広告業界の今!

広告業界の現状と課題

広告業界の賃金・雇用動向
リーマンショック後の企業の広告宣伝費抑制が影響し、2009年1-12月の日本の広告市場は、対前年比マイナス11%を記録。賞与はおよそ年収の3割程度を占めるが、2009年夏季賞与、2009年冬季賞与は、大幅な減少(2-3割減、半減、全く支給無し等)を余儀なくされた。2009年は、外資系広告代理店、独立系中堅広告代理店などで人員削減が始まった。
2010年に入ると、経営破綻が相次いで表面化。関西の地場大手クラスの大阪読売広告社(3月に自主廃業)、外資系広告主が主力のコーブイトウ広告社(8月倒産)、売上高20位前後の中央宣興(9月倒産)などが経営破綻した。
広告ビジネスの仕組みとして、売上高とそこから得られる手数料収入(利益)は正比例の関係にある。売上減が手数料収入を減らし、経営維持の為には、そのままストレートに総人件費抑制に向かわざるを得ないのが実情である。このような事から広告業界の労組としては、当面は、賃金水準よりも雇用確保を優先せざるを得ないと言える。
広告業界の就労人数は実際に減少していると想定され、2009年以降に人員削減を行なった広告代理店として、日本経済社(2010年3月に転身支援制度実施。全社員の10%位が退職)、アサツーディ・ケイ(2010年9月に転身支援制度実施。40才以上の社員の10%位が退職)などが挙げられる。

2010年冬季賞与は、一部の広告代理店で対前年比でプラス傾向が出ているものの、多くの広告代理店の経営判断としては
(1)直近の売上・手数料収入が思わしくない事、
(2)今後の売上回復への悲観論
(3)既存マス媒体からデジタル系媒体への取扱い業務の構造変化対応等

から、業界全体のすう勢としては、本格的な賞与回復は望めない状況にある。広告労協としては、引き続き、業界の売上回復策を業界団体などに働き掛けてゆく予定である。
広告業界の労働者にとって特に注意すべき項目
■広告産業縮小の危機
・一部の社では雇用問題まで発展している。
・大手でも毎年のように年収ダウンしているなど、待遇悪化が進んでいる。 

■投資ファンドによる買収懸念
・投資ファンドの行動パターンとして、経営体力が落ちた段階で、買収の打診をしてくる。上位社でも営業赤字という経営危機の時期がむしろ投資ファンドにとっては、絶好の買収機会になってくる。
・買収後は、大幅なリストラを行なう事はほぼ確実なので、労働トラブルに発展してゆく事は目に見えている。

■値引き行為がもたらす危険性
広告業界の場合、広告代理店のマージン率が1%低下すると、10%の人員削減を余儀なくされる、という産業構造にある。したがって受注増を図るための安易な値引きは、慎まなければならない。
格安航空会社が席捲する航空業界でも、値引きは業界全体の体力を消耗し、サービスの低下を招くと日本の行政側も認めているという状況にある。

■従来のマス媒体からデジタル系媒体へのシフトによる業務スキルの変化
広告手法として、従来のマス媒体からデジタル系媒体へのシフトが続いている。この傾向に対し、広告業界の労働者に求められる業務スキルも変化してきている。デジタル系業務の研修機会を増やすべきだが、中小の広告代理店や地方支社などでは実現しにくい状況がむしろ普通である。労働組合としては、業務内容の変化に広告業界の個々の労働者が対応できるよう、研修をはじめ、様々な機会の創出を働き掛けてゆく必要がある。

■経営者が繰り出す「雇用危機につながる3つの経営施策」に対して注意が必要
企業が経営的に厳しくなると、経営コンサルタント、人事労務コンサルタントにその解決策を求める事があり、彼等の提案を基に「雇用危機につながる3つの経営施策」が経営側から繰り出されてきます。現行法で違法性を帯びた施策も含まれており、労働組合として、このような動きに対して、法的な対応も含めて強固に対抗してゆく必要があります。

『雇用危機につながる3つの経営施策』(労組で対応が必要な課題) 
(1)"偽装型"早期退職優遇制度の実施
・あらかじめ社員を「会社に残留してもらいたい層」「残留・退職のどちらでも良い層」「退職に追い込む層」の3グループに分け、対象者全員に個人面談を行なうものの、グループ毎にその内容は全く異なり、「退職に追い込む層」及び「どちらでも良い層」に対しては、退職勧奨を行なってゆくもの。

(2)Performance Inprovement Planの実施
・社員を退職に追い込むため、達成できない業務計画を社員に課し、その未達を理由に強く退職勧奨を行なうもの。導入例として、日本IBM、ブルームヴァーグ社など。

(3)自主廃業、経営破綻等による解雇
・営業譲渡は社員全員を引き継ぐが、自主廃業は社員を引き継がなくて済む、という違いが有る。意図的に自主廃業の道を選ぶケースも出てきている。
(再雇用状況)広告業界内の求人は極めて少なく、再就職活動は長期化。年収大幅ダウンを余儀無くされる。求人はIT、通販に集中。デジタル系業務のスキルが求められている。

■「格差拡大」「成果主義」には根本的な欠陥有り。「労働の報酬額と働くモチベーションの関係性」における真実
「格差拡大」「成果主義」は、自らの報酬増を狙った欧米の経営者の意向を受け、経営コンサルタントが理論武装を図ったものに過ぎない。心理学などの研究成果によれば、実際には、格差拡大、成果主義は、労働者のモチベーションアップには結びつかず、かえって企業業績向上の足を引っ張るものである、とされている。
労働組合として、経営側の一方的な思惑による誤った施策に対して、事実検証し、訂正させてゆく必要がある。
『労働の報酬額と働くモチベーションの関係性』

労働の報酬額と働くモチベーションの関係性の分析(書籍『不合理だからすべてがうまくいく』)
人間の経済行動を心理学の立場から研究する「行動経済学」が世界的に近年注目されていますが、この「行動経済学」の分野の最新著書『不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」』(ダン・アリエリー著)の中で、労働の報酬額と働くモチベーションの関係性について、興味深い分析が加えられています。*版元の早川書房で当該ページをPDFで配布中。
これによると「報酬を与え過ぎると、かえってモチベーションは低下する」との事です。
実験結果なども例示しながら、企業を席捲している「成果主義」の限界を指摘する中身となっています。

法則1:報酬が下がると働くモチベーションが低下する
法則2:報酬が高いと報酬が下がる事を怖れ、保守的になる
法則3:報酬のアップダウンがあるのそちらに気をとられ、仕事に集中できない。

・経営者、役員の高額報酬を正当化する理由付けを彼等に雇われたコンサルタントが構築してきたのが成果主義である。
(世界的な労組の組織率低下で、労組側の論理が対抗しきれてこなかった)
・経営者、役員が高額報酬であれば、必然的に現場社員の報酬がその分減る。人件費総額の中では微々たる金額かも知れないが、考え方として同意しにくい。
・経営者、役員の高額報酬に対して従業員は、発奮するよりも恨みを持つようになる。
・成果主義は、むしろ自由競争からは、遠ざかる。
・社内は、足の引っ張り合いばかりになる。
・仕事の配分そのものが成果と直結してくる。
・成果主義の企業と安定報酬主義の企業を確認してみると、安定報酬主義の企業の方が中長期的な業績で良好ではないか。
また厚生労働省所管の独立行政法人労働政策研究・研修機構「仕事特性・個人特性と労働時間」調査結果でも興味深い分析がされています。(2010年12月7日報道発表)

1)自分の仕事や上司の性質と労働時間の関係
1.「他社・他者との関係性の強さが労働時間を長くする」
2.「自らの業務目標の明確さや進め方の裁量度の高さが労働時間を短くする」
3.「上司が残業を当然と考えていると労働時間が長くなる」④「上司が個々の部下の業務負担等を考慮していない労働時間が長くなる」

2)仕事に対する自分の意識と労働時間の関係
1.「自らの仕事や役割に対する目標設定の高さ(まじめさ)が労働時間を長くする」
2.「自らの仕事の出来に対して自己評価が高いと労働時間が長い」
3.「仕事志向が強いほど労働時間が長い」といった興味深い分析がされています。

労働組合の課題:『広告労協の活動内容の充実に向けて』
■労組弱体化の要因
・若年層の労組離れ→その一つの結果として若年層の待遇悪化が起きている
・労組自身の活動の硬直化、時代変化への対応不足  →行動面、運営意識
・組合員から求められる事からの乖離

■労働組合としての新たなポジショニングの模索
・真に組合員から必要とされる組合となってゆくために、自らをどう位置付け、アクションしてゆくか。

■労働組合における産業政策活動の必要性
・産業構造の大幅な転換に直面する中、過去の経験値・成功体験に依存する経営側の無策も目立ち、従業員自らが勤務先の生き残り策に取り組んでゆかざるを得ない状況にある。

■労働組合、労連における先駆的活動のケース
<産業政策系>
・自動車総連の産業政策活動 →財界、議員等に向けたパブリックな発信を行なっている
・未来フォーラム(資生堂労組、セイコーエプソン労組など)→経営側も社員の声を重視
・新聞労連 産業政策研究会
・民放労連 アナウンサー向け技術講座
・全印総連 円卓会議<スキルアップ系>
・民放労連 アナウンサー向け技術講座
・出版労連 編集者向け講座

■労働組合に不可欠な専門サービスの提供
<各分野の専門家のネットワーク化>
・労働問題に強い弁護士
・力量の高い特定社会保険労務士