はそれぞれ異なりますので、決してその行動を押し付け
るわけではなく、様々なケースを共有することで「真似できることが一つでもあれば」という思いが込めら
れています。そして、その記事を読んでみると、ある共通点が見られました。

  1.夫婦で協力して育児を行っていること
  2.職場の上司や同僚の理解と適切な支援があること
  3.効率的な時間の使い方とオン/オフの切り替えが上手なこと

 仕事と育児を両立する上で大きなハードルとなる時間的制約を、夫婦間で協力し合いながらクリアして
いること、また、限られた時間内で仕事を終えるために、自分一人で仕事を抱え込まずに他者との関与
比率を高めて業務にあたっていること、そして、何よりも職場の上司や同僚がその人の置かれている
立場を理解し、職場で活躍できるように最大限の支援をしているということでした。

 また、育児休業取得者に対する復職支援として、ランチタイム時に育児休業を終え復職された方と
若手の女性や育児休業取得中の方を集めて、制度取得時や復職に対して不安だったことなどを直接
話してもらえる場を設け、不安を少しでも取り除くための取り組みもしていらっしゃいます。

 総務省の労働力調査でも、いわゆる「M字カーブ」と言われる働き盛りの30代前後の女性が仕事か
子育てかの二者択一を迫られているという結果も出ています。労働人口が年々減っていく中で、女性の
活躍推進の必要性は言うまでもなく高まっており、男性の育児参画が大変重要になってきます。
 「イクメン」を増やしていくためのヒントは、その組織の中にしかないのではと、あらためて気づかされた
取り組みでした。

 最後に、インタビュー記事の中にとても印象的な言葉がありましたので、共有させていただきます。

  「子育てを理由に仕事を諦めることがないように努力しています」

 共に働く仲間や地域社会も含め、私たちにできる努力はまだまだあるのではと考えされられる言葉でした。

“大人の学習”できていますか?
池上 元規
2014/09/21
 5年ぐらい前から、労働組合の新たなビジョンを策定する取り組みがブームになっているようだ。
先日訪問した某労組で、シンプルでわかりやすいビジョン「自律とつながり」という言葉を目にした。
これは2015年に向けたビジョンで、4年前にビション策定ブームの流れもあり策定したとのことだった。
私もこの数年でいくつかの労組のビジョン策定に携わった。実際にビジョンを策定に一緒に取り組み、
今後5~10年間の活動を企画すると、どの労組も「これからは労働組合の人材育成に力を入れてく」と言う。
そこで、これまでも労働組合の人材育成について”ゆにおんネタ帳”にテーマとして挙げられてきたが、
改めて労働組合が取り組む人材育成についてふれてみる。

 まず、当社で考える人材育成とは「主体性を引き出し行動できる」人を育てることだ。
新しい知識やスキルを学ぶことのみに留まらず、自分で考え工夫しながら主体的に行動できることが重要である。
主体的な行動が出来るようにするには、つぎの3つの条件が必要だと考える。
 ①理由づけ(なぜ行うか必要性が明確)
 ②選択(何を行うか自分で選択して決定する)
 ③承認(行動に対する評価と承認が有る)
   書籍『人を伸ばす力』~内発と自立の進め~(出版:新曜社)参考

 さらにこの考えを補完する上でも、私が参考にしている考え方を紹介したい。それは、“大人が学習する”上で必要な要素についてである。
アメリカの教育学者 マルカム・ノールズ氏は“子供の学習”(学ぶことが決められ、与えられたことを学び、これまでの経験は考慮されない)
とは違い”大人の学習”には次の要素が必要であると提唱している。
 ①実利的(自分に役にたつとわかると学ぶ)
 ②動機(学ぶ必要性を感じると学ぶ)
 ③自律的(自己決定的な要素を持てると学ぶ)
 ④関連性(自分の業務との関連性があれば学ぶ)
 ⑤目的志向性(自分なりの目的を持って学ぶ)
 ⑥人生経験(これまでの経験に紐づけて学ぶ)

 労働組合が取り組んでいる人材育成(学習会)の観点から、ここで掲げる④⑤⑥に注目した。みなさんの組合では意識して取り組めているだろうか?
 ④関連性:学ぶ内容が組合活動または仕事の場面で活用できるイメージや具体的なシーンと、学習内容が関連付けられているか。
  例えば、次の職場集会で司会を担ってもらうための進行スキルを学ぶといった具体性を持つなど
 ⑤目的志向性:学ぶ目的はなんなのか?本人が学ぶ目的が明確になっているか。
  例えば、自分は人前で話すのが苦手だから、自信を持って話ができるスキルを身につけたいなど
 ⑥人生経験:学んだ内容が、これまでの経験とどのように紐づけられ、これから現場でどんな実践をするかを考える時間は持てているか。
  例えば、自分の職場の雰囲気、特性から一方的な伝え方ではなく、事前に質問を投げ紙に書いてもらって集会に参加してもらうことが効果的だろうなど 

 労働組合の実際の人材育成は少し厳しいが、マルカム・ノールズ氏が言う”大人の学習”というより”
子供の学習”になってはないだろうか?この問題は組合活動を一緒にサポートする私達にも責任があると感じている。
①実利②動機がグレー状態で、⑤目的志向になる前に人材育成の取り組みがスタートしてしまうケースをよく見る。
また、⑥について学習会等の最後の時間に学んだ内容の振り返りを行うことは多々あるが、自分のこれまでの経験から、
今回の学びを具体的に現場でどのように活動していくかの議論は、薄くなってしまっている。

 労働組合として限られた条件の中で効果的な人材育成を行うことは最重要課題ではあるが、企業が実施する人材育成と比較しても時間、
お金、動機づけなど、挙げればきりがないが制約が多い。“大人の学習”にするのは幾つかのハードルがある。
 これから新しい期が始まるこの時期に、人材育成活動に取り組み場合の参考にして欲しいし、
場合によっては私も一緒に解決策を立案し、少しでも役に立てればと思う。


未来の職場のリーダー育成のために
荏本 太郎
2014/09/14
組合役員向けのハンドブック(活動マニュアル)作成を目的としたグループワークを行いました。

対象は、リアルな職場状況を熟知する職場委員たち。
一人ひとりが自分の役割について考え、活動の現状・課題・原因・対応策をグループ単位で出しあいます。
役割を再認識し、同じ立場の仲間との意見交換を通じて活動への学びや気づきを得てもらうこともねらいの一つです。

今回のグループワークの大目的は、できるだけ多くの発言をしてもらい、組合役員マニュアルにつなげること。
内容は、各方面とのコミュニケーションのとり方、会議の進め方、各種手続きのしかた・・・・・・etc
発言や付箋出ししたアイデアはすべて記録し、後日整理した上で資料としてまとめあげます。
現役の組合役員の言葉をもとにした、その組織の事情に見合ったハンドブックを作り上げる取り組みです。

組織の要となる職場委員(職場リーダー、支部役員など)に対し、活動の意味ややり方ををどのように伝え、
具体的な動きにつなげるか。手法の一つであるハンドブック作成の取り組みに携わって感じた点を、
自分なりに下記4点にまとめてみました。


1.目的の理解が先か、「まずは動いてみよう」か
 特に新任の職場委員へは、「なぜこの活動が必要なのか」を説明会や研修会で教える組織が多いようです。
 しかし、一回伝えるだけでは理解はおぼつきません。先輩役員のフォローを得ながらすぐに実践に移し、
 しっかり振り返りをしたうえで、次へのチャレンジ内容を決めていくプロセスが求められます。
 おすすめは、知識のインプットと実践の両方を組み込んだ年間カリキュラムをあらかじめ定めておくことです。

2.上部団体や執行部からの一方通行になっていないか
 記述したものを渡しただけ、短時間で一方的に説明しただけでは、聞いた側は指示・命令を受けているように感じます。
 まずは、特定の活動のごく一部だけでも、自分が先頭に立って実践する経験をしてもらう場が必要です。
 先頭に立って引っ張った活動に対しては、自分の言葉で課題をあげ、自分なりの改善策を編み出すことが期待できます。
 自分ごととして捉えられる活動経験の振り返りを言語化してもらえば、それは新しいマニュアルへの貴重な情報源です。

3.現状の整理ではなく、未来を見すえているか
 こうしたハンドブックなど今後の行動指針を検討していくにあたり、現状を整理しただけでは組織として進化できません。
 現時点の課題を克服するための「あるべき活動像・職場像」を意識することが大変重要になります。
 ハンドブックを使うのは未来の職場委員たち。三役・執行委員も含め、組織全体で同じビジョンを共有しているか、
 そのビジョンが人材育成と連動しているかもポイントです。

4.わかりやすい表現、使いやすい形態か
 広報物同様、組合役員への教育ツールに掲載する表現や形態も重要です。
 個別活動の説明をする際、活動全体の中の位置づけを明示する、「なぜ必要か」と「どのように動くか」をセットで伝える、
 職場単位で異なる細かなやり方まで記述せず、できるだけシンプルに伝える、文字ばかりではなく、使用する書類サンプルや
 活動風景などイメージしやすい素材も見せる・・・・・・そして何より、配布対象の組合役員から現場でどれかで活かせたかの
 フィードバックを受けることが何より重要です。


労働組合が人材育成機能を発揮し、自ら考え、動けるリーダーを輩出することが今後さらに求められるでしょう。
しかし、組織内外の環境も変化が続き、多くの組合役員が数年以内に入れ替わる状況では、伝達内容もぶれやすくなりがちです。
研修内容、実践内容、教育ツールの一つひとつに意図を持ち、対象によって細かな設計や配慮をしつつも、
「教え方を教えあい、学び方を学びあえる活動」を取り入れる必要性を感じています。

調査結果からみる「働きがい」
依藤 聡
2014/09/07
◇「働きがい」とは
2007年から、GPTWジャパン社の主催による「働きがいのある会社」ランキングというものが公表されている。独自の指標を用いて参加企業をランキングするわけだが、そもそも「働きがい」とは何だろうか?多くの組合様でもビジョンやスローガンで「働きがい」という言葉を見かけることが多い。

「働きがい」という言葉でネットや書籍を調べると、モチベーションと混同していたり、 “働くためのやりがい”という言葉をばらしただけの身も蓋もない定義をしたりしている状況を見かけることがある。厳密にいうとモチベーションは「働きがい」の源泉であり、より抽象的な概念である。一方、“働くためのやりがい”を詳しく言いかえると「働くための価値や働くことにともなう気持ちの張り」と言うことができる。

本論では、この「働くための価値や働くことにともなう気持ちの張り」を「働きがい」と定義して、論を進めて参りたい。

◇「働きがい」を高める要因
「働きがい」といっても、定義自体が抽象的なこともあり、わかっているようでわかっていない方が多いのではないだろうか。そこで、過去弊社で行った調査から「働きがい」の要因を把握していきたい。

“あなたはどういう時に働きがいを感じますか?”という問いに関しては、他者からの評価・承認、仕事で得られる達成感・成長感が主な回答結果である。なお、選択肢は20前後を設けている。

前者でいう他者とは色々な他者―上長・同僚・お客様・世間など―が含まれる。また、組織特性によって他者の内容が異なることがある。営業職だと、お客様からの評価を特に重視している。女性の多い職場だと、同僚からの評価・承認を特に重視している。研究・開発職では、問題解決や新たな発想の生起など、自己に還元されるものを重視している。

また、共分散構造分析という因果関係を分析する統計手法において「働きがい」を高める主要因を調べると、仕事への主体性、自己裁量、権限付与といった自ら主体的に動き、自分自身に裁量権限を持つ自己決定感が共通した概念だと言える。この自己決定感は、アメリカの心理学者 エドワード・デシの提唱する「内発的動機づけ」に欠かせない要因である。

◇「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」
「内発的動機づけ」とは、報酬や地位のように外から与えられる刺激によるもの(外発的動機付け)とは異なり、仕事の楽しさや目標達成の喜びのように仕事自体に包含されているものをいう。ちなみに、他者からの評価・承認は「外発的動機づけ」、仕事で得られる達成感・成長感は「内発的動機づけ」である。その「内発的動機づけ」を規定する要因のひとつに、自己決定感が挙げられるわけである。

一方で、「外発的動機づけ」と「働きがい」との関係はどうなっているのか。先述した“あなたはどういう時に働きがいを感じますか?”において、他者からの評価・承認は上位に挙げられることが多いが、給与や昇進昇格などは中位あるいは下位に挙げられていることが多い。

つまり、「外発的動機づけ」のうち給与や昇進昇格などが働きがいを強める影響度は低いことが分かる。組合員は、労働組合に対して賃金・一時金対応を強く求めているが、こと「働きがい」におよぶと優先度は低くなるのである。

また、「働きがい」の高低でこれらの項目をみると、さらに鮮明な状況を把握できる。弊社の調査結果では、働きがいの高い人は「内発的動機づけ」や「外発的動機づけ」のうち他者からの評価・承認を低い人以上に重視し、働きがいの低い人は「外発的動機づけ」のうち給与や昇進昇格を高い人以上に重視しているのである。

当然ではあるが、働きがいの低い人たちに給与を増額すればよいというわけではない。それよりも、承認欲求を満たし、仕事に対して主体性を持ち、自己決定感のある仕事を行えるようにすることが重要である。

◇独自性のある「働きがい」を
冒頭にも書いたように、ビジョンやスローガンで「『働きがい』の向上」を標榜している組合は多い。そういった組合にとって「働きがい」を考えるにあたって理解が進めば幸いである。ただし、ここで述べた「働きがい」は幾分か一般化されたものである。

重要なことは、それぞれ固有の「働きがい」を調査などでつかんだ上で「働きがい」を標榜しないと、組合員にとってピントのぼけた「働きがい」を提唱することになるので注意が必要である。


「働きがい」を高めることとは
清水 典明
2014/08/31
多くの労働組合で「働きがいのある職場・会社への取り組み」が方針や活動項目として掲げられていることかと思います。
この「働きがい」の概念は、人によって受け止め方や感じ方は異なるもので、
・自分の仕事に満足している
・会社の待遇がいい
・信頼できる上司、同僚、部下がいる
・重要な役割を任されている
・自分の仕事を評価されている
など様々な要素が考えられます。
働くこととは、厳しい競争をしている組織の目標に向かって成果・結果を出していくことために「しなければならない」ことをしていくこととなります。
そのような中で、方針として掲げる「働きがい」を高めていくためにどのような取り組みが労働組合としてできるのでしょうか?
企画より関わりました研修で、実感をしたことがありますので紹介いたします。

その労働組合では、組織の発展のためには現場のリーダーを担っていく中堅層の育成を重要視して、研修を実施しています。
内容は、今後リーダーを担っていくための人間力向上を目的に、
・職場のリーダーとしてどのように後輩に自身の情熱、期待を伝えるか
・職場を今の立場でどのようにしていきたいか、そのためのアクションプラン
を参加者がチームを組み徹底的に考え、磨き上げていくというものです。
定めたアクションプランについて、チームで進捗を共有し、職場作りをしていくこととなります。

その研修の中で、参加者の上司や後輩からのメッセージを紹介する時間があります。改めて周囲からの支援を感じる時間であり、多くの参加者が周囲への感謝を強く持ち、そのために何ができるのかを考えるきっかけとする目的があります。
その実施風景を見ていて感じたことは、周囲からの感謝や評価が働きがいにつながることは大きな要素ですが、それを感じれる場や職場作りは労働組合だからこそできることが多くあるのではないかということです。
・組合役員のコミュニケーションスキル向上による職場での積極的傾聴の実践
・レクレーションや研修や集会などの場での仕掛け
・顧客も含めた周囲からの感謝の言葉を伝える仕組み作り
などです。そういった取り組みが「働きがいのある職場・会社への取り組み」には重要になってくるのではないでしょうか。

組合員の求めるリーダー像
三橋 秀郎
2014/08/24
先日、ある労働組合にて、技術者の組合員に対して研修を行ってきました。
内容としては、技術者になった「きっかけ」や「想い」、会社生活における「うれしかったこと」「つらかったこと」などエピソードを語り合い、最終的に、これからの「目指したい技術者像」や、そのために必要な「プロセス」「要素」を想い描いていただき、これからの会社生活において仕事に前向きに向き合っていただくための研修会でした。
その中で出てきた意見で興味深い内容がありましたので共有させていただきます。

『目指したい技術者って、どんな人?』
・周りのモチベーションを高められる人
・良き相談相手になれる、相談したくなる人
・コミュニケーション能力が高い人
・一緒に働きたい、あのチームと仕事がしたいと思わせる人
・決断力がある人
・上にNOと言える人
・広い視野と深い専門性をもった人

これらの意見を見ていただいてわかるように、目指したい技術者像って技術者だけに限ったリーダー像ではないということがおわかりいただけるかと思います。
営業でも生産でも、どのような職種でもこのようなリーダー像が求められているかと思います。

でも、このようなリーダーを育てるための育成をやっていたり、能力を身につけれる組織って身近にあると思いませんか?
そうですよね。労働組合の役員に求められる能力であり、役員を担うことにより身につけられますよね。

組合役員を経験することによって、どのような能力が身につくのか説明し、組合員の求める理想のリーダーになるための近道であることをキッチリと伝え、より多くの組合員に組合役員を経験したもらうことによって、労働組合が組織活性化のためのリーダー輩出機関になることが大事ではないでしょうか。


職場の課題や悩みを“自ら考え”“自ら改善していく” ~調査活動を活かした自律型職場づくりのススメ!~
丸山由紀夫
2014/08/17
「組合活動に参加してくれない」「そもそも組合に興味関心が持てない」…多くの組合でよく聞く悩みである。
そこで今回は現場(職場の声)巻き込み型の組合活動の進め方について述べることとする。

多くの組合では組合員一人ひとりの声を吸い上げる手段としてアンケート調査を実施している。そして、アンケート結果を
基に組合員の満足度を測り、運動方針の策定などに活用している。一般的に、アンケート調査の目的は下記2つがある。

 ①組合員の各種満足度を定量化
 ②組合員の要望・各種ニーズを把握

調査は重要な組合活動であるが、この進め方には大きな落とし穴がある。調査結果をまとめ、組合活動の方針づくりや
組合活動に活かすことはもちろんだが、同時に調査活動そのものの進め方が極めて問われてくる取り組みでもある。
後述するが、ややもすると他責型の組合員を組合自ら助長しているケースが見られる。調査活動には6つのステージがあり、
その各ステージごとに組合員と組合役員の対話機会をどれだけ組み込めているかが、調査活動を活かした自律型職場づくりに
おいて重要である。

調査活動 6つのステージ

【第1フェーズ】(活動課題整理・調査テーマ)
課題は何かを整理。
【第2フェーズ】(仮説構築・設問設計)
なぜそのような問題・課題が起きているのか。原因は何なのか。
【第3フェーズ】(結果分析・仮説検証)
組合員はどのように見ているか(感じているか)。
【第4フェーズ】(結果の報告)
調査結果を職場にどのように伝えていくか。
【第5フェーズ】(実践)
どのように現場で実践していくか。
【第6フェーズ】(検証)
活動の効果や進捗をどう測定していくか。

第1・第2フェーズは、設問設計の段階である。ここでは、既知の問題や課題について、いかに組合員と対話できるかが
重要である。密室の役員のみの会議で決めた設問(調査票)は、往々にして現場の声を片面でしか反映していないことがある。

第3フェーズは、調査の結果分析である。ここのポイントは数値の善し悪しとともに、結果に対して組合がどう考えているか、
その考察の深さと真摯さが重要である。ただ数値が高い低いの議論に留まっている組合が実に多い。

第4フェーズは、組合員への調査結果フィードバックの仕方である。数値結果を単に伝えているだけの報告会が多く見られる。
この方法では、組合に対して受け身的な組合員を組合自らが作りだしているに等しい。調査結果を受けて、何が問題で、
その原因はどこにあるのか、どう改善活動につなげていくのか、自分達はそこにどのような貢献が出来るのか…
現場で出来る組合活動を組合員と組合役員が一緒に考える場にすることが極めて重要である。

第5フェーズはまさしく現場実践である。勝利の方程式(※)で考え、ポイントは“出来ない活動を目標にしない”ことである。

第6フェーズは活動の評価とともにどれだけ活動が進んでいるかチェックする活動である。一般的には、第1フェーズで用いた
設問を再び組合員に問う取り組みである。

この6つのフェーズが調査活動そのものなのである。したがって調査の目的は上述した2つに加えて、

 ③組合の考えを広報・啓発していく
 ④みんなで改善活動を考え、実行につなげていく

が挙げられるであろう。

調査における6つのステージを確実に回していくとともに、各ステージごとに対話(※NO.276参照)を入れていく
一連の取り組みそのものが、職場の課題や悩みを“自ら考え”“自ら改善していく”自律型職場つくりのススメ!である。

※勝利の方程式とは…現実+自分が出来ること=目標。世の中で成功している人の考え方
 妄想の方程式で(理想-現実=不平不満)考えているうちは、決してうまくいかない。

人材不足対策
室橋
2014/08/10
流通大手企業が国内外の主要子会社、約90社のパート社員を含む従業員42万人の人材データベースをつくる、という記事は7月28日の日経トップニュース。データベースには業務評価や海外滞在経験などの業務事項のほか、特技や資格まで盛り込み、国や組織を超えた最適人材を抽出する仕組みを導入し、ワールドワイドで人材の適正配置を進めていく――


労働組合で考えてみても……。
弊社でも10年ほど前から組合員の情報管理システム構築支援を行っています。組合員の基礎情報をはじめ、異動・手当・控除などの個人データを一元管理するシステム。個人情報の管理を再整備することも多く、ご相談も増えています。


システムの導入は、「専門部ごとに管理しているため、データがバラバラで活用できていない」「セキュリティの観点から一元管理したい」「煩雑な組合業務を効率化したい」などでご相談をいただくことが多いのですが、最近は組合員のイベントや研修会への参加や組合役員履歴を残し、執行委員・職場委員の登用にも活用したいという要望が増えてきました。


セキュリティ管理や業務効率化のためのシステムだけではなく、新たな付加価値を生むためのシステム。労働組合の人材データベースは、組合役員への優秀な人材登用や育成にも活用でき、次世代のリーダーを担う人材を計画的に育成することにも役立てられるということでしょうか。


いずれにしても、生かす仕組みがなければ、データベースも宝の持ち腐れとなってしまいます。情報管理でお困りの労組様、システムを構築したものの活用できていない労組様がいらっしゃいましたら、担当営業にお気軽にご相談ください。