労働界にとって年が明けると例年どおり春の交渉一色に染まる。昨年暮れに経団連は恒例の春の交渉に臨む経営者の考えを発表した。当時、マスメディアは「経営者は賃上げを容認した」ととりあげたが、報告書をよく読むとどうもそんな単純なことではないようだ。
処遇改定は「恒常的な生産性向上によって生まれた原資で行なうべし」とある。いつも問題になって解決策が見出せないのが規模の格差、すなわち大手と中小の格差問題である。
日本では90年代後半から企業規模別の賃金格差が広がる一方である。要因はいろいろあるのだが昭和30年(1955年)にスタートした春闘方式に今なおこだわる組合の姿勢にも影響されている。日本全体が貧しく、誰もが一円でも収入を増やし生活水準を上げようとした時代は全体が横並びで引き上げる方式は有効に機能した。その背景には、企業にとって賃金上昇に伴うコスト増を吸収できる高度成長があったからで(賃金上昇→消費拡大→業績向上→賃金上昇)、いわば成長が賃金の引上げをもたらし、賃上げが成長を支えた。
高度成長が過去の物語になり、ゼロ成長とか安定成長でパイが小さくなれば企業競争は激化し優勝劣敗、自然淘汰の経済になるのは必然でもある。国の基幹産業や生産性が向上して業績の良い企業が賃上げを実現し、あとの組合がそれに続くというパターンは機能しなくなる。先行組合の回答は雰囲気作りには有効かもしれないが、生産性が向上していない企業には影響をもたない。その結果が大手と中小の賃金格差の拡大をもたらした。そして今年、経団連の報告書どおりとすれば、規模のメリットによる生産性向上がはかれない中小にとっては苦難の交渉にならざるを得ない。
中小企業は取引先からコスト、価格、品質、納期などを厳しく管理され、加えて不適切・違法な取引を強制されれば利益が出ない。その上、大手企業は規模のメリットとして多額な設備投資や研究開発投資が可能だ。当然生産性は向上する。つまり経団連の報告書をそのまま読めば「大手と中小の格差拡大」をもたらすことになる。
一方その中小でさえ、正規社員であればパートや派遣労働者よりは安定しているから、不満が爆発するほどには高まらないに違いない。こうして大手と中小、正規社員と非正規社員の格差はますます拡大する。人間は悲しいことに自分より恵まれない人がいることで安心してしまうようだ。
日本で100万ドル(1$113円で1億1300万円)以上の資産を有する人は147万人になった(07年7月8日付読売新聞)。これは世界の同様資産保有者の15.5%をしめ、アメリカについで第二位だ。一方、同じ日本で年収150万円以下の人は実に1,313万人、雇用所得者の24%になる(労働省の報告書)。これが今の日本の実態だ。
正規社員だけで組織している労働組合に突きつけられた課題なのだが、やっと連合が非正規社員センターを作り、法定最低賃金にも力を入れ始めるなど画期的な取り組みを始めたが、傘下組合の取り組みはあまり盛り上がっていないようだ。これでは各組合が理念として掲げている組合の社会的地位の向上には程遠い。
正規と非正規、大手と中小、男性と女性などの所得格差が拡大している中で、フローの賃上げだけにこだわり、ますます格差を拡大させていくのか、相互支援組織である労働組合が、セーフティネットとしての諸制度確立にも力を注ぐのか、春闘の質が問われている。
今私たちは新たな理念や活動を確立しなければならない時代を迎えている。
その第一歩を記す年になることを信じたい。
処遇改定は「恒常的な生産性向上によって生まれた原資で行なうべし」とある。いつも問題になって解決策が見出せないのが規模の格差、すなわち大手と中小の格差問題である。
日本では90年代後半から企業規模別の賃金格差が広がる一方である。要因はいろいろあるのだが昭和30年(1955年)にスタートした春闘方式に今なおこだわる組合の姿勢にも影響されている。日本全体が貧しく、誰もが一円でも収入を増やし生活水準を上げようとした時代は全体が横並びで引き上げる方式は有効に機能した。その背景には、企業にとって賃金上昇に伴うコスト増を吸収できる高度成長があったからで(賃金上昇→消費拡大→業績向上→賃金上昇)、いわば成長が賃金の引上げをもたらし、賃上げが成長を支えた。
高度成長が過去の物語になり、ゼロ成長とか安定成長でパイが小さくなれば企業競争は激化し優勝劣敗、自然淘汰の経済になるのは必然でもある。国の基幹産業や生産性が向上して業績の良い企業が賃上げを実現し、あとの組合がそれに続くというパターンは機能しなくなる。先行組合の回答は雰囲気作りには有効かもしれないが、生産性が向上していない企業には影響をもたない。その結果が大手と中小の賃金格差の拡大をもたらした。そして今年、経団連の報告書どおりとすれば、規模のメリットによる生産性向上がはかれない中小にとっては苦難の交渉にならざるを得ない。
中小企業は取引先からコスト、価格、品質、納期などを厳しく管理され、加えて不適切・違法な取引を強制されれば利益が出ない。その上、大手企業は規模のメリットとして多額な設備投資や研究開発投資が可能だ。当然生産性は向上する。つまり経団連の報告書をそのまま読めば「大手と中小の格差拡大」をもたらすことになる。
一方その中小でさえ、正規社員であればパートや派遣労働者よりは安定しているから、不満が爆発するほどには高まらないに違いない。こうして大手と中小、正規社員と非正規社員の格差はますます拡大する。人間は悲しいことに自分より恵まれない人がいることで安心してしまうようだ。
日本で100万ドル(1$113円で1億1300万円)以上の資産を有する人は147万人になった(07年7月8日付読売新聞)。これは世界の同様資産保有者の15.5%をしめ、アメリカについで第二位だ。一方、同じ日本で年収150万円以下の人は実に1,313万人、雇用所得者の24%になる(労働省の報告書)。これが今の日本の実態だ。
正規社員だけで組織している労働組合に突きつけられた課題なのだが、やっと連合が非正規社員センターを作り、法定最低賃金にも力を入れ始めるなど画期的な取り組みを始めたが、傘下組合の取り組みはあまり盛り上がっていないようだ。これでは各組合が理念として掲げている組合の社会的地位の向上には程遠い。
正規と非正規、大手と中小、男性と女性などの所得格差が拡大している中で、フローの賃上げだけにこだわり、ますます格差を拡大させていくのか、相互支援組織である労働組合が、セーフティネットとしての諸制度確立にも力を注ぐのか、春闘の質が問われている。
今私たちは新たな理念や活動を確立しなければならない時代を迎えている。
その第一歩を記す年になることを信じたい。



